SS47 プレゼント

今年もサンタが私の元を訪れた。

「あら、お久しぶり。一年ぶりかしらって、当り前よね」まるきり去年と同じシチュエイションなので思わず笑ったが、どうにも元気がない。
「はあ、どうも」
「なあに、どうかしたの? いつものセリフないし、よく見たら妙にめかし込んでるじゃない」
「ええ、まあ、奥さん」と漸く顔を上げたサンタの目が泳いでいて不安になった。
「今日は久しぶりに旦那もいるのよ」右手で指し示すと、当人の姿が見当たらない。「あら、いない」
「旦那さんなら出掛けたようですよ」
「出掛けた? 本当に?」
「奥さん、実は旦那さんはロングヘアのかわいい女性のプレゼントを希望されまして」
「まさか…その女と出掛けたの? 嘘でしょう?」
「こう言ってはなんですが奥さん」にじり寄るサンタに思わず身を引く。「あなたのような素晴らしい女性に、あんな浮気性の男は似合いません。いや、一緒にいてはいけない」
 鬼気迫る形相にたじろぎながら、様子がおかしかった理由を理解した気になっていた。
「私なら…、私なら絶対にあなたにつらい思いなんかさせません。絶対に絶対にです。奥さん、どうか私と付き合って貰えませんか?」
「え?」
 間抜けな声を発した後の長い沈黙の間に、まず節操のない夫に対しての怒りが渦巻いた。そして目の前の恥知らずにも。
「まあ、サンタさんたら冗談ばっかり。私にも好みの男性をプレゼントしてくださいよ」

SS47 プレゼント

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  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-12-25

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