ト或る操り人形Ⅱ
女の子の操り人形は、今日も1人でシクシクと泣いていました。
その操り人形は、相変わらずとても醜く、とても哀しい人形で、いつもほこりをかぶっていて、心も体も傷だらけ。
何かあるたびに、ご主人様におびえながら暮らしていました。
そしてその操り人形は、もうすべてをあきらめかけていました。
ある時、その操り人形の前に、1人の男の人がやってきました。
その男の人は、その操り人形に、とても優しく接してくれました。
そのうち操り人形は、その男の人のことを好きになりました。
その男の人も、操り人形のことを好きになっていました。
そう、その男の人は、操り人形の糸を切り、呪いを解いてくれる勇者だったのです。
2人は相思相愛になり、恋人同士になりましたが、操り人形のせいでなかなか普通に会うことができませんでした。
ご主人様は、相変わらず頑丈な糸でその操り人形を操り続けていました。
その操り人形の心は傷だらけで、もう崩壊寸前でした。
でも、操り人形と勇者は、そんな中でもなんとか逢瀬を重ねていました。
操り人形の糸を切るための方法を、呪いを解くための方法を必死で考えていました。
そんなある日、操り人形に、檻の中から一時的に脱出できるチャンスがやってきたのです。
「俺が迎えに来るよ。だから一緒に行こう?」
そして操り人形は、少しだけ檻の中から脱出することにしました。
操り人形の脱出は無事に成功し、操り人形と勇者は幸せな時間を過ごすことができました。
こんな幸せな時間がずっと続けばいいのにな…。
操り人形はそう思っていました。
でも、操り人形にはわかっていたのです。
そんな幸せな時間が長くは続かないということを。
ご主人様が操る頑丈な糸は、きっと誰にも切れないということを。
案の定、ことあるごとに操り人形の糸はもっともっと頑丈になっていきました。
そしてもう、操り人形はすべてをあきらめることにしました。
「この先あなたに迷惑はかけられないから、もう終わりにしましょう。」
でも勇者は、
「そんなのは絶対に嫌だ!!君と結婚する。」
と言い続けました。
操り人形は、ご主人様に操られている糸が頑丈すぎて誰にも切れないとわかっているだけに、もう呪いは解けないとわかっているだけに、困り果ててシクシクと泣くしかありませんでした。
それでも操り人形は、勇者と絶対に離れないと約束をしました。
けれど、操り人形を操る糸は、ことあるごとにもっともっと頑丈になるばかりで、どんな刃でもちっとも切れそうにありません。
操り人形は、もう自分の呪いは解けないのだと、すべてをあきらめて永遠に操り人形でいるしかないのだと悟ってしまいました。
そんな操り人形は、勇者と一緒になりたいと、勇者とずっと一緒にいたいという思いを強く持って、頑丈な檻の中で、体中に絡みついた操り糸の中でもがきながら、今日も1人でシクシクと泣き続けています。
ト或る操り人形Ⅱ