たぬきの恋。3

僕が勢いで逃げてきてしまってから、3日ほどたっていた。


僕はなかなか、あの店に入れない。
あの女の子と会ってから、さらに入りづらくなってしまった。


別にあの店には用なんてないし、いつもの僕ならきっと今この時


「まぁ、いっか。 どうせ何にもないだろーし。」



って言って諦めてるはずなのに、今回はなんだか違うらしい


          あ     き     ら    め     て     な     い


ってことは、きっと何かあるってことだよな。
この15年間何もなかった僕にきっと何か、何かが起こるかもしれない、




と、ひそかに自分は思っていた。



「はい、鈴木君この問題前に来て解いてくれる?」


「えっ!?、あ、はい!」



ちくしょう、わかんねーよこの問題・・・授業に変な事思ってるんじゃなかった。



そして、その日の帰り道。



「おーい、雅さーん?」


「あ?」


"あ"に濁点(ダクテン)を付けてしまったような返答をしてしまった。


「え、何怒ってんの?」



「いやいや、怒ってなんかねぇーよ」



「ふーん・・・。」



「何?」



「いや・・・お前なんか気になってる子とかいるだろ?」


ちょっとはにかんだように竹内は言った。



「え?」


こんな返答をした僕だったが、本当は内心すごく驚いていた。


(なんで分かんだよ・・・)


いや、待て。
僕が今気になってるのは"子"じゃなくて、"店"だ。

でもなぁ・・・あの女の子・・・ちょっと・・
いっいや!!

違う、違うぞ!!
断じて違う!!!!



すると、竹内が・・・

「俺は思うんだよ、お前って本当何にもとりえないじゃん?

 でもさ、きっとお前は"気になる"っていうのを、押しつぶしちゃうから、
 何にもないんじゃないの?」


「え・・・っ?」




「じゃあ、俺はこれにてっ!
 
 青春をエンジョイしたまえっ!若者よっ!」



"(`・ω・´)"みたいな顔して行きやがった・・・あいつ・・・


でも、竹内が言ってることは間違ってない気がする。


サッカーだって、野球だって、数学だって、技術だって。
少しくらいは「楽しいな」って思ったけど、僕はそれ以上の「楽しさ」を求めて、
それをどんどんどん捨てていったのかもしれない。





                   
                   だとしたら、今。




             ぼ     く    に     で     き      る      こ      と       は  。



         僕は一直線に走り出した。



                               たぬき屋に向かって。


                                          -続く-

たぬきの恋。3

【お ま け】

鈴木「どうも、地味でとりえのない主人公(仮)鈴木 雅(スズキ ミヤビ)です。」

竹内「そして、勉強はそこそこ自信のある鈴木の親友、竹内(タケウチ)でーすっ!」

鈴木「まず、{たぬきの恋。3}を読んでくださいまして、本当にありがとうございます」

竹内「いや、待ってくれよ。」

鈴木「あ?」

竹内「俺の名前は!? 自己紹介んとこで苗字しか言ってないよ、俺!」

鈴木「そうだな。」

竹内「おい・・・なんだその冷徹な返答は・・・っ」

鈴木「あれだよ"小次郎"とか"太次郎"とか"金次郎"とかでいいんだよ」

竹内「えええええwwww 
   てかお前"次郎"って好きだな、おい!?」

鈴木「では、今日から竹内くんは竹内 金次郎(タケウチ キンジロウ)になりました」

金次郎「ちょっとまってえええええ!?
    ってアレ!?アレ!?名前が"金次郎"になってるよ!?」

鈴木「決定ってことだな!」



                     -終わり-


金次郎「終わっちゃだめええええええ!!
    最後まで金次郎なのか!?俺はああああああ!!」

たぬきの恋。3

「楽しい」と思ったことを押しつぶし、 もっと上の「楽しい」を求めていたから、今の自分ができてしまったのかもしれない。 そんな自分だから今、できること。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-04-17

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