空の美しさについての話
空が美しいということは
今 歩いている世界の半分が美しいということ
世界の半分を美しいと感じる人間という生き物
そういうふうにできていることは僥倖である
それはもちろん例外だってあるが
奇跡のようでもある
空を美しいと一度も感じない人間はいるのだろうか
例えば 生まれつき世界に光がなければ 空の色を知らずに生きるだろう
しかしこれは空の美しさについての話だが空の美しさについての話ではない
例えば 秋の風の心地良さ 漣の音の豊かさ
そんなことを思ってもいい
驚いたことに
人間には
世界を肯定するプログラムが
確かに
そこに
ここに
予め仕組まれている
ということなのだ
どうか嘆かないで欲しい
誤作動もエラーもそれもまた世界の半分
見上げれば世界の全てが美しい
と
言いたい訳では決して無い
どうか嘆かないでいて欲しい
はじめから
あなたに寄り添うつもりはないこの詩
もしもかつて食えもしない美しさに足を止めたことがあるのなら
もしもいつか食えもしない美しさに足を止める日がくるのなら
そのときに
この詩を
思い出すのも悪くない
と
少し
付箋したに過ぎないので
〈了〉
空の美しさについての話