こいびと、
朝がくれば、ぼくたちの間にあるものすべて灰になって流されてしまうでしょう。
(名前。抽象的統一によってかろうじて連続性を保っている肉体が、ばらばらにならないように、眠れないふりをして手を繋いでいた。)
明日になれば、ぼくは名前のないものすべてを忘れてしまうでしょう。
(寒くなければ、昏くなければ、もはや手を繋ぐことも。忘れてしまうのだ、と思って辞書をぱらぱらとめくり続けていた。)
言葉にすれば、死んでしまうものたちがあることを知っていてそれでもぼくたちには墓標が必要でした。またね、よりも、永いことばで。
(共犯であるようにふたつの手にはナイフが握られ、そのためにぼくたちは不死だった。こいびと、血にまみれていきながらゆっくりと、互いに互いの墓標になることに、そんな名前をつけてみたかった。)
こいびと、