秋枯れにつき
月が明るい
空が明るい
頷いたままのナナカマドを吹き飛ばすみたいに
ハンドルを握ってもう午後九時だ
西の夜空は白いまだらだ
地球の色だ
何もいらない、欲しいと思わない
外灯も非常灯もヘッドラインもテールランプも全部いらない
おかえりをささやく玄関の灯りだってきっと
どこまでもどこまでも
プラタナスの落葉にまみれた道を行けたなら
ひそひそ話の目論見を隠そうともしない
常緑樹たちの監視をかいくぐれたのなら
周波数の合わせかたを知らないラジオが言う
「のち、二週間後には秋枯れにつき」
そのままでこのままで
目的地を知らない化石たちをじゃらじゃら引き連れて
アクセルを踏み続けてもう午前三時だ
秋枯れにつき