ココロニ

ここはどこだろう
私は何をしているのだろう
何だか懐かしい匂いがする
あれ?何か見える
ここに寝転んでいるのは私!?
何か女の子の泣き声が聞こえる・・・
「コ…ォー…」

はっ!
「また夢かぁ…ハァー…」
私はよく夢を見る。
医者によると、7歳までの頃の記憶が夢に出てきているとか…
ちなみに、私は7歳から記憶をなくしている
親は、私が5歳の時にすでに亡くなったらしい。
私は、時計を見た。
短い針は7を指していた。
やばい…遅刻だ…
こんな時に、起こしてくれる人がいたらなぁ
起きるのが遅くなるたびいつも思う。
特に今日は入学式。
30分前に学校に着くようにする予定だった。
電池が、1本床に転がっていた。
目覚まし時計のだ。
分かっている。
自分が不幸体質なことくらい。
「いってきまーす。」
誰もいない家にそう言って、学校に向かった

私は、8時27分学校に到着した。
流石に入学式なので、全員が席に座っていた
「葵、遅刻じゃないが遅いぞ。入学式くらい5分前には来なさい!」
いきなり注意された…
それにもう名前を覚えられてる。出席番号が1番の人は名前を覚えやすいのだろうか。
「す、すいません…今度から気をつけます…」
キーン、コーン、カーン、コーン
私が、謝ってすぐチャイムが鳴った。
「じゃあ、グラウンドいくぞ。出席番号順な。」
ハァー…
私はため息をつき列に並ぶ。
せっかくの高校生活が台無しだ…

1番前に並ぼうとした──その時、誰かにぶつかった。
「す、すいません!えっ…えーと…」
「こちらこそごめんね。」
微笑みながら、話し掛けてくれた。
「あっ、私ね、代表に選ばれちゃってー入学式でね、生徒代表の言葉で言わなくちゃいけなくなってね。1番前、私だからー。」
「ご、こめんなさい。私、そうとも知らずに1番前行こうとしてました!」
思わず、頭を下げて謝った。
「ありがと。」
代表の人はまた微笑んで言ってくれた。
その人は、とても大人っぽく美人だった。

グラウンドに出て、校長の話しが終わった後、生徒代表の人は話した。
「──生徒代表1年B組、野中愛花(のなかまなか)。」
野中さんって言うんだ。
お友達になれるかなー。
なんだかワクワクしてきた。

教室に戻ると、皆が野中さんの周りに集まっていた。それもそうだ。白に少し黄色がかかった長い髪、純白の肌、そして、輝いた目。
私が、野中さんのほうを見ていると、私の方を向いて笑ってくれた。私は、すぐ頬を赤らめながらしたを向いてしまった。なにをやっているのやら…
「ちゅーもーく!さあ、席に座って!」
先生の声が教室に響きわたった。
すると、さっきまでの集団がなかったかのように散らばった。
「さっき早くきた奴には言ったが、先生の名前は、奈佐原真紀子(なさはらまきこ)と言う。
ちなみに、前はマッキーと呼ばれてたが、呼んだ奴は殺すよー。」
地味に怖いことを言うものだ。
さっき早くの所は少し心に響いた。
「あー、そーいえば自己紹介しなくちゃいけねぇんだ。葵から順番にでいいな。じゃあ、よろしくー」
えっ!私から!?
なにも考えてないよー。
急に、緊張してきた。
私は、席を立ち、前に立った。
「えっ…と…あ、葵可憐(あおいかれん)と言います!
よ…よろしくお…お願いしま…す…」
恥ずかしくて皆の自己紹介のことは覚えていなかった。

キーン、コーン、カーン、コーン
終わりのチャイムが鳴った。
私は、席を立ち、帰ろうとした。
友達を作りたいと思っていたが、自己紹介ですっかり自信をなくしてしまった。
「おい、葵、ちょっといいか。
話しがあるんだが…」
誰かと思ったが、先生だった。
「あ、はい。何でしょうか?」
「ここじゃ、ダメだな…。
ちょっとついて来い!」
私は、体育館倉庫の前に連れていかれた。
「あの…何でしょうか?」
「ああ、実は、お前の記憶についてだな…。
いろいろ聞いているぞ。7歳の頃、記憶喪失になったの。」
どう考えても、おかしかった。
私は、そのことを中学の時に誰にも言っていない。もちろん、教師にもだ。
「大丈夫なのか?入院していたこともあったんだろ。」
「あ、はい。今は大丈夫です!
身体には、記憶のこと以外は、影響ありませんし…今更、思い出しても、昔のことですから。」
「そうか…本当に記憶なくしたんだな…」
「えっ…今なんて…」
「あ…いや…何でもない…。
記憶なくした人見るの始めてなんだ…。」
少し先生が焦ってるように見えた。
「あ、もう帰っていいぞ。
先生、実は担任持つの始めてなんだ。
だから、いいクラスにしようと思ってる。
これから、よろしくな。」
「あ、分かりました。
心配して頂きありがとうございました!
でも、大丈夫なんで…さようなら。」

そう言って、私は、ここを去ろうとした。
しかし、体育館倉庫の横を曲がって、先生が見えなくなるくらいで話し声が聞こえた。
「何で聞いたの…」
「ええやないか、それくらい。
今は、俺は教師なんだから。
それに、いいクラスにしたいというのも本当だ。」
あれは、源汐梨(みなもとしおり)さんだっけ…
私は、体育館倉庫の角に隠れて、聞いていた。
「でも、記憶のこと聞いたのは理由があるんでしょ。」
「ああ、心配だからだよ。それに…」
「それになんだよ!自分勝手なこと言って…」
だんだん涙声になっている。
「ちょっと待て。まずは落ち着け。ここで暴れるのは寄せ…」
「うるさい!!」
いきなり源さんは、右手の手首を抑えて、先生に向かって走った。右手から黒い煙のようなものが見えた。
「テキーラ!」
彼女は、そう叫ぶと右手を先生にぶつけた。
いつの間にか、その手は黒い何かに覆われ、指の先は尖っていた。
しかし、先生は、何か細く端に大きく綺麗な真珠のようなもののついたステッキに似た形のもので身を守っていた。
「いい加減にしろ!」
そして、それで地面に叩きつけた。
衝撃で私の所まで、源さんは飛ばされた。
そして、私と目があった。
源さんはとても驚いた顔をしていた。
私は必死で目を逸らそうとし、そーっと逃げようとした。
「だいたい、お前はいつもいつも…」
先生が源さんに話しかけながら、近寄って来る。
源さんは、私をずっと見ていた。
と思いきや、いきなり私の所に走って来た。
そして、いきなり手をつかまれた。
「走れる?」
先生に聞こえないくらいの声で言った。
「おい、何処に行くんだ。」
先生も走って来た。
今のを見ていたことを先生に知られてしまうと厄介なことになるだろう。
私は「う、うん。」と答え、手を繋がれながら、一緒に逃げた。

3秒も経たないうちに、いつの間にか、学校を抜けて約500mほど先の公園にいた。
「あ、あの…」
源さんは言った。
「ご、ごめんなさい!い…いきなりこんな所まで、連れて来てしまって…大丈夫でしたか?お怪我はありませんか?」
明らかにさっきまでと態度が違っていた。
その小柄な体で、赤くなった顔を隠そうしながら、話していた。
「だ、大丈夫だよ…。す、凄いね。こんなに早くこんなに逃げれるなんて…」
「あ…それは…その…。」
と言ったところで、さっきまで下に向けた顔をこちらに向けた。
「魔法を使ったんです!」
2、3秒ほど、間があいた。
「え、えーっと…。」
「嘘じゃないです!本当なんです!」
あまりにも必死で、それに、瞬間移動でもしたかのような速さで、ここまで来たのだ。
それでも、何か引っかかった。
「う、うん。信じるんだけど…
それ、私なんかに言ってよかったことなのかな?」
「それは…えー…」
何か決心したような顔で言った。
「魔法使いになりませんか?」
あまりにも、意外なことを聞かれたので、なんて言えばいいのか分からなかった。
「そうですよね。いきなりこんなこと聞かれても、分かりませんよね。すいません。明日、また、よろしくお願いします!仲良くして下さい!さようなら!」
源さんは、微笑みながら、その場を去った。

私は、なんだか明日が楽しみになってきた。
そして、いつの間にか、早歩きで家に帰っていった。

ココロニ

ココロニ

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • アクション
  • 青年向け
更新日
登録日
2012-12-09

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