クイズ! ニャンじゃらホイ!!

クイズ! ニャンじゃらホイ!!

 現在最終作を執筆中なのですが、思うようにはかどらないので息抜きに書いてみました(笑)
 
・オープニング A
 https://www.youtube.com/watch?v=73aMBJacBvU

・オープニング B(OP後に提供クレジットあり)
 https://www.youtube.com/watch?v=AtC22uPryZU

 クイズ番組の総合司会は初めてだった。だが、幸いなことに、ゲストは一般の素人。とはいえ、もちろん失礼があってはならない。いささか緊張しつつも、ぬっこ先生は明るい笑顔で張りきって登場した。
「さあ、はじまりましたクイズ・ニャンじゃらホイ!! 司会のぬっこ先生です。よろしくお願いします!」
 それにしても、ずいぶんとシンプルなセットである。薄い緑色のカベといい、解答席のデザインといい、まるで〝クイズダービー〟のセットをそのまま流用した感じだ。
「さて、まずは本日のゲストの紹介からはじめたいと思います。では、一番の方から自己紹介をお願いします!」
 ぬっこ先生が一番右の解答席に笑顔を向けると、ゲストの老人は解答ボタンを右の掌で叩きつけ、赤ランプを点灯させた。
左衛門三郎(さえもんさぶろう)三左衛門(さんざえもん)! 八十八歳!」
 ハゲあたまの老人は〝壊れたハーモニカ〟のような声ではきはきと答えた。
 それにしても、その個性的で特徴のある声といい、人相風体といい、ぬっこ先生にはどう見ても大滝(おおたき)秀治(ひでじ)にしか見えなかった。
「え……と、あの、それは、どこまでが苗字……なんでしょうか?」
 ぬっこ先生は戸惑いながら演台の上の名簿を確認した。
「八十八です!」
 秀治は誇らしげな顔で年齢のみを答えた。
「ああ、なるほど。わかりましたァ」
 めんどくさいのでわかったふりをするぬっこ先生なのであった。
「では、つづいて二番の方」
 すると、真ん中の解答席に座る丸いメガネをかけたツルツルあたまの老人が「はい!」と大きな声で返事をした。
一尺八寸(かまづか)五十五(いすず)!! 九十五歳!!」
 老人のメガネが「キュピーン」と怪しげな光をはなつ。ぬっこ先生はイカ耳になってゴクリとつばを飲み込んだ。
「ほ、ほぉ。九十五歳ですか。ちなみに、一尺八寸は何センチになるんでしょうか?」
 そう訊きながら、ぬっこ先生はこみ上げてくる笑いをこらえていた。この老人がカッパのミイラとガンジーを足して二で割ったような顔をしているからだ。
「あのね、鎌の(つか)がね、一尺八寸なんですよ。長さが。だから〝かまづか〟っていうんです」
「あーそうなんですか。それで、一尺八寸は何センチになるのか教えていただけますか?」
「……はあ?」
 ガンジーがポカンと大きな口を開けて右の耳に手を当てた。どうやら耳が遠いらしい。
「だから、一尺八寸は何センチですか!?」
 ぬっこ先生は大きな声で訊きなおした。
 そのとき、ぬっこ先生はガンジーの右手がプルプルと小刻みに震えていることに気がついた。これは動脈硬化――いや、本態性振戦。おそらくパーキンソン病の症状だろう。しかし、スタジオの中を漂っているアルコール臭の元が彼であるならば、ただのアル中ということも考えられる。通りで近所の酔っぱらいのじいさんに雰囲気が似ているわけだ、とぬっこ先生は思うのだった。
 ガンジーがプルプルと震える指を折って数えながらつづける。
「一尺八寸はね、だいたい五十四・五センチぐらい。だからね、私の名前は四捨五入して五十五になったわけなんですよ。弟はね、私より三つ下だから五十八(いそや)
 ガンジーが顔をしわくちゃにして笑った。
「あーなるほど。よくわかりました」
 ぬっこ先生はぎこちない笑みを返しながら相槌を打った。ちなみに「いすず」という名前は女性に多いのだが、その辺の事情を聞くと話が長くなりそうなので、ぬっこ先生はあえてスルーした。
「さ、さて。それでは三番の方」
 ぬっこ先生はハンカチで額の汗を拭きながら言った。
(かぶと)浩司(こうじ)! 八十九歳!!」
「ん なに?」
 兜甲児?――ぬっこ先生はまたしても名簿をのぞき込んだ。
「あっ、浩司か」
 しかし、三番の老人は兜甲児ではなく、どちらかといえば〝某動物王国のあの人〟にそっくりだった。
「さて、それではさっそく第一問目!」
 いよいよ本番スタートだ。
「上の写真の人物が食べている物はなんでしょうか! わかった方は手元のボタンを押してお答えください!」
「はい!」
 ボタンを押したのは秀治だ。
「おっ、速いですねえ。はい、秀……」
 と言いかけて、ぬっこ先生はいちど咳払いをしてから「三左衛門さん!」と笑顔で指名した。
「どら焼き!」
 キリッとした表情で秀治が答えた。
「ああ、たしかに似てますけどね。残念、ちがいます。どら焼きじゃありません」
「はい!」
 次にボタンを押したのは兜甲児もとい兜浩司。名付けてマジンガーである。
「カレーパン!」
 黒縁メガネをつければ本物のムツゴ〇ウと見分けがつかないだろう。マジンガーはスタジオに入ったときから、ずっとニコニコと無邪気な笑顔をたたえていた。
「うーん、ちがいます。残念!」
「はい!」
 ガンジーがプルプルと震える右手をゆっくりと頭上に伸ばした。
「あの、答えるときはボタンを押してください」
 そしてガンジーがボタンを押そうとしたときである。秀治が一瞬早く、先にボタンを押して手を上げた。
「はい、秀……三左衛門さん!」
「あんぱん!」
「まあ、パンなんですけどもね。中身は餡子じゃありません。さあ、みなさんも、よく見てください。パンに挟んであるのはなにか。これはヒントというより、もう答えを言ったも同然です!!」
 ぬっこ先生は、ふとガンジーに目をやった。顔のよこで右手をプルプルとふるわせている。おそらく、指名されなかったのが気に入らないのだろう。ガンジーは反抗的な眼をぬっこ先生に向けながら、何事かブツブツとつぶやいていた。
 本来なら、ボタンを押さなければ解答権を得ることはできないのがルールである。だが、相手は素人。それもかなりの高齢者だ。今回ばかりは大目に見てやろう。
「はい。では――」
 ぬっこ先生がガンジーを指名しようとしたそのとき、マジンガーが解答ボタンを押して手を上げた。しかし、ぬっこ先生はマジンガーを無視してガンジーを指名した。
「コッペパ――」
「ホットケーキ!」
 ガンジーとほぼ同時に、マジンガーが被せるように大きな声で答えた。
 ぬっこ先生は苦笑混じりにため息をついた。
「あの、マジ……浩司さん。いまは五十五さんの番ですので、指名されてからお答えください。よろしいですね? ちなみにふたりとも不正解です」
「はい!」
 解答ボタンを押しなおすと、マジンガーは太陽のような明るい笑顔で手を上げた。
「はい、マジ……浩司さん!」
「ホットケーキ!」
「だから! ちがうの! わかるゥ? ぬっこ先生の言ってること、わかるゥ?」
 ぬっこ先生は〝スレッガー中尉〟の声色で叱りつけた。
 しかし、まさかこれほどまでとは。ぬっこ先生は彼らの圧倒的パワーに成す術がなかった。だが、戦いはまだはじまったばかりだ。休む間もなく、秀治の席の解答ランプが点灯する。
「はい、秀治さん! じゃなくて三左衛門さん!」
「シドニー・ポワチエ!」
 秀治の意外な回答に、ぬっこ先生は裏返った声で「フッ」とふき出した。
「いや、人物のほうじゃなくて、彼が食べている物を当ててください。ちなみに写真の人物はサミュエル・L・ジャクソンです」
 マジンガーとガンジーの解答ランプが同時に点灯した。
「はい、では五十五さん」
 ぬっこ先生はガンジーを指名した。
「カール・ルイス!」
「いや、だから……」
 わざとか。わざとやっているのか。ぬっこ先生は演台の両端をつかんでもたれかかると、深く絶望しながらガクリとうなだれた。
 そして、また解答ランプが点灯する。
「はい、浩司さん」
 ため息混じりに指名すると、マジンガーは自信満々に「キング牧師!」と大きな声で答えるのであった。
 ぬっこ先生はきびしい表情でマジンガーをにらみつけた。カメラが回っていなければ鉄球――固くにぎりしめた肉球――が飛んでいるところだ。ぬっこ先生は、ぐっと奥歯をかみしめて怒りをこらえていた。
「では、みなさんにヒントを差し上げます。もうほとんど答えを教えてるようなものですが、こうなったら已むを得ません。いいですか? よく聞いてくださいよ?」
 ぬっこ先生の説明が終わらないうちに秀治がボタンを押した。
「いや、まだ説明してる途中ですので、よく聞いていてください。いいですね」
 ぬっこ先生は気を取りなおしてつづけた。
「ヒントはマクドナルドです。ハンバーグとかレタスとかチーズをはさんだ食べ物です。みなさん、いちどは食べ――」
「その瞬間、はっとして空を見上げたらね、ちょうど〝グラマン〟が急降下してきて……」
 ガンジーが身振り手振りを交えながらマジンガーに武勇伝を披露している。
「はい、二番と三番の方。私語は慎んでください」
 やれやれ。ぬっこ先生はため息がでるばかりだった。
 秀治がボタンを押して手を上げたので、ぬっこ先生は無言でうなずき、答えるよう促した。
「ホットドッグ!」
 秀治の答えに、ぬっこ先生の表情がにわかに緩む。
「そーぢゃない! けど、おしいですよ、秀治さん!!」
 うっかり名前をまちがえてしまったが、もうそんなことはどうでもよかった。
 三番の解答ランプが赤く光る。ぬっこ先生はつづけてマジンガーを指名した。
「ピザ!」
「これもおしい……かな? いいですよ。だいぶちかづいてきました」
 つづけてガンジーがボタンを押す。
「サンドイッチ!」
「ん~、おしい!」
 いいぞ。だんだん正解に近づいてきている。
「もういちどヒントを言います。パンにハンバーグと野菜をはさんだ食べ物はなにか!」
「はい!」
 すかさず秀治がボタンを叩く。
「三左衛門さん、答えをどうぞ!」
「どら焼き!」
 けっきょく最初の答えに戻る秀治なのであった。

 ―― また来週!! ――

クイズ! ニャンじゃらホイ!!

・エンディング
 https://www.youtube.com/watch?v=RtDhGuEGgyc
 https://www.nicovideo.jp/watch/sm7795632

*BGM「シンキングタイム」
 https://www.youtube.com/watch?v=pE1gTYd9EDc
 https://www.youtube.com/watch?v=bcoT1X5Co_Q(予備)

*CM
 https://www.youtube.com/watch?v=jsWNKTqMQeE
 https://www.youtube.com/watch?v=MFNuSYnE_bw
 https://www.youtube.com/watch?v=Rmcv9QhbgDc
 https://www.youtube.com/watch?v=KXVW__x8Jds
 https://www.youtube.com/watch?v=rI1-M86CeNQ  

 

クイズ! ニャンじゃらホイ!!

ぬっこ先生からの新たなる挑戦です!!

  • 小説
  • 短編
  • ミステリー
  • ホラー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-12-01

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