糸
かわいそうなけものたちを、どうか。
だれかに対する、祈りの代償。やさしさの精度。ぼくらのあいだの、つながり、たとえば、糸として、はさみで、じょきん、と、かんたんに切れるほどの、か細さ。赤い糸なんて、しんじていない。ゆめのはなしだ。
花を手向ける。
けものの、目をつぶった顔は、どことなく幼くみえる。成熟しているはずなのに、たよりない、かよわい子どもを想わせる。ノエルが静かに泣いて、天使の、ふわりとやわらかくてあたたかい声が、ぼくらに降り注ぐ。どうか、やすらかに。
こわれた街の、おわらない夜。
しんじることをやめた、ぼくと、すべての生命体を愛したい、ノエル。
つめたいアスファルトのうえはかわいそうだったので、すでに廃墟となった歯科医院からブランケットを拝借して、けもののからだのしたにひろげた。見ず知らずの天使がぼくらの頭上で、ありがとう、と囁いた。
糸