スペア

あおい はる

 奥歯から、じわりと、いやなかんじのする、そういう夜にみる夢は、いつも、どこか破滅的。目をとじる。静寂の満ちる海岸で、世界のなにが正しくて、なにが間違っているのかを、ばかみたいにまじめに考えている。ひばりのとなりで、十一月の、初冬の、つめたい空気を肺にとりこんで、ときどき、むせる。ホットコーヒーが、あっというまに、ぬるくなるね。紅茶にすればよかった。冬といったら、コーンポタージュもすてがたい。という会話を繰り広げている、まやと、える。ひばりも、まやも、えるも、午前零時には肉体をうしない、精神だけをのこして、そして、午前七時にはまた、あたらしい肉体におさまる。うつわ。壊れたり、砕けたり、溶けたりしても、たましいが生きていれば、からだはいくらでも交換できる。不死身だ、というと、ひばりは、あまりうれしくないと苦笑いを浮かべた。まやは、しにたい日もある、と真剣な表情でいったし、えるは、あたらしいからだとシンクロしないときは、最悪、とぼやいていた。
 とつぜん、強い風が吹いて、砂埃が舞う。
 海水が飛沫をあげて、降りかかる。
 波が立ち、海面の月が歪む。
 ぐにゃりと、ゆがむ。

スペア

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-11-25

Copyrighted
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