斬るえむグランプリ敗者復活戦

taro

敗者復活戦までの日々

斬るえむグランプリ敗者復活戦への出場を決めたものの、動画撮影や編集が大の苦手な私はちょっとだけその工程が嫌になっていた。


あと普通に忙しかった。昼職、副業、DJイベントへの出演、それに伴う準備、運動時間や睡眠時間も確保しないとパフォーマンスが下がるため敗者復活戦への準備に使える時間はかなり限られたものであった。しかしたかが1分間の動画といえど絶対に手は抜きたくない。


敗者復活戦への参加レギュレーションは以下のようなものであった。

①対象者は1分間の動画を投稿し応募

②9月26日~10月5日の10日間で応募ツイートへの「RT数+いいね数」合計数1〜6位までが10月23日の敗者復活戦へ進出

③当日はお客様の投票で選ばれた1名が夜に行われる決勝へ進出できる



え〜〜〜〜〜〜〜〜〜RTといいね数ってなに〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜???みんなに協力してもらえるほど人望ないよおれ〜〜〜〜〜〜〜〜しかも当日はお客さんからの投票ってなに〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜無理〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


これが当時の心境である。
日々敗者復活戦への応募動画をTLで見る度に皆の熱意に打ちのめされ、しかし動画撮影をするだけの十分な時間が確保できず、不安と焦りで心が荒むばかりの毎日であった。


なんとか仕事の折り合いをつけバイト先の後輩ちゃんに協力してもらって動画を撮影。化粧や加工をしている暇はなかった。(人生で初めてドすっぴんノーマルカメラで素顔を晒した瞬間である)

睡眠時間を削りなんとか動画を完成させることが出来たのは夜中の3時。ツイートボタンを押す。安堵により気を失うように布団に倒れ込む。


動画を投稿したのは日付が変わってからの10月1日。他の参加者より出遅れていた。
バイト先のアカウント、趣味用のアカウントで協力を呼びかける。


私にはとにかく自信がなかった。怖かった。皆のRTといいね数はゆうに3桁を超えている。追いつけるのか?追い越せるのか?自分の本気は誰かの心を動かすことが出来るのか?またバカにされて終わりなのか?


もしこのSNS予選で負けたら私が今までやってきたことって何なんだろう…みんな本当は私のこと嫌いだったってことだよな…負けたらDJ辞めよう…ほんでTwitterも消してひとりで人里離れたどこかの山でひっそりと暮らそう…大きな犬と猫を飼うんだ…


などと、睡眠不足と不安がよく分からない方向にシフトし思考がネガティブになっていた。


しかし、動画への反応は闇堕ちしたハウルのように病み散らかした私の心境を大きく裏切る結果をたたき出してくれた。


RTといいねをしてくれたのは、斬るえむグランプリと敗者復活戦の参加者の面々、大好きなバンドで繋がった友達、お世話になっているバイト先のお客さんやDJさん、1度しか話したことがないDJさん、バイト先もDJもバンドも何一つ関係の無いリアルの友達、会ったことも話したこともない初めましての方々だった。

中には1人で複数個のアカウントを駆使し拡散といいねをしてくれた人もいた。引用RTで協力を促してくれる人もいた。
日々増えていくRTといいねの数、応援のコメント、直接お会いした方からの激励の言葉。
毎日本当に感謝の気持ちが尽きなかった。毎日毎晩DJ練習をしながら嬉し泣きをしていた。

協力して下さった皆さま、一生忘れません。ありがとうございました。


RTといいねをしてくれた皆さまのご協力のおかげで結果は1位通過。
私がやってきたこと、間違ってなかったのかもしれない。そう思えた瞬間だった。

嬉しさと同時に緊張で震えた。「応援してください」と言ったからには勝つ義務がある。裏切る訳にはいかない。


改めて身を引き締め自分を奮い立たせ敗者復活戦への準備を進めていたある日。

私の左手首が突然動かなくなった。

挫折とピンチ

前々から違和感や痛みを感じてはいたのだが、この日はあまりの痛みに耐えきれず仕事を早退し病院へ向かう。
診断を受けると「ひどい腱鞘炎と関節炎で疲労骨折1歩手前です。というかほぼ折れてます。」とのこと。
自分の中で何かがプツンと切れる音がした。


敗者復活戦3日前の出来事であった。


医師と看護師さんの前で意図せずボロボロと涙をこぼし、茫然自失で会計を済ませ、処方箋を受け取る。

とぼとぼと帰路につき帰宅。
感情の行き場がなくどうすればいいか分からなかった。このタイミングでのこの怪我、「敗者復活戦は諦めろ」という啓示なのか?



生まれて初めて本気になれることを見つけたのに。
絶対諦めたくないのに。
あんなに皆が協力してくれたのに。
あんなに応援してくれているのに。
私が私をダメにしてしまった。



1人で抱えきれず、親友と呼べるレベルで信頼している女友達のグループと日頃お世話になっているDJの先輩へ「こういう状況なんだけどどうすればいいかわからない」LINEを送った。

どちらも親身になって話を聞いてくれたし、そのおかげで冷静さを取り戻すことが出来た。

DJの先輩はテーピングや湿布を差し入れしてくれたり巻き方を教えてくれたりと本当にお世話になりました。心配をおかけしてすみませんでした。



手首は痛いし曲げられない。手首をかばって別の部位を使うと変に痛むし疲れる。痛み止めの薬はいくら飲んでもなぜか効かない。タイピングやCUEボタンを打つことすら響いて痛い。完全に詰みだ。


それでも敗者復活戦の日は近づいてくる。


怪我を言い訳になんかしたくなかった。自分に出来るすべての準備をし、私は敗者復活戦への会場である名古屋行きへの新幹線へと飛び乗った。

敗者復活戦当日

迎えた敗者復活戦当日。

敗者復活戦も前日に名古屋入りをしホテルに宿泊。効かない痛み止めのせいか疲労のせいか到着時からあくびが止まらない。おかげでホテルに着いてからはよく眠れた。


アラームより1時間ほど早く目覚め、支度を始める。ガチガチにサポーターを巻きセットリストの最終確認をする。
前回のような得体の知れない緊張感よりも、ワクワクドキドキといった高揚感が勝っていた。


ひと月ぶりの今池3STARは2回目ながら勝手知ったるといった感じだった。ステージ幅の相談などを皆でする。ワクワク。

皆が控え室に入った頃を見計らい、唯一ステージに残りVJの準備をするKJさんに「見ないでください!!!」と無茶なお願いをし、自分のDJ中に踊るダンスの確認をする。
エレベーター前のフロアでもちょこちょこ確認していたらいろんな人に(またアイツ何かやってるな…)という目で見られた。

どうもこんにちは、前回に引き続きDJ中にDJしないDJことtaroです。



くじ引きで出順が決まる。私の出番は4番目だった。
曲が被らないか怯えながら出番に備える。

1番手かどっちょは相変わらずアツい。本気で勝ちたいという気持ちがひしひしと伝わってくる。気持ちを曲に乗せて表現出来るDJ、自分には出来ない事なので本当に尊敬する。
続いてたーさんは相変わらずべらぼうにDJが上手い。前回よりニッコニコでプレイしている。かわいい。

みんな本当に凄い。かっこいい。より燃えてきた。落ち着かない心境に連動するように手首の痛みが強くなる。


自分の出番が近づく。お客さんに不安感を与えたくないし何より同情は買いたくないのでサポーターを外し、何もつけずステージへ向かう。


手首の痛みが増していく。痛みと緊張で手汗の量が尋常じゃない。初めて出来た彼氏とのデートの時より凄い量の手汗。

ステージで暴れ回るおかぴーさんにちょっと怯えながらセッティングをする。


もうすぐだ。


敗者復活戦のセットリストは、私の好きなものと私が今まで助けてもらった曲たちを詰め込んだものにした。
ポケモンと戦うトレーナーよろしく「みんな今日はよろしくね」と機材たちに語りかけ、DJソフトを起動させる。


ステージからみんなが見える。


みんながフロアにいてくれて嬉しいな、本当にありがとう。
あなたたちのおかげで私は今最高に幸せだよ。
みんな大好きです。
私の今を見届けてください。



再生ボタンを押す。泣いても笑っても30分だ。



実際、手首の痛みは思っていた以上で集中力が乱れる場面もあり、手首をかばいながらのパフォーマンスになってしまったため動きがぎこちなかったり不自然になってしまうところが多々あった。

しかし、「お客様から求められているプレイをする」ことと「自分が好きなプレイをする」ことの狭間で悩み抜いた答えと、現時点での自分の全力を、ステージ上でのあの30分間で出し切った。
心の底から楽しめたので後悔はなかった。


どんなに下手くそでも、どんなにぎこちなくても、どんな判断をしたとしても、あの30分間の私が"いまの私の現状"なのだ。受け入れないと前には進めない。私はここで終わりたくない。もっと目指したい場所がある。



だから負けたことにも納得出来た。
自分自身にもだし、あんなに良いパフォーマンスをしたモヮンキーに負けるなら本望だ。
彼の本気がお客さんの心を動かした。本当にすごい事だし、その現場に立ち会えてとても光栄だった。

ちなみに彼は敗者復活戦でトリ、直後の決勝戦でトップバッターを勝ち取るなど本当に「持ってる」奴だと思う。ずるいなぁ!


結果発表を終え控え室に戻り、つづきともみさんのお話の後解散するとさくらちゃんがちょこちょこと近づいてきてくれた。かわいい。すでに涙目。

さくらちゃんは瞳をうるませながら「チャラン・ポ・ランタンかけてくれたのめちゃくちゃ嬉しかったしtaroちゃん本当にカッコよかったよ」と言ってくれた。さくらちゃんは斬るえむ4のときも感想を言いに来てくれていた。
私は人前で泣くことに対してかなり抵抗があったが、さくらちゃんのかけてくれた優しい言葉とさくらちゃんの涙につられて、さくらちゃんとハグしながらわんわん泣いてしまった。
かっこつけて「後悔はない」なんて言いはしたが、本当は負けて悔しかったのだ。意地っ張り。かわいくねー女。


そして迎えた血湧き肉躍る決勝戦、各々の本気をひしひしと感じた。技術や選曲やパフォーマンスもそうだが、全員の想いがとても羨ましかった。こんなイベントそうそうない。


仲間の勇姿を見届け結果発表を迎える。

優勝はれべるだ。

れべると初めて話した時、完璧に見た目での判断なのだが、彼がこんなに熱量のあるDJをするとは思っていなかった。さすが詐欺師。褒めてます。



過剰飲酒により打ち上げの記憶はほとんどありませんが、つづきともみさんにテキーラを押し付けたりかわい子ちゃんにほっぺちゅーしてもらったりと写真を見る限りゴキゲンだったみたいです。ご迷惑をおかけしてないかだけ心配です。すみませんでした。


以上が敗者復活戦と決勝戦当日、長い長い一日であった。

斬る’em ALLの皆様とグランプリを通じて繋がった皆へ

〜斬る’em ALLの皆様へ〜


わけもわからず参加した斬るえむグランプリでしたが、参加させて頂いて本当に良かったです。

つづきともみさんをはじめスタッフの皆さま、今池3STARの方々、企画や運営お疲れ様でした。

イベントを開催し続ける大変さであったり苦労は尽きないことと存じます。その中でも参加者みんながこんなに熱くなれるイベントを行ってくれること、本当に感謝の念が尽きません。

これからも斬る’em ALLの皆さまのご多幸と益々のご発展を願っております。


大好きです!!またどこかで!


〜斬るえむグランプリを通じて繋がった皆へ〜


関東圏や都内でDJをしていて、楽しいことも嫌なことも沢山あって、手当り次第イベントに出演して自分の居場所ややりたいことが分からなくなっていたときに出場した斬るえむグランプリでしたが、こんなに自分のDJ観に影響を与えるイベントだと思ってなかったです。


女だからって舐められたり変に姫扱いされることもなくて、対等にライバルとして一緒に戦ってくれた皆に本当に感謝してます。
言葉にしきれないくらいめちゃくちゃ嬉しかった。


これからも永遠に楽しいパーティをしていきましょう。そしてまたいつの日か戦いましょう。仲間としてライバルとして、これからもどうぞよろしくお願いします。


みんな愛してるぜ!!

斬るえむグランプリ敗者復活戦

斬るえむグランプリ敗者復活戦

  • 随筆・エッセイ
  • 短編
  • 青春
  • アクション
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-11-23

Copyrighted
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  1. 敗者復活戦までの日々
  2. 挫折とピンチ
  3. 敗者復活戦当日
  4. 斬る’em ALLの皆様とグランプリを通じて繋がった皆へ