巡行

雪水 雪技

巡行

崩しあそび

積んで積んで
途中で飽きて
何もかもごちゃ混ぜにした
あの子が遊んだままごとの鍋に
僕の積み木が飛び込んだせいで
僕はあの子を泣かせてしまって
僕はせんせいにおこられている

つまらないからバケツに砂詰めて
逆さに出して山にして

踏んづけ崩してきみがいい
きみがいいのに寂しいくもり

もみの木の記憶

生き物に名前をつけてたらいたら
なんだか飽きてきてしまって
星々の物語もいつか飽きてしまって
何億年生きようとも
埋まらない退屈に
僕は死んでいた

つまらないものが
綺麗に飾り付けられ
すました顔して並んでいた
綺麗でしょうって言われて

そうだねって笑った後に
やっぱり僕は死んでいた

花瓶を割って世界を視て

割れた花瓶から飛び出す種子は
広い庭を走り抜け都会の灯りに群がる

ここに美しい花を咲かせたい
灰色の地面、オレンジの灯り
その下に咲く、僕らの美しさ

街に充満するのは
ウィスキーの香り
種子はやがて酔い潰れる

夢で咲かせた白い花
群衆は見惚れて
帰路を忘れて

龍雲

龍の鱗が空に舞い散る
青い鱗は太陽光を反射
私の目は眩んでいく
寒波に舞い踊る龍雲
空のシアンが落ちそうな
心まで染まる寒色に
何かが満ちていく朝
頬が冷たくなっても
頭が痛くなっても
私の中身が突き抜ける
冬の空に憂鬱よ溶けて
私の頭をまっさらにして
そうして私も舞い上がる

朝の心の礼拝堂

朝になると卵が割れる
生まれてくる二つの黄身
太陽と月を表している噂
塩の雪が降って
今朝の食卓は
寒々として
それでもパンは焼けている
私は何もかもをお腹におさめて
私は上手ないってきますと
丁寧なおはようございます
その言葉そのものの為に
祈る気持ちでスープを飲んだ

人喰い一座

昨夜の旅の一座の公演は
酔っ払いの野次に止まることなく
役者は終始役を演りつづけ、
夜はずっとシンデレラであり
夜はずっと浦島太郎であり
夜はずっと白雪姫であり
夜はずっと桃太郎であり

誰も芝居は止められず
誰も目が離せなかった
奇妙な劇が進むにつれて
皆が話に飲まれていった

私の形を飾るため

心電図に描かれた
私の心音のアート
私の瞳の額縁に
飾らせて下さい

鍵をかけて
誰も入れない
私の奥の部屋は
何も無くて寂しかった

私は私の一部を欲しがった
この模様が私の生きてる証拠
何より響く芸術に
皆が私を怖がっても
私はすっかり魅せられていた

手紙を追う家出した物語

上から鳴るのは警報だ
秋の風に乗ってここまで来た

何に気をつける?
あらゆることに

何を疑う?
あらゆることを

空を舞う手紙は誰かの書きかけ
作家の書いた原稿が追いかける

あれは熱烈なものだった
それはいいものを見たね

鳴り響く警報に慣れる耳
手紙の心をあの文体は奪えるか

冬の汽笛

冬の汽笛が聞こえるか
君の街に響かせよう

冬の汽笛が聞こえたら
箪笥の奥から毛糸の手袋
寒さに備え走る君

君の息が白くなる頃に
汽車は君の街に停車する

君は今年も乗ることなく
白くなっていく街並みを
ずっと見つめているんだね

冬の汽笛が聞こえたのなら
手袋に隠した君の手を振って

雪国の沈黙

霰が先に降る今年
窓を叩いて主張する
雷、暴風あいまって
デタラメな演奏
悦に入る悪天候

寒波だ、寒波だ、騒いでいる
私たちなら知っている
秋の短さ冬の長さ
昼の短さ夜の長さ

雪あかりのやさしさ
しんとする街並み

冬の訪れは、雪雲運んで大騒ぎ
みんなわかりきって黙り込む

果ての無いものたちの共鳴

霊性の共鳴に運命などと名付けない
ただ、会った、逢った、遭った、
在っただけのことであり
天文学的数字の分母が
居座り続けているだけ

素晴らしいことだと
手放しで喜ぶことは
共鳴とは呼ばなかった

天体同士の衝突事故の現場
何億光年も先の君と
一瞬目が合った
その瞬間が、
その時だった

生きている家

もう誰も住んではいない
築百年以上の祖母の家は
人がいなくなるにつれ
床も天井も衰えた

私の思い出を訪ねても
新しい風に飛ばされて
私のにおいは消えていた

ここで何をしていたのだろう

トンボを捕まえて
草を引っこ抜いて
砂利道の音で遊ぶ

そんな子供が居た
記憶か事実か
曖昧になって

願いが灯すもの

失せた願いはそのままそこに居る
私が生きている限り願いも生きる

願うことに躊躇するのが
美徳ではないと知るのは
随分と後のことであった

願いは落ちてはこない
満天の星は私たちの過去を知る
天体の軌道は私たちの未来を見る

流れ星に賭けなくても
願いは叶わずとも
命を灯し続けて

止まない抗議

曇天に吹く風は渦巻いて
停滞したまま空を睨む
気温の乱高下に抗議
コートかシャツか
朝から討論会

干したシーツが空に舞った
憧れた白い雲に並んだ日を
寝室で眠りに落ちるまで
語り続ける寝具のせいで
寝不足の人たちが溢れる

通行人が眠る道

雲に群がる夢を見たら
眩しい日差しに抗議

巡行

巡礼する星々になりて
長い旅を長いと思わず
生まれて散るものを嘆かず
出会いと別れに一々騒がず

そうしていたら
自我というのは
星雲より曖昧に
今にも消える煙

それは寂しいこと
それは悲しいこと

もう一度肉体に還ろうか

真空の中に、
あの涙は、確かにあったよ
あの産声、確かに聞いたよ

輪廻の先に

生まれて死んで
生まれた死んだ

死んで生まれた
死んだ生まれた

そのサイクル

嘆きの声
喜びの声

どちらもあったのは確かなこと

それなら私は幸せなのか不幸なのか
いつになれば答えは出るのだろうか

いっそ全てを、
忘れて暮らす
時間と共に、
優しくなって

全部を許せる私に会えたのなら

在処

私が消えたことに
気が付かないまま
気が付いた時には
再び囚われている

そこには、
変わらないものは無いけれど
終わるものは無かったけれど
約束は全部やぶられたけれど
どの約束も守らなかったけれど
みんなに裏切られたけれど
みんなを裏切ったけれど

そこには全てがあった、あったよ

道の上のダイバー

私は海に入る
私は深く潜る
私は深海で深呼吸
群衆から離れて
新しい棲家を見つけ
ここで一から始める

海の生き物へ挨拶しても
皆忙しそうに泳いでいる

今日の餌を確保する為
激しい競走を始めている

地上を思い出して
伏せる私を心配する
チョウチンアンコウ

街灯の下ずぶ濡れのスーツで

堂々巡り

積み重なる荷物に嫌気がさして
生きるために必要なものだけを
仕分けを始める
何日経っても減らない荷物
それどころか増え始めている
減らすために増やしている

力を抜くために
力が入っていく
捨てるために
物を持ち始める

そのままでいる
そのことが一番困難で
そのことに一番囚われている

異界からの展示物

この知らない地図は
私の住む世界とは違う
隙間から入り込むものは
この世界に無い形をしていて
独創的に見える物たちの姿に
私はほんの少し嫉妬を覚えた

隙間から、
あの世界に無い物を送り
あの人の反応を伺っている

丁寧なあの人の顔が少し歪む

僕らの失敗作ですら
人の妬みを生むらしい

巡行

巡行

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-11-17

Copyrighted
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  1. 崩しあそび
  2. もみの木の記憶
  3. 花瓶を割って世界を視て
  4. 龍雲
  5. 朝の心の礼拝堂
  6. 人喰い一座
  7. 私の形を飾るため
  8. 手紙を追う家出した物語
  9. 冬の汽笛
  10. 雪国の沈黙
  11. 果ての無いものたちの共鳴
  12. 生きている家
  13. 願いが灯すもの
  14. 止まない抗議
  15. 巡行
  16. 輪廻の先に
  17. 在処
  18. 道の上のダイバー
  19. 堂々巡り
  20. 異界からの展示物