【長編】ヒトとして生まれて・ 224

万田 竜人(まんだ りゅうじん)

【1999年の作品より(当時:57歳)】

この年、俳句に本格的に取り組んで「二年目」前年の順調な滑り出しに比べて
突然の乱調期に突入、航空路においてエアポケットに入り込んだ印象だ。
(投句は多いが、今回、選句の対象となる俳句は激減)

「ヒトとして生まれて・第5巻」で、既に詳述してきたが、我が人生にとって、
突然、オフイスにおいて「針の筵に座らされた」印象の時期である。

しかしながら俳句の投稿を始めていたお陰で、次の投稿句によって、救助隊が
駆けつけてくれて、以後の人生が拓けていったことを考えると・・・

「俳句によって人生の危機を乗り越えることが出来た」と、云える。

ドキュメンタリー的に具体的な事例としてその俳句を紹介することにしよう。

無常観としての「浅学」からの一句として・・・

224 「はらわたのにえる思いに寒の水」と詠んだ

ヒトとして生まれて・第5巻で、その経緯を詳しく紹介しているので、ここでは
詳しい紹介は省くが・・・

◯ 我が人生において 「秀句」と、いえるものは皆無であるが

◯ この俳句に限っては、私自身が、救われている事実から、私にとっては唯一
渾身の一句と云えるのかも知れない

私にとって、当時「ユング博士の心理学」に学び、我が家の菩提寺でもある曹洞宗の
教えの根幹に触れることで、鬱(うつ)に陥ることもなく苦悶の3年間をやり過ごす
ことが出来たが、俳句の投稿を続けることで救われた面は計り知れない。

次に、この年の俳句を羅列するが、選句した俳句とは云え、乱調気味の気配は容易に
想像できるものと考えている。

そして、この苦境を乗り越えることが出来たのは飼い犬も含めて家族による何気ない
支えが大きかったのかも知れない。
(当時、この苦境は、家族にはいっさい伝えていなかったが)

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211 去年今年握手を交わす零時過ぎ

212 賑わいて帝釈天の初詣

213 破魔矢買ふ人の列延々と

214 紫煙浴び健康祈る年初め 

215 一月や閑な居間で計建てる

216 正月も仲良きことを心掛け

217 新年を祝い吟醸生酒呑む

218 元日や地元の神社で御札受け

219 初明かり雨戸の隙間から射せり 

220 初夕日燦燦と照り家内呼ぶ

221 新年や神秘の地球青々と

222 破魔矢買ふ参道にては懐に

223 淑気あり境内に満ちて清々

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無常観「浅学」三題

224 はらわたのにえる思いに寒の水

225 暖かき天の恵みに春近し

226 冬に翁の即興の句を見付けたり

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227 冬の吉日赤ちゃん筆に触れり 

228 白ワインコルク抜く音景気良く

229 ビフテキを焼く冬ニンニク臭飛ぶ

230 蕗のとう竹の子と煮て冬の旬

231 牡蠣鍋にうどんを敷いて餅も入れ

232 春隣チョコの売り場が用意され

233 己知る五十路を超える寒の数

234 今の世に何を吠えても息白く

235 葛飾で柚子をもらひて年を越す

236 冬の雲鉛色して幾重にも

237 雲を押し開け冬の朝日眩しく

238 冬ざれて飛行場の芝褐色

239 妻からの誕生祝寒の入り

240 娘からセーター届く一月尽

241 冬の月飼い犬抱え脚洗ふ

242 冬雲の縁に茜の朝日かな

243 西方の冬の客来て懐かしく

244 冬に曹洞宗の深さを学び 

245 食即禅で超えた厳寒思ふ

246 手の平に柔らかな春光差す

247 野辺に白梅の咲いて風や和み

248 紅梅はやや遅れとり一分咲き

249 君の背伸びは気持ちいいね春先

250 虎落笛津々浦々の世紀末

251 真昼に手で掬うほどの白梅花

252 春が立つそれだけで心上向く

253 水入れ前の田で虫も春を待つ

(続 く)

【長編】ヒトとして生まれて・ 224

【長編】ヒトとして生まれて・ 224

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-11-16

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