冬のクレマチス
ゆらゆらと、ゆれながら眠る。夜と、朝のあいだの、となりにいる、ネオの、安らかな呼吸。羊水のなかでの、きおく。あやふやになりつつある、現実と、幻想の境界線。つめたい、街。血をうしなった、世界。ぼくのからだににじむ、花の模様。呪いか、それとも、幸福のしるし、か。めまいがするような、きみからの、あい。こたえもわからないまま、獣と結ばれる、こどもと、くそやろうになるばかりの、おとな。あたまがいたくなるほどの、不協和音に、果たして意味があるのか、ネオの、うやうやしい祈り。
欠けたところから、ほころんでいく
ネオの眠りをさまたげないよう、ベッドをぬけだして、まどをあける。ベランダからみえる、いつもの風景。家と、アパートと、ビルと、コンビニと、駐車場と、学校と、よくわからない建物と、森と呼ぶにはあまりにもささやかな、点在する緑。澱みを浄化する、ひややかな空気。あたらしい日のはじまりを、よろこんでいるのは早起きの、ちいさな鳥たち。青紫色の花が浮かび上がる、ぼくの肉体を、あいしてくれるのは、きみ。ネオ。それから博物館の、ガラスケースのなかにいる、おかあさん。
冬のクレマチス