やさしい巣
やさしさをつめこまれて、きゅうくつだ。ベッドのなか。
きみがいつのまにか、世界の中心になった日のこと。図書館で借りた鉱物図鑑を、いのちのつぎにたいせつなものみたいに、だきしめている。せんせいの、透ける飴色の、脱いだ皮の一部(おそらく、にのうでのあたり)を、なんとなく捨てられないものみたいに、丸いクッキー缶のなかにしまってある。
窒息しそう。
ぬくもりで。
息継ぎをさせない、きみのくちびるは、べつに、感動するほど、やわらかくもないけれど。
星のうえでは、いつも、あらゆる事柄が、くりかえされる。うまれて、しんで、つくられて、こわされる。遠い海にいる、シャチのことを想いながら、ぼくは、きみのあたえてくれるやさしさに埋もれて、くるしみながらも、ねむる。きみは満足そうに笑み、ぼくの髪を撫でる。愛とは、いつでも、どこでも、だいたい、自己満足のかたまりで、それはたぶん、だれかに対するやさしさも、おなじだ。
冬は好きだよ。
夜空の天体が、きれいにみえるから。
いみもなく、泣きたくなるよね。
やさしい巣