絶対安寧
燃えつきた、星。いのちの光。躍動。人類。吐き気がする、ままごとじみた、だれかのやさしさ。好きだったひとのなまえを忘れたから、砂に還りたかった。
爪に、赤をさす。
きみがおもしろおかしそうに、わらう。
夜がこわかったのは、こどもの頃だけのはずだったのに、いまでもときどき、夜は、こわいと思う。しらない国でおこる、戦争と、じぶんたちの国でひんぱつする、かなしい事件とが、みんな、メディアをとおしてもどこか、リアルさを欠いているようで、脳内が、フィクションめいたものに勝手に変換して、おまえの世界は大丈夫だよと言い聞かせている気がしている。自己防衛。いつだって、傷つきたくないのだ。こわいものは、しぬまでこわいし、いたみはなるべく、さけてとおりたい。
ぼくの爪が、赤く染まる。
きみのために生きているみたいな人生も、いいのかもしれないとかんがえる。
ミルクチョコレートがコーティングされたラスクを食べながら、きみが、しらないだれかが配信した動画を観ている。それっておもしろいのとたずねたら、きみは、わかんない、とあっさり答えた。
絶対安寧