メメ

 メメがこどくになる。あたしはそれが、ゆるせない。
 電話ボックスのなかで、キスをしていた、メメのおとこと、しらないおんなを、メメは、電話ボックスの外から、どこからもってきたのか、鉄パイプで、がんがんと殴ったらしい。ガラスはひび割れ、ドアは歪み、鉄パイプは曲がり、メメは嗤っていたという。こわ。でも、ああ、メメっていろいろふりきれると、やばいよって、モリは言っていた。ふだんおとなしい子がキレると、手がつけられないやつだ。そういえば中学生のとき、クラスのおとこのこにも、そういう子がいたっけ。ちいさい声で、ぼそぼそとしゃべるおとこのこだったけれど、一度、おなじクラスのチャラいばかなやつがひどくからかったら、絶叫しながら、おとこのこはブチ切れて、机と椅子を蹴り倒し、あばれていた。あれはちょっと、こわかった。にんげん、理性がとんじゃうと、ああなるんだって思い知った。だからメメが、いつもはめちゃめちゃおんなのこしていて、おんなのこのなかのおんなのこみたいな、かよわくてかわいいメメが、ガチ切れしたら、鉄パイプで電話ボックスをこわしちゃうんだなって。ああ、そのギャップがまた、たまらんって感じ。と、あたしが熱弁をふるうと、モリは、あんたもたいがいやばい、と引いていた。うっさい。

メメ

メメ

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-11-08

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted