こどものオモチャ

草片文庫(くさびらぶんこ)

こどものオモチャ

SFです。


 6月8日月曜日のことである。
 夜の十時、寝室で寝ようかと準備をしていると、寝室のとがすこしあいた。
 何だとびっくりしていると、虎の子供の顔が現れた。おどろいて、ベッドから離れると、虎の子は中に入ってきて、ベッドの上に飛び上がった。その隙をねらって、廊下に逃げた。
 何で虎が、足ががくがくしている。それでも気を確かに持って、警察署に電話をした。
 電話の先では驚いた警察官が、捕獲の人を連れてすぐいきます、住所をいってくださいと言っている。
 名前と住所を伝えた。
 しばらくすると、サイレンの音が聞こえ、玄関のベルが鳴った。
 開けると、「大丈夫ですか、虎はどこにいます」
 と警官が聞いたので「寝室に閉じこめました」と、部屋の前に案内した。
 捕獲の人が動物にかぶせる網を持って、寝室の戸をそうっと少しばかり開けた。
 ベッドの上で寝ていた虎模様の猫が顔を上げた。
 「何だ、虎猫じゃないですか、お宅の猫じゃないのですね」と、捕獲人はちょっと軽蔑の眼を私に向けて、ベッドの上から猫をつまみ上げると、待機していた警察官に、猫でしたと、大きな声で訴えると出て行った。
 夜遅いのに、家の周りには近所の人が集まってきていた。虎猫という声を聞くと、クスクス笑って、戻っていってしまった。
 「それじゃ、明日、警察にこの報告書の記載をお願いします、署の方で書いていただきますので、かけるとこは書いておいてください」と書類を渡された。
 さらに、このチェックをお願いしますと、なにやら息を吹き込むものを渡された。言われるようにして、渡すと、それを見た警察官は「酒は飲んでないようですね」といった。アルコール検知器だ。
 「ええ、飲めませんから」
 私は下戸である。
 「睡眠薬は飲んでいませんね」
 「飲んだことはありません」
 「ほかの薬類もなさそうですね」
 どうも麻薬や危険ドラッグのことをいっているようだ」
 「ビタミン剤は飲むことがあります」
 「視力も良さそうだし、お疲れのためですかね、ひとり暮らしのようですね、野良猫はよく入ってくるのですか」
 「いえ、はじめてです」
 庭付きの一戸建ててで、両親の家だったがもういない。一人っ子の私が独りで住んでいる。
 「お勤めに行くときは、戸締まりをきちんとしてください、明日、署にこれますか」
 「はい、午後から仕事です」
 私は英語の非常勤講師である。いくつかの大学を掛け持ちして、食いつないでいるのだが、来年はなんとかある大学の常勤になることが決まっている。
「明日、よろしく」
 若いけどなかなか、感じのいい警官だった。保健所の車はもう帰ってしまっている、彼がパトカーに乗ると、待っていた相棒がすぐにエンジンをかけ、急ぐようにでてしまった。
 一人になった私は、なぜ猫が虎に見えたのか、なぜ猫が我が家にはいってきたのか、どうもわからなかった。
 ちょっと寝付かれなかったが、それでも六時頃目を覚ました。
 朝一番で警察に行こう、書類かきなどは早くすませてしまおう。
 バスで警察署前でおり、入り口を入ると、控え室に通された。応接室のようだ。呼ばれるまで待つように結われ、ソファーに腰掛けた。すでに六人もの人が腰掛けている。朝早くからいったいなんだろう。
 三十分ほど待たされ、面談室に来るように言われた。
 昨夜の警察官が面接するようだ。
 「水谷さん、朝早くありがとうございます」
 「いえ、昨夜はご迷惑かけました、野良猫を虎と間違えるとはみっともないことで」
 私が謝ると、「いえ。いえ、まず書類を整えましょう」彼は私から書類を受け取って、いくつかの質問をして、「この書類は終わりですが、お時間があれば、ちょっとお聞きしたいのですが」と切り出した。
 猫を虎と間違えたのだからもっと、厳しい言葉がかかると思っていたので、ちょっと、拍子抜けした。
 「仕事は午後ですから」
 「あ、お仕事はなにを」
 「英語の教師です」
 「あ、そうでしたか、実は昨夜、水谷さんのあと、ひっきりなしに電話がかかり、虎退治に出かけました。警察官は、笑っているようでもあり、困っているようでもある。言っていることもなんだかよくわからない。
 私が黙っていると、警察官は「応接室に人がたくさん待っていましたでしょう」
 私の後にも何人か入ってきていた。
 「みんな、虎の子どもが家に入ってきたと連絡くれた人たちです」
 私は耳を疑った。
 「それで、やっぱり猫だったのですか」
 「そうなんです、水谷さん、猫は好きですか」
 「ええ、子供の頃から飼っていました、両親が他界して、すぐに古くから居た三毛猫が老衰で死に、それ以降はかっていません」
 「やっぱりそうですか、おかしいんです、昨夜10時から12時の2時間のあいだに、うちの署の管轄で、31件の虎騒ぎがありました」
 「そんなに」
 「ええ、それで、もう、書類を8名の人が持ってきてくれたのですが、そのうち猫好きの人は6名、その人たちは虎猫を虎と見誤っていましたが、2名の猫の嫌いな人は白黒の猫を虎と思ってしまっています」
 意味が分からなかった。
 「署のサイコアナリストが、あ、心理担当の科学捜査官ですが、猫の好きな人は、虎もようが虎を想起させたのだけど、猫になじみのない人は、模様じゃなく、顔や身体の形だけで、虎を思い起こさせてしまったと」
 そんな解析はどうでもいいと思うのだが。
 「はあ、そうですか、そもそも自分でもおかしいと思っているのですが、なぜ虎と思ってしまったかなのです、あまり見間違いをするようなことはしたことがありません、寝ぼけてそういうこともしたことがありません」
「そうですか」
「それに、31名も同じ状態になったということはどういうことでしょう」
 「そうなんです、その上に、12時過ぎたらそういう電話はかかりませんでした、2時間だけです」
 「猫好きがなぜ、猫を虎と間違えるのかおかしいと思います」
 「ええ、それで、科学捜査官は、その日のテレビで猫と虎がでた番組があって、それを見た影響はないか、番組表をしらべていました」
 「私は、昨日はある大学の昼夜学部で講義をしたので、家に帰ったのが10時近くだったので、それから買ってきた弁当を食べて、風呂に入って寝ました。テレビはニュースをちょっと見ただけです」
 「そうですか、他の人も見ていないと言っています」
 「気味が悪いですね」
 「いや、心配ないですよ、また何か変なことがあったら、遠慮なく連絡してください、今日はご苦労様でした」
 そこで私は警察を放免された。変なことがあるものだ。
 いったん、家に帰り、早お昼を食べて、磨世田大学に出かけた。東京のはずれにあるできたばかりの大学である。ところが英語の教師が急に亡くなり、来年はそこの国際学部の講師として雇われることになっている。今は亡くなった先生の授業を担当している非常勤講師の身である。この大学はローマ字で書くとMASEDA UNIV.となり、私のでた大学の頭文字の天地を逆さまにしただけなので気に入っている。
 大学の講師室にいくと、生物学の先生がなんだか浮かない顔で腰掛けていた。都内の大学の教授で、選択科目の生命科学の非常勤をたのまれている著名な先生である。もう還暦は超しているだろう。講義は今終わったところのようだ。
 「先生、どうなさいました」
 「あ、先生、いや、夕べちょっとおかしなことがあって、自信をなくしていたところです」
 なにがあったのだろう。なんだと訊ねるのも悪いかと思っていると、自分から話し始めた。
 「いや、昨日の夜、11時頃だったかな、家内とテレビを見ていたら、大きな虎が入ってきましてね、家内がキャーッといって私にしがみつきましてね、驚いたのなんのって、虎は悠々と前を横切って窓際に行ったので、あわてて、家内を引っ張って、廊下にでて戸を閉めると、警察を呼んだんです」
なんだそれは、同じじゃないか。
「保健所の人やらなにやら、五人ほどきましてね、捕まえたら、うちの大きな虎猫でした、生物学者が猫と虎を間違えるなど、はずかしいかぎりです、これから警察に行くところです」
 それを聞いて、自分もそうだったと言おうか迷っていると、「それじゃお先に失敬」と生物学の先生は帰ってしまった。
 英語の授業がおわり、質問に来た学生が、質問への私の回答を聞き終わると、「先生、昨夜、みんなと飲んだあと、12時近くにアパートに帰り部屋を開けると、虎が寝ていて、とびあがらんばかりに驚いて、あ、酔っ払ったと思って、見直すと、近くの飼い猫の虎だったと笑った。12時過ぎていたかと聞くと、うなずいた。その学生はよく質問に来る真面目な男で、質問のあとで、自分のことを良くしゃべる。きっと、地方から出てき手一人暮らしをしている男だろう。だから良く聞いてやっていた。
 そんな話をあちこちで聞いた。それだけではなかった、新聞にも小さな記事だったが、不思議な虎猫騒動と書かれていた。精神科や心理学者のコメントが寄せられていたが、どれも的外れのような気がした。
 それは一日の騒ぎではあったが、いろんなケースがあったようだ。
 この、虎猫騒動のほとんどは日本の東京だけであったが、千葉、神奈川、埼玉なども一部含まれた。警察が出動したのはすべてをあわせると1881件もあった。
 その報告書が、すべて警視庁の科学捜査室にあつまり、虎猫チームを結成して、どうしてそういうことが起きたのか解析を始めた。個人の問題ではなく、何か個人に影響を与える大きな事態が裏にあると、科学操作室の、一人の若い捜査官が訴えたのである。その捜査官は、スマホやテレビから、人々の頭の中に何か影響を与えるシグナルがでたのではないか、それは洗脳につながるから、徹底的に調べる必要があると言ったのである。
むかし、宣伝の映像の間に一瞬、暗示を与えるような画像を挟み込み、潜在意識の中になにか植え付けることは危ないと騒いだことがあった。要するに集団マインドコントロールである。
 虎猫チームには科学捜査室のスタッフと、外部から精神科医、心理学者、脳神経科学者、それに虎と猫なので、動物学者の中堅どころにも加わってもらっている。
 まず、それが起きた時間の確認したところ性格に0時から12時の2時間であったこと、猫好き猫嫌い関係なく、見間違いをした。老若男女関係なく生じた。
 報告書の中に、警察沙汰にはならなかったが、二歳の子供がなかなか寝むらず、十時過ぎても起きていて、いきなり泣き出したので、親が驚いて、どうしたのか聞くと、大きな虎がきたと、飼い猫を指さしたそうである。親は猫を他の部屋に持って行ったら子供は落ち着いたそうであった。
 酔っぱらって10時過ぎに帰った旦那が、飼い猫を見て、何で虎がいるんだと騒いだことをテレビ局が報告していた。
 受験勉強をしていた女子高校生が、部屋の戸を開けてはいってきた虎を見て、きゃあと言ったとたん、うちの猫の顔になったので、疲れてるなと思ったようなインタビューも放送していた。12時ほんのちょっと前の出来事であった。
 こういった報告も、この一週間で調べられるだけ調べた。いくつかの小学校、高校、中学に協力をしてもらい、その日の夜の10時から12時の間のアンケートをとったところ,フリーに書いてもらった中で、そのころ起きていた小学生で、1.12%、中学生で、3.3%、高校生になると、5。4%が猫と虎のみ間違いをしていた。子供たちは自分たちがおかしいと思って、親には黙って、早く寝てしまったり、目をつぶって、その場を離れたり、工夫をしたようだ。
 猫虎会議の座長は科学捜査室の課長である。
 「情報を整理しますと、6月8日、10時から12時に起きていた人が猫を虎と見間違う状態になり、一部パニックになり、警察に連絡をしたということです、ここで明らかにしたいのは、なぜどうなったかということです。先生方には適切な助言をいただき、解決まで行かなくとも、原因の可能性が明らかになればいいと考えています」
 問題を提起した若い捜査官が補足をした。
 「一人や二人ではなく、推定ではその時間に起きていた5%、もし皆が起きている昼間なら1割が、そのような錯視を起こしたと考えられます。もし、猫が虎ではなく、それだけの割合の運転中の人が、赤と青を見間違えたりしたら、大事故が起きることにもなりますし、人間を猿に見間違いしたらどうなることか、石をぶつけたり、追いかけたりするかもしれません。ともかく、偶然に起きたという数字ではないので、原因の可能性をお考えいただきたいと思います」
 「日本中で、この東京近辺だけの現象のようで、ということは、何らかの人為的か、地域における特殊な環境条件ということがあるわけですな」
 物理の先生の発言である。
 「人間の心の透き間に入り込んで、認識機能に異常をきたすようなことをすると、脳の記憶のメカニズムと、はいってきた感覚をつなげる部分に影響を与える何かと言うことで、その神経回路は明確になっていませんが、そういった特定なところに、個人ではなく集団で影響を与えることは人為的には難しい、きっと何かからでた脳に作用する波、電磁波のようなものが認識の部分に影響を与えたのでしょうな」
 とは神経科学者の意見である。
 とそこに、PCの画面を見ていた、科学操作室のIT専門の捜査員が「おかしな情報が入りました」とはじめた。
 「カナダの周辺では、シロクマが現れたと大騒ぎになったそうです、しかも山の中に、ところがヒグマとの見間違いだったそうです、
 アメリカの小さな海岸町では、たくさんのラッコが、岸壁で昼寝をしているのを見たということで、動物保護館がいってみると、オットセイだったそうです、
 フランスでは、すごいんです、ブルドックかパグの系統の顔の犬を散歩に連れて行った人が、いつの間にかコアラをつれて歩いていておどろいたそうです、どれも複数の人たちからの情報のようです、夫婦で犬をつれていた人は、二人ともコアラになったといっている場合と、夫か妻の片一方がそう言っている場合があったようです。
 ケニアでは大変です、犀がカバに間違えられたり、シマウマとキリンを間違えたり、ライオンは豹になったり、いつも動物を見慣れていた地元の人たちがそうなったようです、動物保護官さえ間違えた人がいるようです」
 それを聞いて皆びっくりした。
 「どの動物もほ乳類ですね、どことなく似ていると個人の頭の中にあるものに置き換わっています」
 動物学者が言った。
 「現象の共通性はわかってきましたが、考えられるのはなにでしょう」
 物理学者は「空の方からのシグナル、または地中からのシグナルが原因ですかな」
 「ということはどういうことでしょう」
 「宇宙には得体の知れない粒子がとんできていますから、我々のまだ知らないものもあるでしょう、地下には発生源がいろいろあります、マグマの活動、地震にいたらない地層のずれ」
 「地下からのものは計れませんか」
 「もちろん計れますよ、ただ、我々人間の能力を超えたものであればわからないでしょう」
 「音は精神異常をきたします、スパイや犯罪人に音を聞か背、寝かせないという拷問を、ナチスばかりじゃなく、いろいろな国でしていたことは知られています、日本でもしたでしょう、耳に聞こえない音でも、脳が感じないような光も精神に影響をするかもしれせん」
 「そうです、それが先ほど私が言った、脳の認識回路に異常をきたした可能性です、見たものにたいし記憶から間違った情報を引き起こしてしまったのです」
 「話は脳の認識機能に影響を与えた、ある地方に生じた、地中の物理的なシグナル、または宇宙からの謎のシグナルによるものということでしょうか」
 誰もがなんとなくうなずいた。
 「まあ、人間の脳の機能が劣化した可能性も捨てきれないが、人間の脳はまだ進化途上のものですから、結論はそれでいいでしょう」
 「それを阻止する方法はあるでしょうか」
 「ありませんな」
 「ということは、新聞には、地中から、または宇宙からの人に及ぼすシグナルが一時、東京を襲ったからと言っていいでしょうか」
 「いや、襲うと言うより、脳に影響を与える気象の変化があったためではないぐらいにしておいたほうがいいでしょう」
 と心理学者が言って、その会合は終わった。
 記者会見で、そのような報告がなされたが、マスメディアはいろいろな可能性を論じ、人類滅亡説まででてきた。
 それが下火になった頃、日本では親子喧嘩が多くなった。新聞をにぎわしたのは世襲制の芸能関係者たちである。歌舞伎の大御所たちは、自分の子供と歌舞伎のあり方に大喧嘩を始め、息子たちは跡を継がないと宣言した。大きな会社でも、息子は父親の会社を飛び出し、新しい会社を作ろうとした。それは、一般家庭でも同じである。男の子は父親の職業を嫌い、違う方面にいくといいだし、母親が専業主婦の女の子は、結婚なんてしない、自分で生きると家を飛び出し、共働きの母親の娘は結婚して子供を産み、家をきれいにして昔のような生活がしたいと言った。
 それは日本だったが、武器が簡単にてのはいる国は大変だった。親を殺す、子供を殺すことが頻繁に行われ、アメリカには戦争の好きな独裁的な大統領が生まれた。自分の儲からないことには全く興味を示さず、世界が混乱しようがどうしようがお構いなし、人種差別もあからさまに口にした。それはアメリカだけではなかった。押さえられていた戦争が至るところで勃発した。
 それと同時に、世界規模でおかしな現象がおきた。日本など戦争がない国では、みな結婚をしたがった、だが子供を作ると、喧嘩して離婚をした。それに日本だけではなく、レイプ事件が増え、父親のわからない子供がふえた。戦争と子供の急激な増加がおきたのである。
 それは4年ほど続き、なぜかその後鎮静化にいたった。
 人類学者、歴史学者は、4年間を緊張の時代とよび、人類の進化の生じる一時の嵐という表現をした。また、人類という種の絶滅の危機をその時期に乗り越えたとも言われた時期である。
 その後は、元のような今まで通りの人間の生活が始まっただけであった。しかし、特に科学の進歩、人類の考えが新たなものになったわけではない。
 神経科学者や心理学者は人間の脳が緊張していた時代と言った。
 
 さて最初にでてきた、英語の教師の私は虎猫事件のあと、大学の教え子と結婚したのだが、緊張に時代に入り、結婚した教え子は、理由もわからなかったのだが、私と意見が違うと家を出ていった。
 生まれて三つになる娘を一人で育てている。
 私は、何かに人の脳が操られているような気がしてしょうがないのである。

 太陽の裏、全く地球とは太陽を挟んで裏側になる、
 地球と全く同じ軌道で、全く同じ早さで動いている、宇宙船がコロナを浴びるほど太陽の近くにいた。
 これからなん万光年もはなれた星に行くのに、宇宙船の宇宙人は卵から生まれた一蛉の子供たちが三蛉になるまで、ここにとどまるつもりである。三蛉を過ぎれば、精神的に安定して、子供たちもいろいろ理解をして、我慢をすることをおぼえるだろう。それまでは遊ばせなければならない、遊ぶことで個性と判断力と応用力がそなわる。
 子供たちはおもちゃをほしがる。宇宙船と反対側にこの恒星の惑星がある。地上には発達途上の生き物がいる。もっとも発達した生き物とて、身体の命令器官、脳が、我々のペット程度だ。これならばゲームの対象にしても宇宙の倫理規定に反することはないだろう。どうもこの星の先端の生き物はこれ以上進化しそうにもない。
 そこで、宇宙船の住人の親は、その惑星の生き物をコントロールするおもちゃを作った。一蛉の子供用である。その惑星の生き物の脳にゲーム機から信号を送ると、その生き物たちは、見たものを似たものと間違えて、右往左往するのである。惑星人がどんな反応をするか、みんなで当てっこをして、一番近い子供が優勝である。ただ、信号はすべてのその惑星の生き物に作用するわけではなく、波長があった個体だけである。
 ゲーム室ではスクリーンに映し出された惑星の生き物が、四つ足の生き物を間違えて大騒ぎしている。
 その惑星にとって、一年が過ぎると、宇宙人の子供は二蛉になった。惑星の生き物の行動を制御するゲーム機が与えられた。生き物同士戦わせる子もいれば、子供を作らせる子供もいる。惑星の上の生き物たちは、宇宙人の子供のゲーム機によって動く。
 宇宙人の子供たちはそれを見て社会を学んだ。
 その惑星にとって、4年が過ぎ、宇宙人の子供は三蛉になり、すぐに繭を作りはじめた。こうなれば宇宙船を動かしても成長に影響がない。繭からはほどなく宇宙人の青年がでてくるだろう。大きな羽を広げて宇宙船の中を飛び交うのだ。もうおもちゃには興味が無くなる。大人たちに科学を学びながら、宇宙船は目的の星に向かって旅を続けるのである。
 子どものおもちゃになった惑星、地球は表面上なにもなかったように、太陽の周りを回り続けるのである。

こどものオモチャ

こどものオモチャ

虎が出たと警察に沢山の電話がなった。だがどれもトラ猫を見間違いしたものだった。それからおかしなことが起きる。

  • 小説
  • 短編
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-11-05

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