雷とピスタチオ

 ほんとうの、星の消滅って、たぶん、もっと、あっけないものなのかもしれない。じわじわと朽ちていくのではなく、とつぜん、ぱぁん、と、はじける感じ。風船が割れるような、あっというまのできごと。ま、想像だけれど。立ち会ったことはないし。
 きまぐれに、ケーキを買って帰ってくることがある。いちごのショートケーキとか、モンブランとか、わかりやすいものはともかくとして、ときどき、なまえのわからないケーキがあって、でも、これはきっとラズベリーソースとか、この色は抹茶クリームとか、食べ進めていけばなんとなく予想はついて、おちつく。一度だけ、抹茶っぽくないけれど、薄緑色のスポンジのケーキを食べたとき、あとから、ああ、あれはピスタチオだったのかなと、思うことがあった。テレビで知ったのだ、ピスタチオをつかったお菓子が流行っていることを。ピスタチオだったのかとひとり納得しながら、ニアに、あのケーキはどうやらピスタチオをつかっているみたいよ、と伝えると、ケーキやさんのケーキの説明に、そう書いてあったかもしれないと、ニアはぽつりとつぶやいて、あつあつのお茶をずずずっとすすった。ニアは、沸騰させたお湯でお茶をのむのが、好きなのだ。
 かみなりが鳴っている。
 こわい気がする。けど、おとなになったから、こわくないと思うようにしている。
 かみなりの音で、家が揺れてる。あつあつのお茶なので、湯呑があついようで、湯呑のくちあたりを五本の指の先で持ちながら、ニアが言う。停電になったらこまるから、はやくお風呂に入りなよ。おかあさんみたいと思いながら、ぼくは、どうでもいいテレビ番組を観ている。

雷とピスタチオ

雷とピスタチオ

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-11-04

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