自選短歌 2021年10月
無造作になまあし並べ十月になったのにまだ秋が来ないね
憎しみは徐々に来るのにもう僕は優しい人と決められている
きれいには忘れられずに似たような場面の夢を何度でも見る
横綱が強い力で前褌(まえみつ)を引けば国じゅう食い込む心地
アピールの強い湯切りを見たあとでとても普通のラーメンだった
リモートの主任が透けていることを誰も言えずに会議は終わる
消えろって三回ちゃんと言えたけどまっすぐここへ向かってくるね
一人ずつ役目を終えて去ってゆき最後の人は墓守になる
自選短歌 2021年10月