ココアの海のしろくま
ひまわりがねむっている。
土。
夏とちがって、さわるとつめたい。
しろくまが、ココアにマシュマロを浮かべている。器用に積んで、しろくまみたいにもみえる。共喰い、という言葉を思い出して、でも、ぼくはだまって、レモンティーに角砂糖をしずめる。ティースプーンでかきまぜる。しろくまみたいなマシュマロを浮かべたココアを、しろくまは、なんの躊躇もなく飲みはじめる。百円均一の、銀色のティースプーンは、百円均一だけれど、細工がうつくしいと思う。テレビのない、しろくまの部屋で、ふたり、それぞれが好きなものを飲みながら、ラジオを聴いているこの瞬間が、しろくまの世界のなかでいちばん幸福な一時であってほしいと、ぼくは願っている。外国のラブソングが流れている。ココアの味がする、しろくまと、レモンティーの味がする、ぼくの、まじわったときのあの、絶妙な不快さ、も、なれればどうってことないのだ。
花を埋葬するひととは、ときどき、公園で出逢う。
いつも一緒にいる、薄茶色の瞳の、清らかな少年と、花を埋葬するひとの関係が、気になっている。
この土に、ひまわりはねむっていると、彼は言い、土の表面を撫でるのだ。まるで、我が子を愛でるように。
ココアの海のしろくま