あな。アナ。穴。
失った「あな」
変わる「アナ」
満たす「穴」
香
日々が加速し出したのはいつからだろうか。
すこし、振り返ってみようか。
一人暮らしが始まってしばらく経った。もうなんだかんだ8年か。早いもんだ。
思い返せば1人じゃなかったな。
18からの1年半は仲間とバカして過ごしたっけ。1番楽しかったな。酒も女も自由自在だった。
20から2年間は年下の恋人と半同棲してたな。歌がうまくて絵が上手な子だったな。思い返せば君が1番大人だったよ。
22から1年ちょっと同い年の美女と同棲してたな。結婚前まで行ったんだけどな。人生ってうまくいかないな。
24の5月から25の12月まで遠距離。25の1月から26の7月まで半同棲。
そして今、俺は初めての一人暮らしだ。本格的な一人暮らし。
10月。3ヶ月が経過した。
何か変化があったか?あったさ。
2回目の遠距離。耐えられなくなった俺は捨てられた。
仕方ない。俺が過去に残した大きな傷が原因だ。ふふ。いつもそうだ。俺は人を傷つけるのが上手いらしい。
人は傲慢だ。1人では生きていけない。仲間がいれば、友達がいれば、パートナーがいれば
この穴は埋められるのだろうか。
そう考えたからこそ、俺は18の頃の精神に戻ることにした。
戻れるんだろうか。きっと戻れないだろう。あの頃の精神状態は以上だ。全盛期と言っても過言ではない。
そんな時代には戻れないだろう。
戻れるのは心だけだ。知らないふりをする。俺は知らないふりをすればいいんだ。
そうするだけ。
意識を持つのは仕事の時だけ。
あとの俺は、18の時の俺。なんら問題ではない。
だからかもしれない。
部屋には0.03mmの壁があり、枕元からはアイコスの匂いがして、洗濯機の上には濡れたバスタオルがある。
知らない匂いがところどころからする。
それでもやっぱり心の穴は埋まらない。埋まることはない。
そりゃそうだ。これは18歳の俺がやっている【おいた】なのだから。
あな。アナ。穴。
戻れ戻れ戻れ。