ガールズトーク

あおい はる

 てのひらから、わざとこぼしたものって、けっこうある。生きていると、どうしても、身軽になりたい瞬間があって、そういうときに、ちゃんと選り分けて、不要なものだけを手放せればいいのだけれど。ときどき、たいせつなものまでも、捨ててしまうことがあって、あとから気づいて、あああああ、となる。奇声のような、ためいきのような、叫び。
 好きなひとの未来を守りたいといって、冷凍睡眠しているひとがいる。目覚めたとき、今を生きている好きなひとは当然、いないわけだが。未来にタイムワープできるのであれば、話は別である。ただいたずらに、現実逃避しているだけみたいだとザクロは言いながら、爪を磨いている。左の小指から、薬指、中指、そして人差し指と、じゅんばんに。わたしはテレビで、ふだんは観ないスポーツ中継を観ている。応援とかは、とくにしていない。すごいなぁと感心するばかりで、さっきからおなじことしか言ってないよと、ザクロに指摘された。生理の前って、なんか、無性にさびしくならない?とたずねたら、ザクロは、わたしは生きている意味をかんがえる、と答えるから、わたしは、ああ、などという情けない声を漏らした。そういえばこうやって、ザクロとおなじ部屋で過ごすのもずいぶんひさしぶりで、でも、ザクロはあいかわらず、果汁百パーセントのオレンジジュースが好きで、オレンジジュースを飲みながらチョコレートを食べるのをやめていなかった。オレンジジュースが酸っぱくなるじゃん、とわたしが言うと、それがいいんだよとザクロは微笑んで、ちょっとマゾっぽいと思ったけれど、それは内緒だ。

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-10-24

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