エリカ

あおい はる

 月から降ってくる、新人類のことだけれど。あのひとたちは、ときどき、思い出したように、花をむさぼる。いわゆる、エディブル・フラワーではなく、そのあたりに咲いている、ふつうの花を。
 あの有名な開かずの踏切で、あんたの友だちに会ったよ。だれの邪魔にもならないように、柵の近くにしゃがんでた。ちょうど、電車の車輪とおなじ目線の位置で。電車が好きなのかってきいたら、踏切が好きなんだっていうから、ふうん、とだけ返しておいた。となりにしゃがんで、電車をみてみたけど、なかなかこわいね。実際にはみたことないけれど、人身事故とか、想像しちゃって、こわいくないのかとたずねたら、わかりません、だって。おもしろい。わたし、きらいじゃないな。あんたの友だちだから、ただのろくでなしかと思ってた。
 そうそう。
 彼と話しているときも、線路をはさんだ、向かい側のアパートの二階の窓辺に、花を食べているひとがいたので、ああ、月の侵略は、着実に進んでいるのだなぁと、ひとり噛み締めた。新人類に対して、好意的なひとも、さいきんは増えたみたいだけどさ。わたしは、やっぱり、あの子のことがあるから。

 あの子とおなじなまえの花を、新人類どもは、容赦なく喰らいつくしていた。
 夜、空をみあげて、わたしはきょうも、いまいましい球体をにらむ。

エリカ

エリカ

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-10-23

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