斧と月夜

haruha

絵本感覚で呼んでください。

俺は木こりだ。
よく馬鹿にされるが、なかなかに楽しい仕事だ。
だが、俺も他人が木こりだったら馬鹿にしてやる。
 俺の人生は、かなり糞だ。初恋の人には嫌われていたし、昔、仕事にしていた絵は、両親にも、評論家にも、褒められることは無かった。両親は早く死に、唯一、俺を愛してくれていた妻も、三年前に死んだ。
 だが、俺は案外、独りの方が良いのかもしれない。

 俺の一日はこうだ。
朝起きて、一杯、水を飲む。
そして、仕事を始める。
木を台にしている木に置く(木に木を置くなんてなんだかおかしい気がする)次に、十年使っている斧を持ち、振りかざす。
 この瞬間が、最高だ。
この仕事は、夜は出来ない。
大体、俺は七時を過ぎるとウイスキーを飲む。
 それに、暗闇だと何も見えず、危険だ。
それでも、たまに暗い中でやることもある。
一日で頼まれた仕事が終わらない時だ。
その時は、かなり緊張するよ。 
 だが、そのリスキーさも面白い。
 今夜もそうだ。
 今日は、久しぶりに依頼が来た。
 庭の木が邪魔だと云う。
 だが、この木はかなり良い。

 依頼主は、本当に勿体無い事をする。
本当にこの木を斧で叩く瞬間は、緊張というより、悲しさが勝った。 

斧と月夜

終わり

斧と月夜

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-10-23

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