アンダーワールド

あおい はる

 地底は、もしかしたら、さむいのかもしれない。マグマがあるとしても。土はときどき、つめたいのだ。土があたたかいときは、遮るものなく、太陽がぎらぎらしている、たとえば、真夏の正午。たいせつなものをブリキ缶につめこんだ、タイムカプセルを埋める感じで、コールドスリープされたひとびとも、地下のシェルターに保管されている。

 ふえる。

 無機質な銀色の、流線型が印象的なカプセルは、日に日にふえてゆく。すこしだけ、マドレーヌの形に似ている気がしている。一階が喫茶店で、二階がダンススクールで、三階が占いの館で、四階がだれかの家らしい、古めかしい雑居ビルの、一階から二階へとつづく階段の途中で、女子高生と女子高生がキスをしていた。幸あれ、と思いながら、わたしは、占いの館にいるルカのところに行くつもりだったけれど、あきらめて、一階の喫茶店でオレンジジュースと、ナポリタンを注文した。ルカの友だちなんですというと、喫茶店のマスターはミニサラダをつけてくれて、ナポリタンのウインナーを多めにいれてくれた。学校の音楽の授業で聴いたことのあるクラシック音楽が流れている。ふいに、頭の上からきこえる床が軋む音で、いま、ダンススクールではなんのダンスをやっているのだろうと考える。興味はないけれど。社交ダンスだったらやってみたいと、ルカがつぶやいていたのを思い出して、でも、社交ダンスだったらの理由を、わたしは知らないのだった。

アンダーワールド

アンダーワールド

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-10-21

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