Anti-2125ic Gallery

1 こんにちは。壊れた線画がまた綴じられる。反証された世界線の鋸で、どうかこの部屋を壊してほしいんだ。
2 知らないことはなんだって話しかけてくる。五年前の花瓶に向かうまで、感じ取れない煙がぐつぐつと煮えている。
3 カメレオンの部屋。熟れた林檎を投げつけて、それで満足してしまったようだ。
4 だんだんと満たされていくので、その筒が空っぽかどうかはすぐに分かってしまうでしょう。
5 からだを屈めて、触れられないように。曇り空の下に何人もいます。
6 窓硝子の結露。結局は景色と切り離せないものなので、ぜんぶ切り取って、そのまま飾ってあるんです。
7 確証もないまま手で掻き混ぜる。風船の国へ行けるだろうか?
8 失くしてしまったもののことですから、その暗さを測ることはできません。
9 でもあなたは可愛がってくれたのでしょう? 卵は丸いので、まっすぐに立てておくことはできないのです。
10 逃げた先には水底のささくれ、生きたままのうずら色、噛んでくる包み紙の見分け方。忘れていれば、それでよかったのに!
11 培養された十三の階乗、続きを知らない魚の日、解体される為のおまじない。
12 煙突から見られていたみたいで、私は薄荷の飴玉を眺めるのをやめてしまった。
13 日が暮れてしまったら、もう取り返しがつかない。そのことは知っていたから、いつまでも部屋の中で回り続けた。透明になれたかな?
14 夢中で包帯を巻いているパイロットに、詰め込まれていく缶ジュース。丁寧に扱わないといけない。
15 雲梯が吠えている。ずいぶんと長いあいだ陽の光を浴びていたから、まだ記憶が確かではないのかもしれない。
16 絞めた本がまだ浮かんでいる。花弁が足りなかったようだ。わたしは小さく謝って、そっと穴を開けた。
17 渡り廊下には雨が溜まっていたはずなのに、いつの間にか、可愛らしい鏡がついてきてしまっていた。
18 でも、巡り続けている限りそれが感情になることはないのでしょう。遠い昔に意味を失ってしまっていても、ここは安心できる場所。
19 さようなら。あなたはまだ部屋の中にいるつもりでも、考えられていない時間が余っているんです。夜半の空白に依存して、公転する線を描いた言葉の抽象画と、絶えず薄まり続ける水の色。冷たい窓。編み込んだ静かな触覚でしか存在できないような遠くにまで、切り離されて流転する画廊。
20 どうか、憶えてしまうことのないように。

Anti-2125ic Gallery

Anti-2125ic Gallery

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-10-21

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted