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あおい はる

 たとえば、きみが、何億光年と離れた星で、うまれたとしても。

 月からおちてくる。新人類。さむくなったから、マフラーを買った。てぶくろはまだ早いと思うと、レムは言う。もこもこのくつしたをはいて、サクマはごきげんだ。ぼくらの暮らしに、冬、という季節が、おとしこめられていく。図書館で借りた、スープのレシピ本をながめていて、きみが、かぼちゃのポタージュが好きだったことを思い出した。あらゆる規制が緩和され、いままでのように街は、にぎわいをみせている。月からの新人類は、瞳が黄色である。さいしょは旅行気分でやってきましたと、はじめてこの星におりたった新人類がテレビのなかで、へらへらとわらっていた。レムは、気に喰わないと眉をひそめて、レモン味のキャンディーみたいと、サクマはうっとりしていた。
 野球の試合をスマホで観ていたのが、おじさんたちがこどもみたいにさわいでいる駅前の広場で、ひとりでいるひと、ふたりでいるひと、三人、四人、もっと大勢であつまっているひとびと、みんな、からだのなかのつくりはおなじなのだと改まって想うと、ふしぎなきもちになった。

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-10-20

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