ボヘミアのスキャンダル(翻訳文)
アーサー・コナン・ドイルの有名なホームズシリーズの、「シャーロックホームズの冒険」の中の第一作目の短編小説の翻訳文です。私の訳文は非常に稚拙な文章だと思いますが、どうしてもあげてみたいので、今回書き出しています。(2021年作品)
Chapter1
ホームズにとって女性とは常に彼女のことだ。
私はめったに彼の口から他の女性の名前を聞かなかった。彼の目には他の全女性は月食のように影を潜めていた。これは彼がアイリーン・アドラーに恋愛と同列の感情を持っていたというのではなかった。彼のすべての感情は特にあるものは冷たく嫌悪感があるものだったが、しかし尊敬できるバランスを保っていた。彼は、私に言わせれば、この世で見つけられる最も完璧で観察力の鋭い、(犯罪の)動機を見つけられる機械だった、しかし恋人にとっては彼は良い立場にいる人間ではなかった。彼は決してより優しく情熱を語らなかったし、あざけりや冷笑を隠そうとはしなかったからだ。それらは観察者にとっては優位になるもので----特に人間の(犯罪の)動機や行動のベールをはがすのに都合がよかったのである。
しかし彼自身の中にはデリケートでよく訓練された気質があったから、そのような干渉が巧みな(犯罪の)動機を持つ者からあったとしても、彼のあらゆる鋼鉄機械の業績の前には、どのような疑問を投げかけようとも、彼の気を紛らわせる要因を紹介することにしかならなかっただろう。繊細な旋律の中の砂粒、あるいは彼の強力なレンズのひび割れであれ、そのような彼の自然な強い感情を妨げることにはならなかった。それだからまだ一人の女性としては、あのアイリーン・アドラーこそ彼にとって最後の女性であり、半信半疑ながら疑わしい思い出であったのである。
最近では私はホームズにはめったに逢っていなかった。私の結婚が私たちを互いに疎遠にしてしまった。私は細心の注意を注いで、男性が自身の良きものの最初の発見を向上させるべく、完璧な幸福を家庭の中心に据えるのに興味を費やしていた。その頃ホームズはいわゆるボヘミアン気質とその社会を嫌って、私たちのベーカー街の部屋に籠り、書物の間に埋没し、週ごとに交代でコカインとその見せる大望、つまり薬物にうとうとと眠り、彼の持前の鋭い野生を研ぎ澄ませていたのである。彼はまだ、つまりまだまだ、深く犯罪に学ぶ経験に会っておらず、その十分な事実を積み重ねることも、またそれらに筋道を立てて観察力に素晴らしい力を注ぐことも、そして警察から見捨てられた犯罪を解決に導くこともしていなかった。その頃のはしばしに、私はかすかに彼のした事を聞いている。オデッサに呼び出されたトレポフの殺人事件、彼の解決したトリンコマレーのアトキンソン兄弟の悲劇、そしてポーランドに在位している家族の最後になんとか解決できたデリケートな難事件。これらの頃の彼の行動の記録には、しかしながら私はあまり関与しておらず、デイリープレスの読者の諸兄たち、そして私の親しい友人や仲間たちにも知るところは少ない。
ある晩のこと――それは1888年の3月20日、私は業務の旅(私はその頃ある文化事業に戻っていた)を終えて、ベーカー街に戻ってきた。あのよく見覚えのあるドアを開けると、緋色の研究事件での暗い記憶が手招いて私の心によみがえった。私はまたホームズに逢えたという鋭い希望をつかみ、彼の並外れた能力を乞う事を知ることになった。(中に入ると)彼の部屋部屋は明るい光に満ち、発見したのだが、私の見ている前でも、彼は盲目的だったあの長い闇煙草を二度と手に取らずにいたのである。彼はすたすたと部屋を横切り、肘掛け椅子に腰を沈め、その両手は固く握られて情熱的だった。私はと言えば、彼の醸すムードや部屋の趣味、そしてその態度が彼のそれまでの物語を物語っていると思った。彼は再び動きだしたのだ。彼は薬の見せる夢から覚めて、新しいいくつかの事件に熱中している匂いがした。私は呼び鈴を鳴らして入った時から、この部屋が私のいる本当の場所だと見てとったのである。
彼は心を露わにはしなかった。それはめったにない事だった。しかし彼は上機嫌だった。それは見ていて私にもわかった。そして彼は私を見た。彼は言葉は少なくても、優しい目をして、私を肘掛け椅子にいざない、あの闇煙草ケースを手放す代わりにスピリット(おそらく普通の煙草の銘柄)のケースとガソジン(炭酸水を作るソーダサイフォン)を薦めたのである。彼は暖炉の前に立ち、あの内省的で独特なファッションに身を包み私を見た。
「婚姻のスーツだな。」
と、彼は私に指摘した。
「僕は知っているよワトソン、おそらく7ポンド半の値段だね。」
(1ポンドは数年前までは約250円)
「7ポンドだって?!」と私は飛び上がった。
「実に、僕の見たところそれでも高いぐらいだ。実によく似会ってるよ、チャーミングだよ、ワトソン。もう少し指摘するとね。君はハーネス(馬車)で行こうとしていた事を僕に言わなかったね。」
「それはそうだけど、どうしてわかった?」
「それは推理したんだよ。僕の知る限りじゃ、こんなに夜遅く君がずぶ濡れなんじゃ、よほど手際の悪く注意の足らない召使いの女の子を雇っているとしか思えないよ。」
「おいおいホームズ」
と私は言った。
「それは『多すぎる』よ!君は僕を怒らせたいのか、君は数世紀の時代に生きているのか?確かに木曜日には(外を)歩くのは恐れられていて家にいるのが普通だが、僕は君の推理したようにそんな服には着替えていない。メアリ・ジェーン(少女の履く靴もしくはマリファナの意味)ならいざ知らず、僕のワイフはよく気がつくんだ。それから言っておくがな、僕は外に働きには出ていないぞ。」
ホームズはくすくす笑い、その長い指を神経質そうにもみ合わせた。
「単純そのものさ。」
と彼は言った。
「僕の目には、君の左足の靴の内側の革の上に、ちょうど灯で焼け焦げたみたいに平行線が六本入っているのが見えたからさ。明らかに誰かが泥を落とそうとして、あまり注意せずに靴底をこすり合わせたのさ。それゆえに、いいかい、僕の二つの推論では、こんなひどく天気の悪い日に君が外にいた事と、このロンドンで最低の下働き女中がブーツ切り裂きのお手本を見せた事がわかったのだ。そして君に関して言えば、僕の部屋でヨードホルムの匂いをさせて、その右手の人差し指の指先に銀化硝酸塩の黒い染みをつけて、その山高帽の右側の下には聴診器のふくらみを隠している。僕は本当にだるいよ、実にね、もし君が自分が医療関係従事者でなかったと自己紹介で言うならばね。」
(脚注・6本の赤い平行線と言えば、独立期の非標準旗のアメリカ星条旗、wikipediaによれば1776年を示す「76」の数字が入っているものが思い浮かぶ。それ以外にここの意味が取れにくい部分のセリフの意味が思い浮かばない。)
私は彼の推論のプロセスを聞いて、たやすく笑うしかなかった。
「君の言ったとおりの理由なら」
と私は指摘した。
「事はものすごく単純で、僕にも単純だと思えるよ。君の推論で当たっているのは、君の説明で僕をまごつかせたという事だけだ。そしてまだ僕の目の方が、君の目と同じぐらい信じられるという事もね。」
「すっかりそうかい?」
と彼は答え、煙草に火をつけてその煙を僕の椅子の方に漂わせた。
「わかるかね、君は『見て』いないのだ。識別するのはクリアだよ。たとえば君はこの部屋のホールにあがる階段を何度も登っている時に見ているね。」
「何度も見ている。」
「どれぐらい?」
「そりゃあ何百回と見ている。」
「それは何回だろうね?」
「何回?そんなのわからない。」
「そういう事だよ。僕が見ていないと言うのは。そしてなお、君は『見て』いたのだ。僕が言いたい点はそれさ。さて、あの階段は十七段ある階段だ。そして君はそれを見ていたし、気づいていたのだ。ところでこれは君にとってはささいな問題で、きっと興味もないだろうし、君の二三のくだらない経験の歴史にしかならないだろうが、ここに君の興味を引きそうなものがある。」
と彼は言って、桃色の紙に彩られた薄い手紙を、机の上に開いてよこした。
「最終便で来たんだ。」
と彼は言い、
「大声で読んでみたまえ。」
と言った。
その手紙にはなんの日付もなく、住所も署名もついていなかった。
『今--晩お訪ねしたい、8時15分頃に。』
と書いてあった。
『ある紳士がのっぴきならぬ事情でご相談したい事があります。あなたが最近ヨーロッパのさる王室の事件を扱われた事をお聞きし、まことに誇張するようですがさる重要なある事柄について安全に事を運んでいただきたい。今回のそちらへのご訪問は一時間後に。そちらの部屋に入室する際には、当方の顔のマスクをつけたままなのを、お気遣いなさらぬように。』
「こいつは実にミステリーだ。」
と私は言った。
「この手紙の意味を君はどう考える?」
「我々にはまだデータがない。データを手に入れる前に推論を組み立てる事は、よくある過ちだ。鈍感な者ならば事実を捻じ曲げて推論に寄せたりし始める、事実に基づいて推論する代わりにね。しかしここに手紙がある。君はどうこれを推論する?」
私は注意深くその手紙に書かれた筆跡や紙を調べた。
「この手紙を書いた者はそれらしくうまく書いているが」
と私は指摘しながら、我が同胞のプロセスをまねるよう努力した。
「こんな材質の紙は一綴り半クラウン以下では買えないな。特殊で強く堅い紙だ。」
(1クラウンは1/4ポンド。1970年頃では200円ぐらい。)
「特殊で-----いい言葉だ。」
とホームズは言った。
「イギリス製ではまったくないよ。光にかざしてみたまえ。」
私はそうしてみた。透かし文字で「E」「g」「P」「G」「t」の文字が紙に入っていた。
私はホームズに
「これは何を示した文字だ?」
と尋ねた。
「製造メーカーの名前に間違いないが、かなりモノグラム(組み合わせ文字)だ。」
「違う、そうじゃない。『G』と『t』の文字は『Gesellschaft』で、ドイツ語では「会社」のことだ。慣例的な短縮形さ。そして『P』はもちろん『Papier』(ドイツ語で「紙」)の略だ。そして『Eg』だが、ヨーロッパ地名辞典を見てみよう。」
彼は分厚い茶色の本を棚から取った。
「Eglow、Eglonitz、ここだ、Eglia。ボヘミアでもドイツ語が話されている地域だ。Carlsbadも遠くない。ワレンシュタイン公の死の場面でも有名だが、非常に多くガラス工業と製紙業が盛んだ。はは、君、これをどう思う?」
(脚注・Carlsbadカールスバードは世界三大ブルーオニオンのひとつ、ドイツのマイセンに並ぶ洋食器の生産地。ボヘミアンガラスのガラス工業で有名なボヘミア地方、すなわちチェコ西部はウランガラスの発祥の地でもある。)
(脚注・ワレンシュタイン公[1583~1634]オーストリアの傭兵隊長。 三十年戦争に際し、神聖ローマ皇帝軍総司令官に起用され、デンマーク軍を撃破したが、のち、スウェーデン軍に敗北。 皇帝の意に反して和議を進めたため罷免され、暗殺された。)
と、彼は軽くウィンクすると、その煙草から勝利の紫煙を送ってよこした。
「この紙は(だから)ボヘミアで作られたものだ。」
と私は答えた。
「素晴らしい。そしてこの手紙はドイツ人が書いたものだ。この文章の風変りな構文を見たまえ。『今回のそちらへのご訪問は一時間後に。』フランス人やロシア人ならこんな書き方はしないね。この手紙を書いたドイツ人は、動詞に無頓着だ。つまりこの手紙の痕跡からわかるすべての事は、この手紙はボヘミア産の紙にドイツ人が書きつけたもので、彼はマスクをつけて訪問したがっているという事だ。もし僕が間違っていなければ、我々の解くすべての謎はそこにある。」
(脚注・動詞が文の最後に来ており、かつreceivedという単語を使っている。英語では「受け取る」の意味だが、ドイツ語では「到着する」の意味。)
ホームズがそう言った時、馬のひずめの鋭いカッカッという音と縁石に(馬車の)車輪が軋る音が(外から)聞えて、そして呼び鈴を激しく鳴らす音がした。ホームズはひゅっ、と口笛を吹いた。
「ふたつの音だ。」
彼は言った、
「そら。」
と彼は続けて、窓の外を見下ろした。
「立派で小さなブルーム型馬車に、二人の美女が乗っている。150ギニー賭けてもいいよ、ワトソン、もし君がその気ならばね。」
(脚注・1ギニーは21シリングで20シリングが1ポンド。1816年にポンドのソブリン金貨にとって代わられた。文意では150ギニーは35.714円ぐらいか。約3万5千円ほど。競馬関係で使われていたらしい。)
「僕はいなくなった方がよさそうだ、ホームズ。」
「それには及ばないよ、ドクター。君はここにいたまえ。僕はボズウェル(イギリスの伝記記述作家)がいなくなれば寂しい。この約束は興味深いだろう?君がこれを見ないのはないよ。」
「しかし君のクライアントが・・・。」
「彼の事は気にかけなくていい。僕は君の助けがほしいし、それは彼もそうさ。彼は(すぐ)ここに来る。アームチェアに座っていたまえ、ドクター、そして君の最善の注意をわれわれに払いたまえ。」
ゆっくりとした重い足取りで、誰かが廊下から階段を上ってくるのが聞えた。そしてそれはドアの外ですぐさま立ち止まった。それは有無を言わさぬような大きな靴音だった。
「お入りください!」
とホームズは言った。
入ってきた男は背は6フィート6インチ(約198センチ)より少し小さく、胸と腕はヘラクレスのようだった。彼の身なりは金満家風の感じに見えて、しかしその趣味は見たところ感じが悪かった。アストラカン(ロシア連邦南西部の町)織の袖に切れ込みの入った、胸もとがダブルになった重そうなコートを身につけていた。それは両肩に炎の色をしたシルクのラインの入った深いブルーのコートで、首元は緑柱石一個がついたブローチで守られていた。そのブーツの革は子牛の茶色のにこ毛をよく刈りこんでなめしたもので、それを半分にしてつり下げていた。その全体的な印象は、彼が粗野な富裕層の者である事をおおいに語っていた。
彼はつば広の帽子をかぶっていて、それを手で取って脱いだ。その下の顔は、頬骨の半分ぐらいまで黒の覆面マスクで覆われていて、彼が入室した時から、どうやらどの瞬間もずっと手で隠しているようだった。わずかに見えた隙間から覗く彼の顔からは、彼の押しの強い性格、すなわちその分厚い唇、そして長く堅そうな顎から、頑固で執拗な性格がうかがいしれた。
「手紙は届いているかね?」
と彼は低いだみ声で、ドイツ語のアクセントで尋ねた。
「私は君だけに用があると言ったのだがね。」
と、彼はその手紙に対する不誠実さから、我々の顔を見比べた。
「まずはお座りください。」
とホームズは言った。
「これは私の相棒のドクター・ワトソンと言いまして、私の事件を時折十分に手伝ってくれてます。私は(あなたを)どちら様とお呼びしたらよいのでしょうか?」
「私のことはフォン・クラム伯と呼びたまえ。ボヘミア王国の貴族だ。私はこの紳士、つまり君の友人が名誉と裁量を持つことを理解した。私が約束した最も重要な案件で。しかしできれば私は、君一人と話す事を望みたい。」
私は席を立とうとした。しかしホームズに肘をつかまれ椅子に連れ戻された。
「二人一緒か、さもなくば『なし』です。」
と、彼は言った。
「あなたはこの男の前では、何を言っても差し支えありません。」
その紳士は幅広い肩をすくめた。
「それでは始めるとしよう。」
と彼は続けた。
「二年間、完全に秘密を守れるかね?その時が終わればこの事は重要な事ではなくなるだろう。現在はその重みで、ヨーロッパの歴史への影響があると言って過言ではないだろう。」
「お約束しましょう。」
とホームズは言った。
「私もです。」
と私(ワトソン)も言った。
「このマスクをご容赦願いたい。」
と我々の奇妙な客人は言った。
「君たちの知るところではないさる高貴なエージェントに、私が雇われていると思っているだろう、まさか私自身がそう呼ばれているとは君たちはまったく思いもしないな。」
と、彼は続けた。
「僕は気づいていましたよ。」
と、ホームズは冷淡に答えた。
「状況は非常にデリケートなのだ。そのさるヨーロッパに在位する王族がからくも巻きこまれた、恐るべきスキャンダルに発展するであろう事を、あらゆる手段で癒し守ってほしい。もっと端的に言えば、ボヘミア王室の、オルムシュタイン公の。」
「その事にはすでに気づいてました・・・・。」
とホームズはつぶやき、目を閉じて椅子にだらりと身を沈めた。
そのホームズの驚くべきだらりとした態度を見て、男は彼こそがその最もエネルギッシュなヨーロッパのエージェントであり、鋭い動機を持つ者である事を疑う事なくさし示して、もぞもぞと動き出した。ホームズはゆるゆると再び目を開き、目の前の巨人のクライアントをもどかしそうに眺めた。彼は言った。
「もしそのあなたの言う王族をあなたの事件に合わせようとするなら」
と彼は指摘した。
「僕はよりよいアドバイスを差し上げますよ。」
男は椅子からばっと立ち上がって、不快感をあらわにして部屋の中を歩き回った。そして捨て鉢な態度で、マスクを顔からむしり取り、床の上に投げ捨てた。
「君の言う通りだ。」
と彼は叫んだ。
「私がその王だ!なぜ私に秘密にしておかせない?」
「実に、なぜ、ですか?」
とホームズはつぶやいた。
「あなたが言われなくとも、私はあなた様が、ウィルヘルム・ゴットシュレヒ・ジグムンド・フォン・オルシュタイン、つまりカーセル・フォルシュタイン大公殿下である事に気づいておりました。」
「だが君はわかっているじゃないか。」
と我が奇妙な客人は言い、椅子にまた座りなおし、白い額に手をやった。
「私自身がこんなビジネスに慣れていない事を、君はよくわかっているじゃないか。今のところは彼の人の力では、私がその任を任されるしかないエージェントだという事を、デリケートな問題だが信じてほしい。私はプラハから君に相談する用事でわざわざ来たのだ。」
「それでは、相談を祈りますか。」
とホームズは言い、またそのまぶたを閉じた。男は言った。
「要するにだ。今をさる事五年前、私はワルシャワに滞在していて、そこでよく知られた(恋の)アバンチュールでアイリーン・アドラーという女と知り合った。その名前は君もよく知っているはずだ。」
「ドクター、すまないが、そこの目録ファイルを見せてくれたまえ。」
とホームズは目を閉じたままつぶやいた。
何年もの間、彼は人間とそれに関するあらゆる事物の訴訟物件を集めていて、彼に情報を与えた場合、その人物の名前や事柄を探すのは難しいことではなかった。この案件の資料は、ユダヤ教神父と、深海魚の研究を発表した海軍士官のファイルとの間にはさまっていた。
(脚注・深海魚の研究とは魚雷関係の暗喩か。)
「読み上げますよ!」とホームズは言った。
「は!1858年(アメリカ)ニュージャージー州生まれ。コントラアルト女声歌手、(ミラノ)スカラ座で!は!ワルシャワ帝国オペラでプリマドンナ!なるほど!オペラ歌手現役引退後はロンドンに在住!ほう!わかりました王様、若者間で恋のもつれがあって、手紙のやりとりがあって、今その手紙を取り戻したいと?」
(脚注・オペラ歌手なのにプリマドンナと言っているのは、ロシア王室で当時スキャンダルだった、ロシア最後の皇帝ニコライ2世とバレリーナのマチルダ・クシェンシスカヤとの恋の示唆か。)
「よくわかっているじゃないか。しかしどうしたら・・・・・。」
「秘密裡に結婚をした?」
「違う。」
「合法的な証明がない?」
「違うな。」
「では私が間違えていました。若者たちの間で手紙を取り戻したいという目的に沿うならば、どうしたら彼女であることの証明が確実になるんでしょうな。」
「その筆跡だ。」
「またまた!偽造できますよ。」
「私のところの紙に書いたものだ。」
「盗めます。」
「私の印鑑がついている。」
「偽物でもできます。」
「私の写真。」
「買ったものです。」
「我々が二人並んで映っている写真だ。」
「おおこれは王様!それは悪うございました!実に無分別なことをしてしまいました!」
「私は・・・無分別で正気ではなかったのだ。」
「それであなたは歩み寄りたいと・・・・。」
「私はただの王子だった。私はまだ若かった。。今では三十にもなるが・・・・。」
「やりなおすべきです。」
「私はそうしてみた、しかしうまくいかなかった。」
「王様、お支払いなさらないと。それを買い戻さないと。」
「彼女は売ってくれないだろう。」
「(彼女に)盗まれたのです、それでは。」
「五回の襲撃を試みた。二回はならず者を雇って彼女の家を襲わせた。一度は彼女が旅に出た際にそのトランクを盗んでみた。二回は彼女を道で待ち伏せした。」
「何も見つからなかったのですか?」
「まったく何もだ。」
ホームズは大声で笑って言った。
「ささいな問題ですよ。」
「しかし私にとっては重大な問題なのだ。」
と王はとがめるように言った。
「そう、実にね。それで彼女はその写真を持ちだしてどう扱うと思います?」
「私を破滅させるのに使う。」
「しかしどうやって?」
「私は結婚する予定なのだ。」
「それは聞いております。」
「クロトライド・ロットマン・フォン・ザクセン6世、スカンジナビア国王の二番目の娘とな。君もあの家が厳格な家柄だと知っておろう。彼女の心は非常にデリケートなのだ。私の行いに疑念の影がよぎれば、私たちの結婚は終わりになるだろう。」
「では、アイリーン・アドラーは?」
「彼らに写真を送って脅迫する。彼女ならやりかねない。私はそれを知っている。君は知らないだろうが、彼女には鉄のハートがあるのだ。彼女の顔は美しくても、その心は鋼鉄製で男のものだ。私が別の女性と結婚したと聞いたら、彼女がそうするのに時間はからないだろう・・・・ノンだ。」
「あなたはまだ彼女がそれを送っていない事を知っているのですか?」
「それは確かだ。」
「それはどうして?」
「それは彼女が、私の公的な婚約発表が、なされた日に送ると言ったからだ。それは来週の月曜日だ。」
「おお、それでは三日しか猶予がありません。」
と、ホームズは叫んだ。
「急を急ぎます。ひとつふたつの重要な案件が現在は見出せます。それでもちろん、今しばらくはロンドンに滞在しておられるのでしょうね、王様?」
「もちろんだよ。ロンハム(ホテル)のフォン・クラム伯を訪ねてくれたまえ。」
「それでは我々の進捗状況を知らせるために、あなたにお手紙を書きましょう。」
「それをお願いする。私の心配は本当にそれだ。」
「それで、費用の方は?」
「白紙の小切手を用意する。」
「それは確かですか?」
「その写真を手に入れたなら、我が国の首都で私は君にそれを与えるつもりだ。」
「それでは今たっての費用の方は?」
王はシャモア(スイスカモシカ)革のバッグを外套の下から取り出し、テーブルの上に置いた。
「現金で300ポンド、あと700ポンドの小切手がある。」
ホームズは小切手の殴り書きのシートを切り取り、手中に収めた。
「それでマドモアゼルの住所の方は?」
と彼は尋ねた。
「セント・ジョーンズウッドの、サーペント大通り、ブライオニーロッジだ。」
ホームズはメモを取りながら
「ひとつ質問が」
と言い、
「その写真はキャビネット版でしたか?」
と尋ねた。王は答えた。
「そうだ。」
「それではおやすみなさい、王様。よい知らせを送ることをお約束しましょう。おやすみ、ワトソン君。」
と、彼はブルーム型馬車の車輪の音が聞こえている時、こう付け加えた。
「明日の午後三時に来てくれるとうれしい。少し君と話したい事がある。」
と。
Chapter2
午後三時きっかりに私はベーカー街に戻ってきたが、ホームズはまだ戻っていなかった。小間使いは、彼は朝の午前8時すぎに、すぐに出かけてしまったと私に知らせた。私は暖炉のそばに座り、彼を待っていたが、その時間は長く感じられた。私は彼の知識欲には感服していたが、すでに記した彼の扱った二つの犯罪事件の時、彼に襲い掛かった恐ろしい結末のような事が待ち受けているのではないかと思い、今回のケースの自然さとその高貴な一族のクライアントの地位が、彼自身に与える影響について考えた。実際、我が友の手にかかればこのような自然なケースでは、彼は見事にさばいてみせるはずで、彼の刺すような厳しい捜査の前には、最も複雑にからみあったミステリーであれ、彼はそのからんだもつれをほどいて、素早く手際よい手腕を見せて、私を喜ばせるだろうと思った。だから、彼がしくじる可能性があるとは、彼のこれまでのいつも変わらぬ成功譚から、私の頭の中にもなかったのである。
四時近くすぎ、ドアが開いた。アルコール中毒みたいな赤ら顔で、頬にもみあげを生やし、酔っぱらった馬手にも見えるよれよれの服を着た男が、よろめいて入って来た。我が友の不思議なる力による変身術には慣れていたから、三度確かめるまでもなく、真実彼だとわかった。彼は僕にあいさつもなしで自室のベッドルームに消えたが、ものの五分もたたないうちに、きちんとした身なりの、古風なツイードスーツに着替えて私の目の前に現れた。彼はポケットに手をやりながら、暖炉の前で足を伸ばして立ち、しばらくの間空笑いしてから言った。
「いやはや、本当だったとは!」
と彼は叫んで、その後がっくりした様子で、虚言の独り言を繰り返すまでもなく、また声をたてて笑って、足を引きずるようにして椅子に倒れ込んだ。
「どうしたんだい?」
と、私が尋ねると、
「だっておかしすぎるんだよ。僕は今朝雇われたんだが、そうなるとは君も思いもしなかっただろうね、これで終わりだとばかり思っていた。」
と彼は言った。
「何のことかわからないな。君はいつもの癖から言って、アイリーン・アドラーの家を偵察に行ったとばかり思っていた。」
「それはその通りだよ。しかしその続きがあるのさ、驚くべきね。それなら言おうか、僕はその家を出て来たところだが、今朝の8時すぎには馬手の恰好をしてそこにいた。その時刻は馬を扱う従者の間では、素敵に暗黙の了解がある時間なのだ。彼らのうちの一人として、君も知るように僕は彼らと知り合いになった。僕はすぐにそのブライオニー・ロッジで見つけたよ。そこは小さくとも瀟洒な家で、後ろには庭があって、通りふたつに面している。正面右が大きな道路だ。(玄関には)頑丈な鍵のあるドアがついている。大広間が正面から見た右側で、趣味の良い家具がしつらえてあって、高窓が床からはめられていて、その鍵は子供でも開けられるイギリス式の非常識な戸窓だ。特筆すべき事柄ではないが、通行人が客間に入るのにはたやすい。僕は歩き回って、それをあらゆるビューから確かめた。しかし興味を引くような物は何もなかった。
それで僕はぶらぶらあたりを歩き回って、庭の中のある壁に、猫一匹が通れるぐらいの通路があるのを見つけた。僕は馬の尻にブラシをかけている馬手の一人に2ペンス(1ペンスは1/100ポンド)と酒半カップ2杯と刻み煙草2箱をはずんで、それと引き換えにアイリーン・アドラーと、彼女の隣人で半ダースほどの、僕が興味を持つにやぶさかでない住人たちの、プロフィールを無理やり聞き出したのだ。」
「それでアイリーン・アドラーについては?」
と、私はホームズに尋ねた。ホームズは答えた。
「ああ、彼女はあらゆる男性の頭の片隅にいるね。この惑星で最もボンネット帽子の下に可憐なものを隠している。言わば男性にとっては、狡猾な子猫ちゃんだ。彼女は物静かに暮らしていて、コンサートで歌い、毎朝5時に起きだしてきて、7時きっかりには戻ってきて夕食をとる。コンサートで歌う以外は、めったに外には出ない。たったひとりお気に入りの男性がいて、しかし男の趣味はいい。その男は色黒で、ハンサムだ。彼女が呼べば、日に一度ならず二度もやって来る。彼の名はゴドフリー・ノートンと言って、インナー・テンプル(ロンドンの法曹院協会)に勤めている。恋愛問題なら、馬手よりも優位だ。これらは、彼を狡猾な子猫ちゃんちまで12回は乗せてきた馬手たちから、僕が聞きだしたものだよ。彼らの言うのを聞いて、僕はブライオニー・ロッジの周囲をもう一度歩き回り、作戦プランを練ったのだ。
このゴドフリー・ノートンは本件で明らかに重要なファクターだ。彼は弁護士でね。この事で失敗をするおそれがあると言える。何度も彼が彼女を訪問するという事が、どうこの件と関わりがあるのかと君は思うだろう。だって彼女は彼の顧客であり、友人であり、愛人だからね。もしかしたら過去に、問題の写真を彼女から譲り受けて、保管していた可能性だってあるのだ。遅かれ早かれ、そうならないはずはないね。この疑惑の証明のために、僕はブライオニー・ロッジを見張っていたのだし、インナー・テンプルのノートンの部屋にまで注意を向けたのだよ。これはデリケートな問題だから、僕は調査の範囲を広げたのだ。これらは君には退屈なディティールに見えると思うが、もし君が僕の言うこの状況を理解できれば、君にも少し困難なものに思えるはずだ。」
「僕は君の言う事にしっかりついて行くよ。」
と、私は答えた。ホームズは言った。
「僕はまだ、そのハンサムが馬車でやってきて、その『紳士』が馬車から飛び降りた時の事に、心の平静が保てないんだ。だってその男はハンサムで、色黒で、鉤鼻で、クチビルコウモリなんだぜ。って聞いたことあるかい?彼は家に入る時も、大声で急かすように僕ら馬手を呼びつけて、扉を開けたメイドの尻を、ドアの空気であるかのように撫でたりしたんだ。
彼は30分間はその家の部屋に座っていただろうか。僕は応接間の窓の外からじっと観察していたけどね。部屋の中を彼は歩き回り、腕を上げ下げしながら興奮してしゃべっていたよ。彼女については、僕からはよく見えなかった。彼は見たところ、以前よりもうろたえている様子だった。彼は家を出て僕の馬車に乗りこむと、ポケットから金時計を取り出してじっと眺め、
『全速力でやってくれ!』
と叫んで、
『まずリージェント通りのグロスとハンキーの店へ、その後エジワラ通りの聖モニカ教会へやってくれ。20分でついたら、半ギニーやろう。』
と言った。
それで僕は馬車を走らせようとしたが、この小さく狭いランドー馬車の中ではどうする事もできないと思った。だって馬車の御者はハーフボタンのコートを着ているし、耳にはタイをつけているし、馬具はしっかり全部ベルトに留めているからね。(ところが)馬車を出す前に、家の扉が開いて、彼女が馬車に乗りこんできたんだ。僕は彼女をちらりと見ただけだったが、その様子は愛らしかったね、まさに男ならハートが死んでしまうだろう。
『聖モニカ教会へやってちょうだい、御者さん、20分で着いたら半ソベリン金貨を差し上げるわ。』
と、彼女は言った。
失うはたやすきだよ、ワトソン。僕は聖モニカ教会まで馬車を走らせている間中、心の中は平安だった。彼女が後ろに止まり木に止まっているように乗っているだけで、ランドー馬車は通りをすべるように走ったさ。御者の僕はあんなぼろを着たみなりだったが、二度もはずんだ際にジャンプして彼女の方を見たよ。
『聖モニカ教会です。』
と、僕は言った。
『20分で着いたら半ソベリンでしたね?』
それは12分から25分の間だったけど、もちろんそれは風のように速く走ったので明らかだった。
僕の馬車は速いんだ。僕より速いやつがいないのは、僕たちの前にどの馬車も走っていなかった事でわかる。とても速く走って、湯気を立てている馬とランドー馬車は、教会のドアの前に着いた。僕はドアマンに入場料を払って、教会の中へと急いだ。サープリス(聖衣)を着た聖職者達がいたが、彼らはこの、僕が着いてきた二人に(婚姻の)訓戒を与えようとする様子で、僕の魂は安らかではなくなった。聖卓の前には三名の聖職者が立っていた。僕はその場から抜け出そうとしているなまけ者のよそ者を装って、狭い教会の通路をうろうろした。
突然、驚いた事に、聖卓に立っていた三人が僕を取り囲み、ゴドフリー・ノートンがものすごい勢いで走ってきて僕に言った。
『助かった!』
と彼は叫んだ。
『君だ!来い、こっちに来い!』
『何事ですか?』
と僕は言った。
『いいから来い!三分間しかないんだ!でないと合法にならん!』
僕は重い足をひきずって聖卓の前に立ち、僕自身気がついたらつぶやいていたよ。その、アイリーン・アドラーが未婚女性であり、ゴドフリー・ノートンが独身男性である事の証明をね。そして彼らを結びつける絆の手助けをしたのだ。その瞬間レディーと紳士は両側から僕に感謝をし、聖職者も僕をじっと見つめた。実に、僕の人生で最も不条理な瞬間だったね、今思い返しても大笑いだ。彼らの婚姻は法律的には非公式にしか見えない、聖職者は明らかに難癖をつけて断るべきだったね。しかし幸運なことに、僕は通りを探さなくても、僕が反撃するべきである新郎を見つけたのだ。結婚した二人は僕にソベリン金貨を渡した。これが僕のとある機会の思い出の、今身につけている金時計とその鎖さ。」
「そりゃあ、まったく思いがけない話だったね。」
と、私は言った。
「それでどうなった?」
「そうだね、僕は彼らを脅すプランをまず考えた。彼らの即座の別離を考えたが、それは僕にとってはすごく時間が必要で、かつエネルギーがいる。しかし教会のドアの前で彼らは別れ、彼はインナー・テンプルに馬車で戻ったし、彼女は自分の家に戻った。
『いつものように、5分で行ける公園のところで降りるわ。』
と、彼女は言って、彼から去った。僕はそれ以上何も聞けなかった。彼らは別々の方角に行ってしまい、僕は自身の計画の構成をいったん手放した。」
「それはどんな?」
「コールド・ビーフにはグラス・ビールだよ。」
と、ホームズは答えて、呼び鈴を鳴らした。
「僕は食べる事を考えるのに忙しい、今晩はもう忙しくなったようだ。それではドクター、ご一緒しましょう。」
「それはありがたいが。」
「君の日常に支障がないかい?」
「いいや少しも。」
「僕の話を引き留めるチャンスをなくしても?」
「いやその方がいいよ。」
「そうかい、それはよかった、素晴らしい。」
「それは君の言う通りにするよ。」
「僕は本当に、君に頼っているのだ。」
「しかし、なぜ僕に尋ねる?」
「今、ターナー夫人が僕たちにお盆を運んでくるよ。僕は君に、はっきりさせたかったのだ。」
彼はそう言うと、小間使いが運んできたつつましやかな料理に、空腹でたまらない様子になった。
「話している間中、食べたくてたまらなかったのだが、時間がないものでね。今五分たった。しかし話している時は二時間ぐらいの気持ちだったよ。アイリーン女史、いやマダムだな、彼女のところには7時に馬車で行こう。我々はブライオニー・ロッジで彼女に逢わねばならない。」
「それからどうする?」
「君は忘れないでくれたまえ。これから起こる事は、僕がすでにアレンジしてある。このただ一点は、僕が強く主張する。君は僕を邪魔するべきではない。たとえそうしたくともだ。わかるね?」
「僕は中立だよ。」
「さてどうだか。確かに些細だが、嫌な感じが僕にはするよ。だが嫌な事はやめておこう。あの家で僕が今から伝える事をすれば、それで終わりだ。あの家に着いたら、4-5分後に僕は応接間の窓を開ける。君は開けられた窓のそばに立つんだ。」
「ああ。」
「君は僕を見る、そして僕は君に見つけられるところにいる。」
「ああ。」
「そして僕が手をあげたら――僕が渡している物を部屋の中に投げ込むんだ。それと同時に『火事だ!』と叫べ。僕についてこれるか?」
「やれるさ。」
「恐れる事は何もない。」
と彼は言った。そしてポケットから、長い巻き煙草の筒のような物を取り出した。
「これは僕があつらえた発煙筒だ。キャップをはずすと自動的に端に火が点灯する。君の仕事は、これを部屋の狭い場所に投げることだ。君が火の手があがったと叫べば、人々が部屋に押しかけてくるだろう。そしたら君は通りに出て端の方まで歩いていけ、僕はその十分後に落ち合う。僕はうまく説明できたかな?」
「僕は中立の立場だからね。それで窓の外に立っていて、君を見て、合図があったらこれを投げ込む、そして火の手があると叫んで、君を通りの角で待っている。」
「素晴らしい。」
「それで君は本当に僕をあてにしているのかい。」
「それはもちろんだよ。僕が思うに、たぶん、そろそろ僕が演じる新しい役の準備をしないといけない頃だ。」
彼はそう言うとベッドルームに消え、その数分後に、人に好かれるような身なりの、英国非国教会派の聖職者の恰好をして出て来た。彼はつば広の黒の帽子をかぶり、だぶだぶのズボンと白のタイをつけていて、憐み深い笑みをたたえて、一般人が見たらこのような外見の慈悲深そうな人物は、あのジョン・ヘアが演じたものにも匹敵しそうな感じだった。
(脚注・ジョン・ヘア卿(1844年5月16日- 1921年12月28日)は、19世紀後半から20世紀初頭にかけてのイギリスの俳優。)
ホームズが変装するのはまれなことではない。彼の表現力、態度、そして魂は、偽物を本物に見せかけるのにとても優れているのだった。もし彼が犯罪のスペシャリストになったら、どのような科学反応の痕跡があれども、舞台の上に役者はそろっただろう。
15分後、我々はベーカー街を出て、その10分後サーペンタイン大通りに来ていた。すでに日は暮れていて街灯が灯り出しており、我々はブライオニー・ロッジと、そこに住む者を待つべく先を急いだ。そこはホームズの説明にあった通りの外観で、しかし私が見たところ、それほどプライバシーが守られているように思えなかった。というのも通りの反対側に小さな路地があって、そこに人々がたむろしていたからである。コーナーにはぼろを着た若者が煙草をふかし笑い声をあげていて、その横には刃物研ぎの男、そして二人の紳士と一緒に商売女が立っており、また幾人かのややよい身なりの若者らが煙草を口にくわえて長椅子にゆったりと座っていた。
「見たかいあれを。」
とホームズに指摘した。我々は問題の家の前にまで来ていた。
「この婚姻はすでに単純なものではない。あの写真は二重の意味で武器になってしまっている。あの国王が彼のプリンセスに見せたくないのと同様に、彼女もゴドフリー・ノートンにそれを見せたくないらしいのはチャンスだ。もっかの疑問は、その写真がどこにあるかという事だが。」
「実際、どこにあるんだ?」
「彼女はそれを持ちだすのに容易ではないという事だ。写真はキャビネットサイズだからね。女性のドレスに隠すには大きすぎる。彼女はしかし、国王の襲撃や捜査を知っていた。二度もその企てがあったんだからね。しかしながら、彼女はその写真をどこにもやっていない。」
「どこだよ、じゃあ。」
「彼女の銀行員かもしくは彼女の弁護士のところだ。そのふたつの可能性がある。しかし僕はその見方はしたくない。女性というものは元来秘密主義で、隠したがるものだからだ。なぜ彼女が誰かにそれを手渡すかね?彼女はそういった後見人と契約するかもしれなかったが、それだとそのビジネスマンを頼る際に、法的影響を避けて通ることはできないだろうからだ。その上、彼女はここ数日間でそれを使う事を決心したところなのを覚えているかね。であるから、彼女はまだそれを手にしている。写真はまだ彼女の家の中にある。」
「しかし二度も襲撃を受けた。」
「ぷはっ!その男たちは、見つけ方を知らなかったのだ。」
「しかし君はどうやって見つける?」
「僕も見つけられないだろう。」
「それならどうするんだ。」
「彼女に『見せて』もらう。」
「しかしそんなことは彼女は断るだろう。」
「彼女はそんなことはできないさ。そら、車輪の音がした。彼女の馬車だ。言った通りに事を運ぼう。」
ホームズが言った時、馬車の両脇の灯りの光が通りの角を曲がってやって来た。小さなランドー馬車がブライオニー・ロッジの家のドアの前によたって止まった。馬車のドアを引こうとして、ぼろを着た男が投げ銭を期待して、通りの角から駆け寄ってきたが、同じ意図の他のぼろを着た男たちから肘鉄をくらった。その騒ぎは二人の兵隊あがりと刃物研ぎや、角にたむろしていた者らも加わって、さらに大きくなった。その拳と木切れを振り回しての喧嘩は、馬車のステップを降りて来たレディが、それらの男たちの真ん中に現れた瞬間、おさまった。ホームズがレディを守って、群衆の中に駆け寄ったからである。しかしホームズがそこにたどり着いた瞬間、彼は顔面を殴られて叫び声をあげて地面に倒れた。兵隊あがりの男はホームズが倒れた瞬間、ホームズを踏んでいる一人の男と、その他のややよい身なりの与太者を押しのけ、レディに傷ついたホームズに注意するように促した。アイリーン・アドラー、私はまだそう呼ぶことにするが、彼女は急いで馬車のステップを降りてきた。しかし彼女は一流のレディであったから、明るい部屋の前で立ち止まり、通りの方を見やった。
「誰か気の毒な人が傷ついたのですか?」
と彼女は尋ねた。
「そうです、死んでます。」
と幾人かが叫んだ。
「いや、違います。彼はまだ生きている!」
と他の者がそれに対して叫んだ。そして言った。
「でも誰かが病院に運ばないと、そうなるでしょう。」
「彼は勇敢な人です。」
と彼女は言った。
「彼のためになるなら、私の財布と時計をあげてもよいです。あなたたちはギャングですけど。彼はまだ息をしています。」
「通りに寝かせておけないです。マダム、彼を中に運んでもいいですか?」
「よろしいでしょう。居間の中にお運びなさい。寝心地のいいソファがあります。ここよ、やってちょうだい。」
ホームズはそろそろと注意してブライオニー・ロッジの家に運び込まれた。それはあの応接間で、期せずして、私が立つように言われた窓の近くのところだった。灯りはついていたがブラインドは閉まっておらず、私のところからホームズが寝かせられたソファはよく見えた。私は彼が良心の呵責に苦しむ事もある人間だとは知らなかったが、彼と共闘するこの美しく見える友情の絆で、彼女の傷ついた人間を助けるというやさしい親切心を利用することになり、それは私自身が恥ずかしく思うことは知っていた。それは私にホームズが興味を示した時から、最も黒く存在していた欺瞞であったと言うべきだろう。私はアルスターコート(アイルランド製のコート)の下から発煙筒を取り出したが、私の心は重かった。もちろん、私が思うに、私たちは彼女を傷つけなかった。私たちは他人が彼女を傷つける事から守ったはずだ。
ホームズはソファに座っていて、私の目には空気を必要としている動作をしているように写った。メイドの一人が部屋を横切り窓に駆け寄って、窓を開けた。そして彼の手が合図を送っているのを見るや否や、私は窓に向かって発煙筒を放り投げ、「火事だ!」と叫んだ。私の口から言葉が発せられると、群衆たち――良い身なりのものも、悪い身なりのものも、馬手も、召使いのメイドたちも、「火事だ!」という叫び声に加わった。発煙筒の薄い煙は部屋の中を席巻して、開けられた窓に向かった。私が見ていると、駆け寄ってきた人々に、ホームズが注意喚起で叫び声をあげているのが聞えた。叫び声をあげている群衆を後目に私は街角の角まで走って行った、そしてそこで10分後に我が友の腕を取ることになった。我々は騒ぎから遠ざかった。彼は静かに落ち着いて数分後に歩いてきて、我々はエジワラ通りに抜ける道を静かに歩いて行った。
「君は非常にうまくやった、ドクター。」
とホームズは言った。
「何もかもこれでうまくいく、これで十分だ。」
「どこに写真があるかわかったかい?」
「どこにあるかわかった。」
「どうして見つけてこなかったんだい?」
「彼女は僕に見せてくれたからね、僕は彼女がそうすると言ったろう?」
「僕にはまださっぱりだよ。」
「そんなにミステリーじゃないんだが。」
と、ホームズは笑って言った。
「事は実に単純さ。君のことはもちろん、道にいて見ていたやつらも皆共犯者だ。彼らは今夜の出来事に加わっていた。」
「その意味はよくわかる。」
「それから言っておこう、あの与太者たちの列に加わる前に、僕は掌に赤いペンキを塗っていたのさ。そして彼女の前に駆け寄って、倒れる前にそれを顔や手に塗りたくって、哀れな外見を装った。古典的なトリックだね。」
「それもそうじゃないかと見当をつけてた。」
「それから部屋に入った時だ。彼女は僕に包帯を巻いた。そんなことまで彼女にさせて?あの僕が言っていた居間でだぜ。彼女のベッドルームも居間に続いているのを見て、僕は決意した。それで彼らは僕をソファに運んだ時に、空気が欲しいというゼスチャーをして、窓を開けさせて、君への機会を作ったのだ。」
「どうして僕の助けがいったんだい?」
「それは非常に重要だ。女性というものは自宅に火事が行った時、本能的に一番価値のあるものに駆け寄るものだからだ。それは完全に圧倒的な衝動で、僕もその優位性にならって事を運んだのだ。これはダーリントンの取り換えスキャンダルでも僕が使った手法だ、アンスワース城の事件でもね。子育てしている女性なら赤ん坊を、未婚の女性なら宝石箱をとっさにつかむ。そしてこの家で我々の探し求める物は、今日の彼女にとっても、非常に貴重なものである事は明白だったのだ。彼女はそれを守るべく駆け寄るだろう。火事の叫び声は彼女にそうさせるに明らかだった。煙と叫び声が彼女の鋼の精神を揺さぶった。彼女は期待に応えたよ。その写真は、電話機の右パネルの応答ボタンの後ろにスライドがあって、その下に隠してある。彼女はその場所に駆け寄ったが、僕が見ているのに気づいて、半分出してすぐに隠した。僕はその後火事だと叫んでいたが、彼女はその場を離れて発煙筒に気づいたので、僕はその場から逃げ去り、その後のことは覚えていない。僕が心残りなのは、あの家から逃げる際に、彼女に疑念を残したことだ。夜でなければためらう事なしにすぐに写真を取っただろうに。しかしすぐに御者が入って来た。そして彼女の安全を確認すべくそばに寄ってきた。それで僕は危急にその火事現場を脱したのだ。」
「それで?」
と私は尋ねた。
「僕らの探索作業はこれで完全に終了だ。明日にでも国王のところに行って、もちろん君も来てくれるならば、君も一緒だ。我々は彼女の居間に入って行って写真を見よう。しかしたぶん彼女はその写真を見せてくれないかもしれないね。だが我が君は、写真を我が手に取り戻した事で、満足するだろうね。」
「それなら君は彼に電話するのかい?」
「訪問は明日朝8時にしよう。彼女は起きていないかもしれないが、我々にとっては好都合だ。もしそうなら我々は、彼女の婚姻が彼女の人生と習慣を変えたと、即答できるだろう。遅くならないうちに、国王に電話だ。」
我々はベーカー街にまでたどり着いた。そしてドアの前に立った。ホームズがポケットの鍵を探っている時だった。誰か通行人が彼に声をかけた。
「今晩は、シャーロック・ホームズさん。」
家の前の舗装道路には幾人か人がいたが、その通行人はアルスターコートを着ている、優し気に見えるほっそりとした若い人だった。その通行人は急いで私たちの前を通り過ぎた。
「この声は以前に聞いたな。」
と、ホームズは言った。そして薄暗くなった通りをじっと見詰めた。
「さて、誰か僕に2ペンスでもめぐんでくれないか。」
と、彼はつぶやいた。
Chapter3
私はその夜ベーカー街の部屋で眠り、翌朝トーストとコーヒーをよばれてから、ボヘミア国王の部屋へと駆けつけた。
「君は本当にそれを取り戻したのか!」
と、彼はホームズの肩をつかんで叫び、熱意あるまなざしで見つめた。
「それほどでもないことです。」
「しかし君は希望を得た。」
「希望を得ました。」
「それならば行こう。すぐさまにも行きたいのだ。」
「我々は辻馬車を用意しております。」
「いや、ブルーム型馬車を待たせてある。」
「それならば事は簡単です。」
我々は馬車で下って行き、ブライオニー・ロッジに再び着いた。
「アイリーン・アドラーは結婚しました。」
と、ホームズは国王に指摘した。
「結婚!それはいつだね?」
「昨日です。」
「しかし誰とだね?」
「ノートンという名のイギリスの弁護士とです。」
「しかし彼女は夫を愛していないだろう。」
「私も彼女がもしそうなら希望があります。」
「それは、希望があるとはどうしてかね?」
「それは、あなたの王様にとって真に恐怖であり、未来を邪魔するものであるからです。もし彼女がノートンを愛していれば、あなたの王様の事は愛しておりません。もし彼女があなたの王様のことを愛していなければ、あなたの王様のプランを邪魔する理由は何もなくなるからです。」
「それは本当にそうだ。だが――待てよ!私は彼女が私のところに来るだろうと思っている!彼女は女王のように気位が高いからな!」
彼はそう言って不機嫌そうに黙り込んだ。それはサーペント通りに着くまで続いた。
ブライオニー・ロッジに着いて馬車を降りると、歳を取った婦人が階段のところに立っていた。彼女は我々がブルーム型馬車から降りるのを、冷笑を持って眺めていた。
「シャーロック・ホームズさんでいらっしゃいますか?」
と、彼女は言った。
「いかにも私がシャーロック・ホームズです。」
と我が同胞が彼女を見て質問に答えると、いかにも驚いた一瞥を彼女は返した。
「本当にまあ!私の女主人は、あなた様から電話があるだろうと言っていたのですが。彼女は彼女の旦那様と、今朝の5時15分チャーリング・クロス駅発の列車で、(アメリカ)大陸に行かれました。」
「なんだって?!」
と、シャーロック・ホームズは蒼白になり、残念そうに驚いて叫んだ。
「君は彼女がイギリスを離れたと言っているのか?」
「もうお戻りにはなりません。」
「それでは、手紙は?」
と王はかすれ声で尋ねた。
「すべて失った・・・。」
と彼は言った。
「中を見てみましょう。」
ホームズは召使いに指図して、応接間にまで王と自身を案内させて押し入った。家具はあらぬ方向にばらばらに置かれていて、棚は引っ掻き回され、たんすは引き出されていて、彼女が高飛びの前に部屋の中をあら探しした様子だった。
ホームズは電話機に駆け寄り、小さなスライド式引き出しを確かめると、それをがっ、とこじ開けて中身を引き抜き、中から写真と手紙を取り出した。中にはイブニングドレス姿のアイリーン・アドラーの写真があり、手紙の封筒の表書きにはこうしたためられていた。
『シャーロック・ホームズ様へ。謹んで残します。』
ホームズは封筒を開いて、我々三人はそれを読んだ。それはあの騒動を起こした夜の深夜の日付で、それにはこう書かれていた。
『親愛なるシャーロック・ホームズ様。あなたは本当によくおやりになりました。完璧でした。火事の叫び声があるまで、私は疑わなかったのです。しかしその時私は自身の考えに疑いを持つようになり、そう思うようになったのです。私はあなた様を何か月も前から注意しておりました。もし国王陛下がエージェントを雇うようになったら、それは確実にあなたになるだろうと、私は言ったはずです。そしてあなたの住所をあなたは私に知らせていました。いいえ、この事だけでも、あなたの知りたがっていた事実の暴露を私にさせたいのですね。私は疑い出して以来、あの、優しく親切だった年老いた聖職者を悪魔だと思うようになったのです。しかし、あなたも知っておられるように、私も役者として鍛えられています。男装のコスチュームは私にとってわけもないことでした。私はしばしばこのコスチュームで自由な冒険を満喫していたのです。私は御者を呼びました。そうあの時私が御者さんと呼んだ男、彼に階段であなたが走って行くのを見張るように言って、彼に私の普段着を着せ、あなたの消えた方角に彼をやったのです。
そう、私はあなたについてドアに行きながら、シャーロック・ホームズに選ばれた、真に興味のある対象をそうしたのですわ。そうして図々しいようですけど、あなたに今晩はと言ってから、インナー・テンプルの夫のもとに逢いに行ってしまったのです。
私たち二人はこの旅立ちで最良の財産をなしましたし、私の恐るべき競争相手にも推し進めることができました。だからあなたは明日には、私たちのもぬけの殻の巣を見るのでしょうね。写真に限って言えば、あなたのクライアントは安全ですわ。私は彼を愛しているし、彼よりも愛する事のできる人はいないでしょう。王様、どうか彼をべらぼうに間違った人物の邪魔者にしないであげてください。私はこの写真を自身のお守りにして、これから未来に起こりうるどのようなステップでも安全であるように、この武器を守ります。この武器を持って行くこと、そして代わりの写真を残す事をお許しください。
それではこれを残します、シャーロック・ホームズ様。
真実はあなたのもの。アイリーン・ノートン・旧姓・アドラー。』
「なんという――ああ、なんという女だ!」
と、ボヘミア国王は叫んだ。我々三人が手紙を読み終えた時だった。
「君は彼女がいかに素早く決断したか言えまい?彼女ほどの称賛に値するクィーンはいないだろう。彼女が私のレベルであったら、こんな憐みなど持たなかっただろうに。」
「僕の見たところ、確かに彼女はあなたの王様とは違うレベルにあるようです。」
と、ホームズは冷淡に答えた。
「あなたの王様の仕事を、成功の結末に導けなかったことは、僕は謝ります。」
「それは逆だよ。君。」
と国王は泣きながら言った。
「これ以上の成功はのぞめん。彼女の言葉が神聖であることを、私は知っている。その写真は燃やすのが安全だろう。」
「ひとつあなたの王様に希望を言ってもよいのなら。」
とホームズは言った。王は答えた。
「君には莫大な恩義がある。君に恩を返さなければならない、祈らせてくれたまえ。この指輪を――。」
と、彼はエメラルドのはまった蛇型の指輪を指からすべらしはずそうとしたが、ホームズの手にそれを止められた。
「あなたの王様はそれよりも価値のある物をお持ちです。」
と、ホームズは言った。王はつぶやいた。
「名も知らぬのにか。」
「この写真です!」
王は驚いた顔でホームズを見つめた。
「アイリーンの写真か!」
と、彼は叫んだ。
「君が望むなら、確かに!」
「あなたの王様に感謝します。この件はすべて終わりました。よい朝をお迎えください。」
彼はお辞儀をし、王が彼の手を取ろうと手を伸ばしたのにも握手もせずに、我々の会社の部屋へと戻っていった。
以上がボヘミアのスキャンダルの顛末であり、シャーロック・ホームズのベストプランが女性の機智に打ち負かされた顛末である。彼はこの女性の賢さを陽気に笑って話したものだが、私は最近ではそれをとんと聞かない。そして彼がアイリーン・アドラーの事を話す時は、決まってその写真の事を指し示して、それは常に女性の優秀さの鑑としたのである。
ボヘミアのスキャンダル(翻訳文)
昨晩投稿した第三章で、一応この中編の翻訳は終わりました。だいたい原文の通りに訳したつもりですが、間違っている個所があるかもしれません。時制とかわかりにくいところが多かったです。また、人称がなぜそれになっているのか、不明な箇所がありました。定冠詞もよくわからないものがありました。構文は文の流れに沿って組み立てたつもりです。英文の翻訳をしたのは今回がはじめてで、いろいろ初心者でできていない部分があると思います。