こわれていく
せんせいに。
花の首輪をあげる。
にんげんの、負の感情を吸収した真夜中の、色。しらないあいだにつぶれていた、コンビニエンスストアのかたすみで、放置された公衆電話が朽ちて。荒んでいく街で、夢みたいなことばかり語っていたひとびとは、みんな、夢の中から出てこられなくなった。せんせいに似合う、白い花の首輪。ハッピーエンドの物語をもとめて、衛星放送のテレビのチャンネルを、むやみやたらに切り替えてる。となりにせんせいがいるのに、ただ、無性に、むなしい夜。
いずれは、廃墟となる。
ぬけがらとなる。
でも、だいじょうぶ。つよいから。どこでだって、生きていける。
夢幻の住人となった、ひとたち。冷凍睡眠したまま、宇宙に放り出された、ひとたち。地下シェルターで、密やかに呼吸をしている、ひとたち。ぼくだけのものになった、せんせい。
月が、きれいだと思った。
月をうつくしいと感じるような情緒が、まだ、じぶんにもあるのだと安堵した。
こわれていく