甘い恋と花占い
片想いが始まってから、もう一年が過ぎようとしている。窓辺から見える校庭にはサッカーを楽しむ彼の姿があった。けれど彼は私のことなんてこれっぽっちも考えることはないだろう。だって彼の世界の私はモブなのだから。
帰り道に必ず通る大きいな公園。家までの近道だから使っているだけで、立ち止まってみようと思ったことはない。たまたま視界に映ったマリーゴールドを見て、幼い頃はよく花占いをして遊んでいたことを思い出す。一房を茎から捥ぎ取り、近くのベンチに座って、幼い頃と同じように花占いをする。
「彼は私のこと、好き、嫌い……」
マリーゴールドの黄色い花弁が足元に散っていく。彼の世界の私は、ただの通行人でしかないのに、それでも私は彼に話し掛けられたいと思ってしまう。そんな傲慢を願っていながら、私は勇気を出せずに、こうして花占いをして遊んでしまう。
「嫌い。……あ」
最後の花弁を捥ぎ取った結果は、良い方ではなかった。やっぱりね、と胸の中に仕舞い込んでしまえば楽になれる。溜息を一つベンチに置いて立ち上がると、たまたま通り掛かったのは彼だった。
「あれ、こんなところで何してるの?」
ズボンの裾はサッカーで遊んでいた時の砂がびっしり付いている。おまけにブレザーも胸でボールを受け止めた跡が少し残っている。私は少年らしい彼の姿を見て、可笑しくなってしまった。
「うっふふ、まだ汚れ付いてる」
「あはは、ちょっとはしゃぎすぎた」
私は彼の隣に並んで歩く。それだけで心臓の鼓動が速くなり、音が彼にまで聞こえてしまうのではないか、とどぎまぎしていた。
「そうだ、今度勉強教えてくれない?」
「いいけど、成績悪くないよね?」
「先生より、君に教えてもらいたい」
これが最初の告白で、今が幸福の最高潮なら、私はもう死んでも構わない、そう思った。
甘い恋と花占い