原始から愛の永久機関へ

雪水 雪技

原始から愛の永久機関へ

動かない体を持て余して

静かな朝に咲いた季節は
冷たい空気の中に呼吸する

厳かな空気は苦手な烏が
こんな朝にも啼いている

鳥たちは方向を確認する
軸のブレない星の上で

ただ一方向をめがけて飛ぶ
その直線が今朝の空に引かれた

線は光る

冷たい部屋にて泣き出した今朝
何かが痛み出して、
朝日が苦しくなって

ドレスアップ街路

落ちた葉っぱは踏まれて
歩道は色とりどりの模様

季節の変わり目に寂しい

戻らないものについて考える夜長
苦しみながら眠るには長過ぎた

歩道が光っている
美しい自分を知っている

私は嫉妬して
スニーカーで踏みしめる

受容する意識体

流れる川に落ちていく雪を見る
こうしてかえってゆくのでしょう

故郷へ流れてゆく結晶たち
ひとつに戻ってゆく過程

自分というものが消えて
大き流れに戻っていくのは

恍惚としたものと
恐怖する心と
混ざり合い

しかし結局何事も受け入れる
受け入れる他ないのでしょう

煙の秋

山にて出会う動物たちは忙しく
冬に備えてあれこれ蓄える

やすいよ、やすいよ
キノコたちが大騒ぎ

うまいよ、うまいよ
木の実たちが大はしゃぎ

連れて行って欲しがるのは
この小さな命も同じことであり

命の大小という尺度が
お門違いでありますと
熊に嗜められた

もくもくと、蓄える秋にて

眠るようにひきとって

蛙が叫ぶ雨の日は
丸くなるアンモナイト
このまま布団に潜って
化石になる日を夢見てる
誰か見つけてくれたなら
気の利いた名前をつけてくれ

そして大切に保管して
私という生き物を解析して

博物館は居心地のいいところがいい
煩くなくてよく眠れるところに
適当に展示して欲しいと願った

夢見る来訪者

カンブリア紀を歩いてみて
私は異質だったらしくて
すぐに追い出されてしまう
しかし現代のどこに
私は住まえばいいのかわからず
再びカンブリア紀を歩いている

アノマロカリスに嫌われる
ハルキゲニアに注意される

でも私、いくところがありません

消えていく時代を歩いて
消滅を夢見る迷惑者

果てる季節にて合掌す

ヒトデが隠れて空は暗転する
誰かが捕まえた影法師は
日に焼かれて煙になる

お線香のにおいがして
川の流れは激しくなる

日に当たったガラスの破片
反射して烏を呼んでいる

みんなが空を飛びたがる今日
雲は重たい気持ちを地上に降らせる

水溜りに新しい世界
一葉に悲しんで深くなる

メルヘン葬送曲

鏡を割ってもアリスはいなかった
地下鉄で走る昼間には
御伽噺が駆け回る

駅構内にて人魚姫が泡になる
白雪姫は毒林檎を食べて倒れてる
シンデレラの硝子の靴は割られた

御伽噺の残骸はホームに落ちた

次の電車は問題なくやってくる
私の問題はひとつも解決せずに

全てが時刻表通りに進んで

死骸に触れる私の掌

競争は苦手だった
いつも最後でよかった
自己主張は苦手だった
いさかいが嫌であった

いつからか競争も主張も
見様見真似でやってみて
形を真似て、それを私と呼んだ

限界が早過ぎて
寿命を待てなかった

形を無くしたまま
生きている事実は
重過ぎて

私の抜け殻を抱きしめるだけの
晴天の今日

いずむ

透明のその向こうに
本当が見えるのなら
この目の奥にも
本当はあるのか

嘘は蔓延るまま
信じたものが本当になる

それは本当があるからなのか
それは嘘が塗り替えられたのか

誰も確かめられない
声の大きな人が
そのまま蔓延る

耳を塞いで
目を閉じて

私だけの宇宙に潜る夜

前後不覚

人が暮らした跡は
幾億年経っても
懐かしさが漂う

何千と彼方の方角を過去と呼ぶ

そこに置いてきたものに
心臓はいつも引っ張られる
それに重力がのしかかるから

私は今、存在している
間違いなく、今はある

一秒後には存在は確定していない

過去は曖昧ゆえに
塗り替えられ、元の色を忘れて

厭世的幻想主義

夢が溢れて
枕元に破片が溜まる
朝には集めて窓から放った

朝の空気に晒されて
みんな消えていく
最期の笑い声

冷たい空気に
木々は静かだ
鳥は控えめに歌う

朝露に映る人の夢は
どれも不条理なもの
振り回されぬように
警告する朝は幻想を砕く

幻に生きていたいと
大樹に打ち明けて

貸していたもの

わからないものは
わからないままに
そういう素直さが
認められなかった

無知を嘲る群れの中に居場所は無く
私は最後尾で俯いて影と話す

虚勢をはって
笑顔で欺いて
無理をし続けて
払う代償は大きい

未来の前借りを続けて
長い間気がつかないで
笑って過ごしていた

今は失くした季節を過ごす

昇天前日譚

虚空の下に横たわる
悟りは遠い輪廻の中
私は動物として何をするか

木々が身を寄せ合い
木漏れ日が落下する
この季節はいつだろうか

夏が終わったのは知っている
私が人間であることも知っている
他に何を知ればいいのだろうか

雲の流れを追う目玉
寂しい朝に哭く烏

それはいつの記憶だろう

交差点で出会ったUMA
今日から仲良しになる
なんでも話せるけれど
お互い言葉は通じない
ただ時間を共有する
かけがえのない存在

いつか消えるのはお互い様
だから一と零でつくる暗号
互いを認識する目印にして
再びそれぞれの旅に戻ろう

時計の針が合わさる刹那に
また出会う私たちだから

はじまりにもどれ

はじめから嘘つきなら楽だった
いつも本当にしてしまう私が
その後続くものを苦しくさせる

嘘はひとつもなかったと言う

それは本当のことであり
しかし心に偽りはあって
何層にも重なるものが
現実の光を捻じ曲げる

私が嘘つきであるなら楽であった

これも本当のことだった

今見えるものだけが真実らしく

夕方が泣いて夜が来る
寂しい光は暗雲に隠される
位の高い着物の色した空がある

つまらない日々には
何色を塗っても変わらない

希望を持たすような言葉が
いつか私の背中を押すより
この胸を突き刺す日が来ること

それを知る何年後かのこと
なにも知らなくていいから
その空の色に思うことを

思い出があせる前に

あの夜に歩いた橋は
補修工事されていた

あの日歩いた地面は
もう無くなるのだろう
名前だけが残って別物になる

事実は淡くなっていく
思い出は鮮やかになる

それは既に
別の物語として
違う世界に飛んでいった

追わずに見送る
綺麗なまま飛び続けて

私の心臓が止まる頃枕元で輝いて

原始より愛の永久機関へ

神話の下にある
血脈は歴史と呼ばれた
その上をマグマと共に
紡ぐように歩いていた

生命に名前を与えても
端から事切れていく
それを天空が悲しんで
泣いて泣いて海が出来た

大陸は伸びたがる
星を丸ごと抱くために
引っ張りすぎて千切れても
この星をずっと愛している

愛は大気になり風となる

投棄された願い事

天の川に落としたイヤリング
星の仲間になることはなく
熱を持って弾けていく

あの日、耳で揺らした金色
何かのサインでしたか?
さあ、誰にもわかりません
沈黙は金になり得ますか?
さあ、誰にもわかりません

答えを求めるのは誰ですか

何かを祈られるたびに
私は、あの焦げた金属を思い出す

原始から愛の永久機関へ

原始から愛の永久機関へ

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 恋愛
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-10-15

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. 動かない体を持て余して
  2. ドレスアップ街路
  3. 受容する意識体
  4. 煙の秋
  5. 眠るようにひきとって
  6. 夢見る来訪者
  7. 果てる季節にて合掌す
  8. メルヘン葬送曲
  9. 死骸に触れる私の掌
  10. いずむ
  11. 前後不覚
  12. 厭世的幻想主義
  13. 貸していたもの
  14. 昇天前日譚
  15. はじまりにもどれ
  16. 今見えるものだけが真実らしく
  17. 思い出があせる前に
  18. 原始より愛の永久機関へ
  19. 投棄された願い事