花火
花火は美しい
花火は美しい。あの一瞬の煌めき、そしてすぐ消え失せる儚さ。その儚さにこそ美の真髄が隠されていると思う。
だから花火大会などは無粋である。花火の儚い美しさがなくなり、ただの凡俗なものに成り下がってしまう。
また花火は実際に見るよりも記憶の中にこそ輝く。溝口が金閣寺を理想の上で崇めていたのと同じように、美とは観念的なものだ。現実になったところでその事象の本来の美しさは現れてこない。
そして私は花火になりたいのだ。死んだら葬式なんかやらないでくれ。ましてや墓に名を刻むなど死んで尚恥を晒すようなものだ。その墓や葬儀に使う金で私の遺灰を込めた大きな花火を一発打ち上げてくれ。一瞬の煌めきに、その儚さに美しさがある。私はどんなに生き様が醜くとも、最後は美しくありたいのだ。
花火