埋葬したお仕舞いの言葉

雪水 雪技

埋葬したお仕舞いの言葉

守るものは何か

もう煤けないように
ここに埋めていきます
多分こうする方が安全だから

かかわりあい
すべて傷つく

かなしみがいつもからみつく

こうして石に刻んでいる
無かったことにしたことを

今もう一度石に刻んでいる

勝手に誰かの傷にならないように
すべてこの手に収めるように

埋葬したお仕舞いの言葉

お仕舞いを埋葬して
締めくくりに祭壇を飾る
それは言葉にはならなかった

あらゆるものへ沈黙した
そうして私は黙殺された

さようならと言った
仕方がないことばかり

行く道に何があるのか
不安ばかりが雲になる

浮かび上がるものは
今より燦然として然るべきで

例えばそれが負け惜しみでも

蜘蛛の糸

エンディングロールにつながる
日々の糸は細くきらめいている

そのためになにをするのか
あれほど明確だったものが
順番にぼやけてしまうほど
世界という光は眩し過ぎて

知らないふりをして
通り過ぎてしまおう

そしてゆっくり擦り減らそう

完全な調和と完璧な破滅

否定するための受容する今

Unknown

一日の終わりにいつも崩れていた
翌日はちがうものが私を演じる
いくつもの崩壊の上に
美しい日の出があった

消えてしまいたいのは
存在なのか心なのか
よくわからない

どうして消失を夢見ているのに
根を張るような深い悲しみが
私を覆っているのだろうか

もうすぐ終わるのは今年だけ

神話の産声

瓶に入れて投げつけた

無重力にぶつけられた

それでも

這い出ることのなかった

混沌は

今も瓶の中で怯えている

勝手気ままな輩が

ビール瓶片手に神話をうたう

深夜の夜明けは調律された音

なにもかも不合理なのに

烏が哭く朝はうつくしい

混沌よ、私を押し流せ

勝手を言いなさるな

不規則な体調でも
支離滅裂な情緒でも
何もかもに懐疑的でも

それでも何かを叫んでいる

難儀な生き物だとわかっている

思い出が枷になるなんて最悪だ

全部全部見なかったから
無敵だった時代は傷だらけ

私は何と話しているのだろう
私は形が欲しいのか失いたいのか

清算も妄想だった本日!

戯れ言

言えないことがたくさんある
まとまらない言葉は
かつて嫌われたから
怖くて何も言えなくなった

「そのままでいい」とか
「自分らしく」とか

ひとつも胸に響かなかった

無条件な肯定と無責任な肯定
その違いについて

抒情は消え失せて
寂寞の感性と荒涼とした心象

どの風景にも私がいない

そう言われた昔がある

私を吐露したくても、まとまらないから詩になった。生きる気力を失ったまま、詠うつづきに求めるカタルシス。伝わらないとわかっている。どうせなら崩壊する今日。頭痛にまかせて酔いをまわして。救いを求めてその手を振り払って、救われないとわかるから完結させなきゃならなかった。全部、自分で。

絞殺

なくなったもの
うせたもの

そういうものの影が
毎日私の首を絞める

そうして、どうしろと、
たとえば、季節の節目に
一つの答えを出さないと

多分その手が消えることはない

そう思うほどに沈んでしまうように

ままならなく出来ているとして

らしさすらまぼろし

形にならないのなら
ここにいられない
形にならないのなら
気づいてもらえない

しかし心の形については
人類の議論は未だに終わらない

何をもって心であるか
体そのものを心と呼ぶか

それにしても
形のない感情に
いつまでも振り回される

それは業であろうか
それが人であろうか

地獄によろしく

多分神様になっても
私は何もしないだろう
人の役に立ったこと
誰かのためになること
それらは全て透明の思い出
今求めてるものは不明のまま
地球にいながら暗黒を漂う

自分を殺して笑って死んだ私

邪魔な私を消して
円満に暮らしてる諸君の
ふかす煙草の味をば知りたい

沈澱することば

沈没したものに安らぎを
幽霊船にやさしさと歌を
成し遂げられなかったこと
私は無かったけれども
どれも形になる頃に
取り上げられてきた

だからこれは恨み節になる
私にとっては鎮魂歌になる

しずめてほしいものがある
忘れさせてほしいものがある

氷塊が溶け出して
湯船はあふれて
私は沈む

船旅

この船に乗って
随分とぼんやり過ごした

景色が滲んでいくのを
額縁に収めてしまいのに

なにひとつ実行できていない

東から変わらず昇るもの
西へ淡々と沈んでいくもの

そう言えばここは球体らしく
最果てに落ちていくこともない

それなら溢れていく思いの
到達点はどこにあるのだろう

つめたいかげ

大きな音が秋の夜に響いている
秋雨の日には蛙は高らかに歌う

間もなく静かな季節が来ること
不安定な夢を未だに見ていて

現実は追いつけないのに
私にひたと、くっつく影が在る

報われなかったことの復讐に
月に光るナイフが私の影を刺す

不可思議な天体の運行
ひとつも作用しない運命

廃棄品

沈澱する思い出を洗い流して
新しいものを入れたくなった
だから居座り続ける思いは
洗い流さないといけない

いつまでもこびりつくような
しつこい思い出の洗い方
検索しても出てこない
洗剤を足して泣いて
涙は何を洗い流すか

これは傷だから洗えないと
気がついた時、全て捨てたくなった

沈黙する自由

起承転結で終わらないから
苦しいがずっと続く気がして
目眩がしたならそのまま目を閉じて

戻らない日々のことは忘れてた
この世に存在しない世界のこと
そればかり考えていたくなる

良いことも悪いことも

それらも無かったことにして
私がいなかったことにして
ずっと瞼の裏に逃げよう

手遅れ

青と緑が混ざり合い日光が注がれて、水槽の中に惑星が生まれた日には、どんなお祝いをしたらいいのだろう。それともそれは祝福ではないのかもしれなくて、だから俯いて泣いていたらいいのかもしれない。誰も正解がわからないまま、水槽に浮かぶ惑星が自転を始めて拙い実験結果を報告する今日。

悪人へ告ぐ

浮遊するのは気体だけではない。意識はつねにぷかぷかと浮かんでいる。不安定な意識の動きに惑わされている。多分めまいを起こす正午には、海に一気に流してしまおう。何が必要で何が不要か、その判断が正しい根拠はどこにもない。
曖昧さを逆手にとってコントロールする人が減りますように。

忘却の季節

季節を間違えて咲く花たちが、皆開き直って歌を歌っている。それはやかましいことであり、秋の虫は抗議する。しかしながら自然とは元来自由なものであり、法律も法則も無くなって、歌いたいだけ歌う今日。お祭りのような賑わいに、気がつかずに歩く人類は、一体何を忘れて来たのでしょう。

消滅

無人駅に置き去りにされた林檎が砂になる頃には、蝉が鳴き止み、私もこの土地と共に風化することでしょう。
一刻も早く忘れてください。
私も全て忘れて何も知らないままに、もう一度青空を見てみたい。やり直したいことなんてない。巻き戻したいことなんてない。無かったことになんてするものか。

埋葬したお仕舞いの言葉

埋葬したお仕舞いの言葉

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-10-13

Copyrighted
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Copyrighted
  1. 守るものは何か
  2. 埋葬したお仕舞いの言葉
  3. 蜘蛛の糸
  4. Unknown
  5. 神話の産声
  6. 勝手を言いなさるな
  7. 戯れ言
  8. そう言われた昔がある
  9. 絞殺
  10. らしさすらまぼろし
  11. 地獄によろしく
  12. 沈澱することば
  13. 船旅
  14. つめたいかげ
  15. 廃棄品
  16. 沈黙する自由
  17. 手遅れ
  18. 悪人へ告ぐ
  19. 忘却の季節
  20. 消滅