つまりお前の顔面を殴りたいってことだよ

そこそこなラインの下ネタあり。


それは深夜に鳴り響いた1本の電話から始まった。

「眠れない」
「……は?」
「寝れないんだって何度も言わせないでよ」

時刻は草木とお花屋さんは起きてるかもしれない午前4時、深夜と言うより早朝に近いかもしれない。

「寝れないからって電話よこすかふつー?」
「嫌がらせに決まってるでしょ。」
「切るぞ」
「通話切ったら家押しかけてインターホン鳴らしまくるからね」
「押し売り業者かよこわ」

おえ、と男は手に持つスマートフォンをつまみ上げスピーカーにするとテーブルの上に置いた。ゲーミングチェアに腰掛けると慣れた手つきで目の前のPCを弄り出す。

「んでー、タダで付き合わせるワケじゃねえよなぁ?対価寄越せよ」
「virtualアイドルまじハピ★ふぁんたじあ!のライブチケットでよろし?」
「ライブはガキどもいるからムリ」
「えぇー……なら100体限定フィギュアは?主人公3人組3セットのやつ」
「乗った。てかなんで俺の趣味知ってんの、きも」
「今更…????」

女はスマートフォンの向こう側でスペキャ顔になった。

「つーか俺じゃなくて愛しのダーリンにでもかけりゃあイイじゃん。アイツなら咽び泣くぜ」
「こんな時間帯に起こせないよ馬鹿なの?にいさんには朝までぐっすり眠って欲しいし夜は9時くらいに寝て欲しいの。成長期なんだよ?」
「充分成長してんじゃん。俺と3センチしか違わねえんだよバケモンだろショタコン女が」
「黙れヤリチン粗末な逸物切り取って口に突っ込んでやろうか。ショタコンじゃねえし私はにいさんだから好きなの!!!女なら誰でもいい麻里くんと一緒にしないで!」
「俺は!!!!!俺好みの女としかヤリませんー!!!勘違いすんなよブス」
「勘違いしてんのはお前の方だろ昔っから私がいいなーって思った子に唾つけやがって死ね、もがき苦しんで死ね、地獄の釜で茹でられて死ね、兄さんだけは渡さねえからな」
「野郎に興味ねえわ」

この男、無駄に顔が良いのである。中性的な、男か女かと言われれば女よりの美しい顔立ちをした男は大層性格が悪かった。おまけに下の締りも悪かった。寄ってくる女が自身の好みなら迷うこと無く頂く。紛うことなきドクズなオトコは、女が淡い恋心(笑)を抱いた相手すら虜にし、使い捨てて行った。恨まれるのも当然である。

「大体さあ、前世あたりから思ってたんだけどどうしてそこまで屑なの?どうしたら天然サイコパスになるの?神様って理不尽でヤバいのばかりなのは知ってるけども、群を抜いて君がナンバーワンだよ?歩く天災だよ。君一人で地球簡単に滅ぶんだけどどうしてくれるの?」
「知らねえよお前らが勝手にやってんだろうが。なんも仕組んでねえし、んな何百年何千年単位で昔のコト覚えてろって方が無理だろ、万能じゃねーんだよ神サマも分かれよバカが。脳みそ足りてねえんじゃん?脳足りんかよウケる」

低俗な罵りあいを止める猛者はいない。現在の時刻は午前4時15分、寝れない女と無理矢理起された男は深夜テンションになっていた。ドラムロールが鳴りっぱなしの脳内。最初からクライマックスである。止まることを知らない2名の口喧嘩は日が完全に登るまで続き、女は不眠で仕事へ、男も急用がはいり目の下にクマをこさえたまま出掛ける羽目になった。

つまりお前の顔面を殴りたいってことだよ

つまりお前の顔面を殴りたいってことだよ

  • 小説
  • 掌編
  • コメディ
  • 青年向け
更新日
登録日
2021-10-13

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