陽気な唄達
利害の量産
ビール瓶で頭を殴られた衝撃は日常的だ。そうじゃない連中は甘えた環境にいるだけだ。君は所詮、自分の環境の微温湯に浸かる、思考だけ永遠に子どものままの顔にシワが重ねられた大人だ。小難しくてメルヘンチックな言葉を羅列していて、日に焼けたこともない肉体。周りの顔を伺って生きている、それが『安心』で『正解』だと『思っている』。理由は簡単だ。みんながそうしているから。『みんな』って、笑ってしまうよね。君は何を追いかけているんだい?
「綺麗な女に綺麗な花束を渡したんだ」
原っぱの丘でカエル先生は曲がった杖を振り回しながら言った。
それで君はカエル先生の横で「それで、女の人はなんて言ったの?」と言う。カエル先生は女の口調で「花束? ワタシが好きなのは、札束よ」と答えた。
「そもそもカエルが花束を持つのがサマになっていない」
君はあくびをして言った。
「なに。サマになる瞬間ってものはその対象に花束を受け入れられた時だけさ。でなければ、おとぎ話の王子様だって振られてしまえば私と同じだ。受け入れられたら炊飯器でもモグラでも絵になる」
「そう言うものかね」
「そう言うものさ」
君は転がっている空き缶を蹴り上げて3世紀前に製造されたゼンマイ時計が無理やりスマートウォッチに脳みそを移植された声で叫んだ。
「どうしたんだい? いきなり? 落ち着きがない猿みたいな声を出して。私は唐突に叫ぶ輩はあまり好きじゃないんだ」
カエル先生は困った表情で言った。
「惑星は滅ぶ時に、声を上げて泣き叫ぶか? 生きる葛藤で死ぬ声を語るか? それが何故、糸くずの一部たちが苦しみを受けて後悔の念で生きるのか? 先生、このカードしか持っていない自分自身に対して怒りしかないのですよ」
君の青い瞳を見つめてカエル先生は言った。
「地を這うものにしか与えられんのだ」
砕け散ったガラスを知らないのだ。また明日も君の頭はビール瓶で殴られる。
手にあるカードは全てクズ。
陽気な唄達