夢の夢
ずっと同じ夢を何回も何回も見ている。
子どもの頃からずっと...。
はじまり。
海沿いの道をずいぶん走った。
夕陽がキレイ。
車を止めて 茂みをこえていくと門が見える。
すごい!お城?
なっ、何かいる
犬?
1.2.3.4.5.6…
そりのよーに鎖に繋がれている。
吠えないし、おとなしい。
ちょっと撫でてみるが、じっとしている。
人懐っこい目が愛らしい。
誰かいる。
『すみません…この子たちは?』
男が感情のない声で不機嫌そうにこたえる。
「捨てられた犬さ。
処分されるより ずっとマシだよ」
『… 。 』
あれは、入口?
なんか見たことあるわ。
真実の口だっけ。
いや、似てるけど違う。
みんな口の中に手を入れて中に消えていく。
私の番がまわってきた。
なんで?いつの間にか手にメダルを握ってる。
同じ顔が彫られている。
いつから持っていたのかしらん。
後ろの男がじろじろ見ながら
早口で
「その鍵を口の中に入れるんですよ」
鍵なんだ…。
そうっと口の中に手を入れる。
メダルをはめ込むところがあるようだ。
ん?
入らない。
なんで?
茂みの中からお城の執事のような男がでできた。
(執事ではないかもしれない。ホテルのベルボーイのような人なのかな)
丁寧な口調で
「鍵をお見せいただけますか?」
差し出すと男は、残念そうに
「これは本日の鍵では、ございません。従ってお嬢様は参加できかねます。申し訳ございません。」
丁寧におじきをして また、茂みの中に消えていった。
後ろに並んでいた男も、私のことなど気にせず 口に手を入れ当然のように城の中に消えていった。
いつの間にか 夜の帳につつまれていた。
気づけば、私は取り残され、扉の前に佇んでいた。
繋がれた犬たちが気の毒そうに私を見つめていた。
途方に暮れていると
目の前が真っ暗になったところまで覚えている…。
どれくらい時間が過ぎたの?
どこだろう?
誰かの声がする…
「昨日は3つ見つけたよ。
あちこちにあるな。早く何とかしなくては…。」
「シッ!」
doorが開いた。
「目が醒めたんだね。
とりあえず、服を着替えてくれる?
その服では目立ちすぎるからね。(笑)」
碧の瞳をしたその人の声は優しく響いた。
彼が用意してくれた服は男の子のもののようだった。
確かに私が身につけていた洋服はどこか彼らのものとは違っていた。
「やっと見つけたよ
長かった、もう逢えないかと思っていたよ」
碧の瞳の彼かギュッと抱きしめた。
『ごめんなさい。よくわからない。
ここはどこ?
どうやって来たのかも覚えてないわ…。』
「飲むと落ち着くよ」
赤毛の男性が飲み物を差し出した。
怪訝そうな私に
「大丈夫。(笑)
毒は入ってないさ。温まるよ。
そうだな、 君の世界で言えば …cocoaのようものかな」
手渡されたカップを受けとり
そおっと口に含むと 甘くて温かい。
身体中の緊張が溶けていく。
ココアに近いけど
ん…、ちょっと違うかな。
『ありがと…』
「鍵をすり替えたのは、僕だよ。
中に入ったら 終わりだからね。
ホントあぶなかったよ。」
楽しそうに 彼が話した。
「お手柄だな。」
碧の瞳の彼が赤毛の彼の頭をクシャシャと撫でた。
大人っぽく見えるけど、笑顔にはまだ、幼さが残っている。
「あの....、何が終わりなの?」
『知らないで並んでたの?』
赤毛の彼は びっくりした目で私を見た。
『少しずつ思い出せばいいさ...』
碧の瞳の彼の声が遠ざかっていく。
*******
ピッピッピッ...
スマホのアラームが鳴っている。
クゥーンクゥーン ...
散歩に連れて行ってもらおうとハナの甘えた鳴き声がする。
ふぅ~
大きく息をする。
アラームを止めて
時間を見ると6時を過ぎたところだ。
メールは...来てないな
着信がある。
また、優からだわ
電話は出ないって 言ったのに。
夢...
リアルだったな。
私病んでるのかもしれない。
カウンセリングでもうける?
もうちょい 思い出したいけど
これ以上ベッドにいると遅刻だわ。
一気に現実に引き戻された。
息をふきかえすよーに
もう一度 大きく息を吸った。
夢のことが頭から離れない。
初めて見た夢なのか、ずっと前から知っていた気もする。
碧の瞳が懐かしくて セツナイ。
あの世界が本当なの?戻る事が出来るのだろうか。
私を探してくれてるのだろうか...
夢の夢