俎板の上の、
エクレアの、カスタードクリームのやわらかさにうっとりしているあいだに、ちょっとだけ、きみのことをわすれた。
いいんだよ、たぶん、わすれたほうが、このまま、もう、一生おもいださなければいいのに。エクレアをたべおわってしまうと、すぐに、ぼくのからだのなかを、きみが支配する。形。輪郭。体温。ふくらむ。
おわるね。
あらゆるものが、おわっていく。
そして、おわっていくそばから、はじまっていく。
おわりと、はじまりは、常にセットである。
一心同体。
表裏一体。
からだのなかから、きみに、なでられる感覚。骨をはう、きみの指。臓器にふれる、きみの指。血管や神経をかすめる、きみの指。くすぐったいほどにやさしくて、ひどい。しにそうなくらい、くるしいはずなのに、ばかになりそうなくらい、きもちいい。
まよなか。
ベッドのうえで、きみに植えつけられた快感を吐き出すみたいに、泣く。まどのそとを、蝶がとんでいる。
俎板の上の、