かんせいのていり

雪水 雪技

かんせいのていり

綿毛の記憶

探していた
黄色の光たち
たんぽぽのような
やわらかなアルバム
色あせてゆく記憶たち

その中にこれからのための素材
あの日言えなかった文字列たち

混濁としていて
もう見分けがつかない

何かの一部になっていても
そこで息をしているのなら

戻ってきて欲しいと
おひさまへねがった

片想い

冬に咲く桜は
知覚できないほどに
透明に近い色をしている

雪の結晶と桜たちは
かつて一緒に咲いていた

積もる雪に桜は自身の存在を
凍える季節の中に保てなかった

ただの一瞬だとしても
同じ季節を生きたかった

春が来て落とした小さな願い事

エンドレス

どこにもいられないほど
具合の悪い日に逃げ込める
私だけの温かな住処があった

この世の理を無視して
誰の声も聞かないで
我が身をあたためる

ここで何度も再生しよう
新しい火をおこして
何度もあたためよう

卵にもどる鳥たち
小さくなる生物たち
海面はかさを増して
私をもう一度飲み込んで

逃亡者

帰り道がわからない
御伽噺のこどもたち
帰らないことを決めた
童話に生きた動物たち

それぞれが本から抜け出して
記憶のお話はあやふやになる

素敵なことなんてひとつもない
冒険になんて出掛けたりしない

まっさらなページには
誰もインクを落とさない

断捨離

全部を知りたいということは
何も考えたくないということ

情報だけが詰まった重たい鞄
全部を知れたのなら自由だと
信じていた時代には
次の駅でお別れする

鞄は置き去りにして
何も知らないまま
出掛けてみる今日

重たいニュースも
ここだけの話も
全部いらない

卒業文集

五時間目に考えた言い訳は
六時間目には真実に変わる

夕暮れの光を浴びていた
今はもう捨てられた自転車

どこに行ったのか忘れたけれど
多分いつも心はそこにいなかった

そうして本当に遠くまで来て
どうしても繋がらない点と点

整理のつかないまま
流されないつもりで
流れ着いていた今日

祈願

ばらけていった文字は
空に溶けて消えていく
いつか誰かに降るために
形を嫌って囲いを嫌って

感覚だけを信じている
情緒だけを信じている

他人の尺度に苦しめられる
そんな自分に溺れていた時代

いつか全てが弾けて
いつか視界が晴れて

言の葉の開元の日に
想念のお祭りの日に

起承転結のためにころされる感情

弱る夢を見たのか
弱るから見る夢なのか

いつもわからないまま

うなされている私を見る
泣いたことは本当になる

つらいことがあぶり出される

非科学的で荒唐無稽なものを
私はいつも求めている

現実は厳粛な顔をして
私を見ているものだから

ここを締めるための
折衷案な展開なんていらない

主張につぶされる

つまらない話のつづき
惑星の上で聞かされる
多分、全部、妄想だけど

この世にあるものは
全て曖昧なものだから

しっかりと繋がれています
その立て看板に惑わされて

信じなければ破綻する
ずいぶんと危険な現実

鈍感か繊細の両極端な選択肢

全部が厭ならどうしよう

怯えるものへ

しがみつく先が同情でも孤独でも
いっこの価値観に囚われた日には

背景も風景も気の抜けたものになる

描き込んで欲しいものに
インクは使われないから
今日は落ち込み泣いている

空白が増えてくことに恐怖する心

それは悪い事ではありません

漂流する古代史

着いた先で暮らす
そうやって流れる
意識が認知するのは
自分という存在だけ

海の上から湖の底まで
古代の魚と旅をする

紀元前を歩いていた
知らない生き物たち
食べられるかどうか
メニュー表みたいに
見つめていた

言葉が生まれる前から
意思疎通は出来ていた
知らない誰かと通じていた

インスタントカメラとタイムマシーン

うなされる今朝
外に這い出たら
未来人に会った

インスタントカメラの中に
パラレルワールドの思い出
現像するために私の夢から
今朝は飛び出したらしい

「迷惑です」

そんなことも言えないから
タイムマシーンは嫌いだった

旧時代的だと知っているから
宇宙になんか行きたくなかった

使い古しのディストピア

破綻や絶望は使い古されている
多分それは私のものじゃない

そればかりでもう飽きていた

一周では足りないから
何周かしてみたとして

結論として出されたものは
それ以上に進むことはない

膨らんでも破裂しないこと
落下も上昇も同じであること

何にも着地しないものを
大義も何も無いものを

悪より酷いものへ

もう何も克服しない

変化せよも変化するなも
全部聞かないことにする

環境だけが私を変える
他に私は変えられない

なぞなぞみたいな人生が嫌だ
人の出すクイズは大嫌いだった

だから全部空欄にして返す

決まった答えに導かれるのは
とても嫌なことだった

都合のいい言葉は耳障りだった

仲良しで囲われるな

お揃いはわかりやすい束縛
可愛らしいものに包んで
また感情は誤魔化される

決定打を待ち続けるのは
悪者になりたくなかったから

いらないものは全て捨てた
思いが込もってるものは
苦手だったから

いつからか悪人でかまわなかった

しがらみが怖かった
依存されることが怖かった

退屈にしんでいったものへ

日向に群れた鳥たちが
歩く私を見守っていた
そちら側にいたかった
いつかの日差しを思い出す

水溜りが深過ぎるから
時間をかけて道を進んだ
出来上がる波紋が綺麗だから
ずっと着かなければいいと思ってた

つまらない時間は息が出来ない
全てが停止するなかで
時計しか動かなかった

あてにならないもの

群れに帰れない鳥が飛んだ日
電波塔を見上げるペンギンは
空を飛ぶことを祈りはしない

流れ着いたままにしている大陸

後悔と口惜しさが
氷と共に溶けることを
祈るだけの冷たい夜明け

海が満ちていく衛星の裏

同じつらさはこの世に無い

見せかけの天秤を倒して

誰のためにもならないもの

群れに帰れない鳥が飛んだ日
電波塔を見上げるペンギンは
空を飛ぶことを祈りはしない

流れ着いたままにしている大陸

後悔と口惜しさが
氷と共に溶けることを
祈るだけの冷たい夜明け

海が満ちていく衛星の裏

同じつらさはこの世に無い

見せかけの天秤を倒して

最悪なもの

悪夢に滲むもの
覚えたくないもの

涙を流している
それが夢なのか
それが現実なのか
わからないまま金縛り

何かの罰なのか
私からのSOSなのか
わからないまま最悪の展開

恐怖と不安と悔恨のカクテル
酔いは夢から覚めても醒めない

悪夢は現実を蝕む
酔いは心を蝕む

逃げることもできないまま

かんせいのていり

薄くなる道のり
いつか求めた長さ
数字にされる悲しさ

次に求めるものは
提示されることもなく
自分で問いからつくる

せんなきこと多く
さみしきこと多く
ひとつの事象は複雑にして

あの定理より難しくなる
しかし天才は私を解放するだろう

たったひとつのひらめきで

かんせいのていり

かんせいのていり

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-10-06

Copyrighted
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Copyrighted
  1. 綿毛の記憶
  2. 片想い
  3. エンドレス
  4. 逃亡者
  5. 断捨離
  6. 卒業文集
  7. 祈願
  8. 起承転結のためにころされる感情
  9. 主張につぶされる
  10. 怯えるものへ
  11. 漂流する古代史
  12. インスタントカメラとタイムマシーン
  13. 使い古しのディストピア
  14. 悪より酷いものへ
  15. 仲良しで囲われるな
  16. 退屈にしんでいったものへ
  17. あてにならないもの
  18. 誰のためにもならないもの
  19. 最悪なもの
  20. かんせいのていり