薄 命 光 線

雪水 雪技

薄 命 光 線

隠された蒼天について

厚い雲の向こうに
変わらず青い空が在る

それを不思議に思っていた

いつか飛行機に乗っていた
いつか熱情だけで飛んでいた

厚い雲の上にて
ただ浮かれていた

過ぎ去った日々に
残るものが重くて

日々の視界は不良のまま

曇天の下
雨に濡らした羽根
持て余して暗い部屋

薄 命 光 線

何も起こらぬ平穏の道で
私はゆっくりと壊れていく
誰にも気付かれることもなく

私の時計、歯車、機関、
何もかも、ゆっくりと、
狂っていくのであった…

誰にも何も言うでもなく
誰かのせいにするでもなく

私は私の破壊と破滅を
我が子のように抱いて
雲間から光と一緒に
地上へ落下していく

参照

本棚の前で
俯いて居る
文字列追って
探しているフリ

暗い部屋の小さな本棚
かつて夢を見ていた本棚

夢なら全て売り捌いた

がらんとして丁度いい
もう何もつめることは無い

だから見失うことも無い

指針

なりかわれないもの
そういうものをなぞる
とおいとおいあこがれ

ゆうひにてらされて
ひかるしんろきぼう

たしかにあのころは
きぼうがひかっていた

いまものこるもの
それがあるのなら

さいごのししんは
すうじではなかった

光線

光が強くなると
世界はまるみを帯びる

角が曖昧になり
人々の距離も曖昧になる

強過ぎた光は
影を追いかける

私は何もしてあげられない

強くなる光と
明る過ぎる今日
暗闇を探す私がいる

煙に映る季節

あかいあかい着物の
しろくてまるい手が
お山を包んで秋になる

みなみな、実るまま
みなみな、染まるまま

刈り取られたものたちが
祝杯をあげて煙をあげる

黄金色の季節に
こうばしい匂い
季節に包まれて
いよいよ深まる

進めない本日の空に

ふらふらしてる朝の電信柱
みんなみんな心細くて列を成す

朝焼け夕焼け消えていく
電灯はさみしく咲いている

トンボの眼というのは
あんなにもよく視えて
どれだけの心象を映すのでしょう

薄明かりに私の影はここに居座る

どこにもいたくなくなる

空高くトンボが飛んでいく

乱反射する朝日

神様になりたかったらしくて
散らばった意識たちが
戻り始めるのは明け方

元旦の音がして裸足で飛び出した

忙しい一生の果てに
慌ただしい生活の果てに

このあと崩れる砂の城を見る

その時、微笑むことはできるのか

その時、微笑むことはできるのか

港町のたそがれ

手紙にした
思いの切れ端を
影絵に渡した後に
いくつかの質問がある

私の旅路について語るとき

誰かのギターがうたいだす

そうです、寂しい旅でした
しかし、辛くはありません

泣き出した地図は
雨に晒されて歪んでゆく

まるい星の上で
何にたよるのでしょう

船は出ました

私は残ります

お仕舞い

切り絵になったお遊びが
枯葉と一緒に舞っている
それは新しい踊りでした
四季はいつも流行を変える

子供の声は秋晴れに吸い込まれる

何も無い部屋の中で
私は形骸化した夢について語る

それはもうお仕舞いです

耳鳴りがして星とまわる
金曜日の雨乞いに混ざる
今は日付を超えて遊んでる

約束の光芒

鐘の音は感傷をあらわす
それはだれのものでしょう

天にいたみはあらず
地上のかなしみすくって
あの水柱が誰かのかわりに
おおきなこえでないている

虹をむすんで光のやくそく

なんかい
ないても
よかった

それなら
おもいきり
ぶつかるように

破壊する日々

心の棚に重ねたガラスの杯 

全て壊すために生きていた
いらないものだと思っていた

心の無い日々に身を投げて
私は弱い私を砕いていった

そうすれば照らされると思った

代償を先に払えば
与えられると思っていた

安心が欲しかった
笑顔が欲しかった

壊れやすいものは
いらなかった日々へ

飲み干したものについて

注がれた海の表面張力
舶来のお酒は琥珀色をしている

飲み干したものは毒杯だった
けれども私は死ななかった
毒だと信じていなかった

弾力が切先を曲げていく
物理法則に抗う文字の群れ

物語が破綻したときには
海は溢れて毒はまわりだす

全てが嫌になる日には
そんな言い訳を考えよう

斥力 II

寂しい論法に取り憑かれ
皆皆お道化に勤しんでいる

自分以外の一切に無関心であれ

何も見通さぬ白塗りの下
何通りの悲しみを生むことか

つながり合うものは断ち切る
それはやさしさであった

人類最初のやさしさは
その手を払うことだったか

悲しい論法が体を蝕む
悲観の悲願に心は浸される

西からの風を待っていた

私の心にあるエウロパの
うつくしき街並みは
雨が色彩を溶かした

私の心にあるエウロパの
うつくしき街並みには
青い海と透き通る歌声

私の心にあるエウロパの
幾多の奇跡と錬金術の跡
宝石の装丁に黄金の秘密

私の心にあるエウロパの
躍動する芸術は風に乗り
極東へと流れて歓声響く

こがねいろの季節

山吹色のノートに綴る
緑色のインクが落ちる

秋の山々見晴らして
山頂にいます神様へ
こちらからの煙のお手紙

読んでおりますでしょうか

それとも今年のこがねいろ
収穫祭に遊んでおりますか

豊作の踊りに横切る蜻蛉
白い天女の音楽が鳴って
赤赤としたお山はわらう

シュウ活の記憶

無人の駅の軒からのぞいた
いつかの青空に何をかいたか
覚えているのは夢を見る器官です

さまざまなことを
白い紙へ書いてみて
聞いたり見たりしたことを
うまい具合に並べてみまして

それを私と申して提出しました

それはあの土地に過ごした
四回目の秋のことでした

空振りすら気分良くして

語られる女の歌

雨に歌う知らない女
電灯の下コオロギと
明るい声で歌ってる

冷たい雨に震えながら
不安定な音程のままに
ただただ朝を歌ってる

耳障りと思いながら
傘をさして見つめてる私

ビニール傘に当たる雨粒の音

女の音程とズレていく
目眩と眠気に襲われて

朝が来る頃には、

あの女に夢中だった

ノートの記憶

落ちていった雫が
土に受け入れられ
静かに地下へ沈む

不純物を除いて
きれいになってゆく
自然の螺旋図を習う

午後のチャイム

ノートの端には
それぞれの思考
あるいは願い事

いつか忘れられること
でも忘れてはいけないこと

隙間に書き記した
かけがえのないほんとう

見出し文にのまれていく

新聞に今日見た夢が取り上げられる
電車の中ではみんなが読んでいる

予知夢なんて知れたものだった

水晶玉にあれこれ聞いても
明日のことは見えてこない

散らばった思考が錯綜するだけ

色々な不要物が頭に入り込む
だから悪夢ばかり見ている

自分の気持ちを見失って
他人の気持ちが占拠する

薄 命 光 線

薄 命 光 線

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-10-03

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. 隠された蒼天について
  2. 薄 命 光 線
  3. 参照
  4. 指針
  5. 光線
  6. 煙に映る季節
  7. 進めない本日の空に
  8. 乱反射する朝日
  9. 港町のたそがれ
  10. お仕舞い
  11. 約束の光芒
  12. 破壊する日々
  13. 飲み干したものについて
  14. 斥力 II
  15. 西からの風を待っていた
  16. こがねいろの季節
  17. シュウ活の記憶
  18. 語られる女の歌
  19. ノートの記憶
  20. 見出し文にのまれていく