【声劇台本 男2女1】 ドンペリの泡よ消えないで ※R18

メイロラ

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舞台がホストクラブとのことで、演者さんは18歳以上推奨とさせていただきます。

0:「ドンペリの泡よ消えないで」

0:(『 』内はモノローグです)

ユキミ:『私を夢から覚ますのはやめてください。私には他になにもないから』

0:(ホストクラブ 店内)

レン:いくら持ってきた?

ユキミ:ごめん、30万くらいしか……

レン:なんで十分じゃない! ありがとう、うれしいよ。

ユキミ:え、本当? だって少ない……

レン:300万でしょ? それだけあれば十分だよ!

ユキミ:あの、レン? ……ごめん。

レン:どのボトル入れよっか? 嬉しいなあ、さすがユキミだなあ。

ユキミ:ごめん 今日は本当に30万しかないの。

レン:え、だから300万でしょ?

ユキミ:ごめん。

レン:なんで謝るの? 300万あるよね。

ユキミ:今日は……どうしても……

レン:(ため息)

ユキミ:ごめん、レンに会いたくて……無理だよ、もうがんばれない。

レン:なんで?

ユキミ:だって、私レンのためにがんばってきたよね。せめて、もうちょっと一緒にいて欲しいなって。最近席についてもすぐどっか行っちゃって。……もう、無理だよ。

レン:はぁ……ユキミならわかってると思ったのに。あのさ、蘭(ラン)と瑛斗(エイト)が太いお客さん見つけて、ほんのちょっとでも油断するとランキングから落とされるの、俺が。知ってるよね?

ユキミ:うん……

レン:今、そんな我儘聞いている余裕俺にないの。わからない?

ユキミ:ごめん。

レン:ずっとユキミの席に着いてもいいよ? でも、俺の他の客が離れていくよね? 俺がランキング外になってさ、ナンバースリーだったレンもついに落ち目だなとか言われて
それでユキミは嬉しいんだ? ……ナンバーワンを目指してる俺を好きなんだと思ってた。

ユキミ:ちがうよ。

レン:前にも言ったけど、お金はどうにかなるんだよ。ユキミさえその気なら。うちの店は売掛(うりかけ)はやってないけど、俺の知り合いでお金貸してくれる人いるから。

ユキミ:ごめん、それだけは……!

レン:後で返せばいいじゃん。

ユキミ:それだけは許して、お願い。

レン:……(ため息)今日はどうしても30万しかないの?

ユキミ:うん。

レン:次はちゃんと用意してくれる? こないだ蘭の客が300万のボトル入れたの知ってるよね?

ユキミ:うん、わかった。なんとかする。

レン:うん、がんばって。ユキミは俺のエースなんだから。

ユキミ:うん。

レン:がんばれるよね?

ユキミ:うん……

レン:よし、約束。

ユキミ:うん……

レン:そんな顔するなって。がんばってくれてナンバーワンになれたらもっと時間取れるし。

ユキミ:うん……

レン:よし、じゃあ俺はもう行くけど、ヘルプに失礼のないようにね?

ユキミ:うん……

レン:じゃ、頼むぞナオト。

ナオト:わかりました、いってらっしゃいレンさん。

0:(レン去る)

ナオト:大丈夫ですか?

ユキミ:なにが?

ナオト:いや、レンさんの態度、ちょっと冷たいなって。

ユキミ:うん、もう慣れてるから平気。

ナオト:でも、もうレンさんに、一千万近く貢いでますよね? ユキミさん派遣社員でしょ?

ユキミ:ううん、辞めて……レンがもっと稼げる仕事を紹介してくれたから……大丈夫。

ナオト:え、それって、まさか……

ユキミ:いいの。

ナオト:良くないですよ! レンさん……いくらなんでも。

ユキミ:レンのこと悪く言わないで。

ナオト:でも……

ユキミ:いいの……そんなことより飲んで? 30万分、適当に。

ナオト:そんなにレンさんのことが好きなんですか?

ユキミ:好きって言うか……応援したいの。私の代わりにレンが輝いてくれればそれでいいから。

ナオト:そういうものですか? 俺はまだホストになりたてで、そんな風には思えないです。自分の為にお金を使ってくれる大事なお客さんが不幸になるようなこと、俺にはできないなって。

ユキミ:違うよ! 私が好きでやってることだし、レンは私を幸せにしてくれてるの。ここに来るのだけが、私の生きがいだし。

ナオト:そうは見えないですけど……

ユキミ:ね、飲んでナオト君! レンのために。

ユキミ:『私は普通の派遣社員だった。まさかホストにハマるなんて想像もしてなかった。
学生時代の友達グループで、一度くらいホストクラブに行ってみようって話になって。軽いノリで付いて言った。
初めて来たホストクラブの第一印象は「音がうるさい」だった。
初回限定五千円の「新規」である私たちの席に、次々にホスト達がやってきて自己紹介していく。
派手な髪形と独特の服装に身を固め、あの手この手でアピールしてくる彼らに、正直、嫌悪感しか抱けなかった。
他の友達は適当に話の合うホストを見つけて、盛り上がり始めたけど、人と話すことが得意じゃない私は、なんだかついていけずに、一人でポツンとグラスを抱えていた。
「早く帰りたい」そう思いながら』

ナオト:すみません、ユキミさん、でしたよね?

ユキミ:はい、えっと。

ナオト:あ、俺はナオトって言います。いや、俺のことはよくて。今から、ナンバースリーのレンさん来るそうなんで。隣開けてもらっていいですか?

ユキミ:え? ナンバースリー?

ナオト:レンさんすごい人なんですよ。この店のナンバースリーで表に写真も出てるし。そのレンさんがですね、なんかユキミさんと話したいって。……あ、レンさん、どうぞ。

レン:はじめまして。ユキミちゃん、って呼んでいい? 座っていいかな?

ユキミ:『突然現れたレンは、他のホストとは何かが違っていた。銀色に染められた髪は色落ちもなく地毛のように似合っていて、シンプルなグレーのスーツに包まれた体は細く締まっていた。
口元は笑っているのに、ベビーブルーの瞳は冷たく、鋭く、私の目をまっすぐに捕らえていた。
心の奥まで見透かされそうな心地がして、思わず目線を逸らした』

ユキミ:あ、はい……

レン:よいしょっと。あのさ、さっきから見てたんだけどさ、すっごく、つまらなそうだよね。

ユキミ:え?

レン:ホストクラブなんてくだらない! 私とは合わないわ! って感じ?

ユキミ:そんな、つもりじゃ。

レン:その気持ちもわかるけどさ、俺たち命がけでやってるの。馬鹿にされると悔しいんだよね。

ユキミ:えっと……

レン:それにね、俺は、ここに来たお客さんにはみんな笑顔になって帰って欲しいの。つまんなかった! お金無駄にした!って思われるのが一番嫌い。だから、俺がユキミちゃんを楽しませに来たの。

ユキミ:はあ……

レン:こっち見て?

ユキミ:『うつむいていた顔を上げ、一瞬だけレンの顔を見る。カラーコンタクトなのだろう、ベビーブルーの瞳と目が合い、私はすぐにまたうつむいてしまう』

ユキミ:……

レン:俺のこと嫌い?

ユキミ:え?

レン:俺のことタイプじゃないならそう言って、ユキミちゃんの好みのホストを俺が責任もって席につける。どう?

ユキミ:えっと……

レン:ちゃんと言ってよ。

ユキミ:わかりません。

レン:あーそうやって逃げるんだ。どうせここに来たのも、友達に誘われて断れずにとかなんでしょ? そうやってずっと生きていくの? それって楽しい? 嫌なものは嫌、欲しいものは欲しい、って言わないと手に入らないよ。

ユキミ:……でも。

レン:ここに来たのはいいチャンスだと思うよ。それをつかむ勇気を出せるかどうか。今なら俺が、背中押してあげる。

ユキミ:どういう意味ですか?

レン:殻を破るための練習。選んでよ。俺か、他のホストか。

ユキミ:え……

レン:ほら、どっち、俺がいい? 俺以外がいい? 俺以外がいいなら、俺はもう二度とユキミちゃんに近づかないから安心して。さ、どっち?

ユキミ:……がいいです。

レン:なに、もっと大きな声で!

ユキミ:レンさんが、いいです。

レン:(笑う)やればできるじゃん。

ユキミ:『レンはそう言って私の頭を撫でた。意外にも、少年のように顔をくしゃくしゃにして笑うその笑顔に、私は釘付けになった』

レン:ユキミちゃんは、自分に自信がなさそうだよね? そんな顔してる。

ユキミ:そうですね、ないです。

レン:俺が自信をつけさせてやろうか? 次の日曜14時から空いてる?

ユキミ:え?

レン:デートしよ? それとも彼氏いるの?

ユキミ:いません、けど。

レン:じゃあ決まり。約束。

ユキミ:『思えば最初の頃は、レンはよくプライベートな時間を割いて私と会ってくれた。
その頻度は段々少なくなり、反比例するように、私がお店に通う回数は増えていった。
レンの為に使うお金も、少しずつ増えていき、どんどん金銭感覚はマヒしていった。
最初は、一回につき1万円くらいだったのに、半年経つ頃には、10万円がはした金にしか見えなくなっていた。
親とも友達とも縁が切れ。仕事も失った。
自分でもふと冷静になって、何をしているんだろうと思うことがある。
……それでもやめられない』

0:(ホストクラブ 店内)

レン:いくら持ってきた?

ユキミ:ごめん、45万くらい……

レン:……なるほどね。

ユキミ:ごめん、最近、あんまりお客さん来なくて。お店の人にお願いはしてるんだけど……。

レン:いいよ。いつもありがとう。

ユキミ:え? レン? ううん、そんな……でも、そう言ってもらえると嬉しい。

レン:俺のこと好き?

ユキミ:え、うん……憧れてる、かな。頑張ってるところとか、諦めないところとか……すごいなって思うから。

レン:ありがとう、俺も好きだよ。いつも一番、俺を応援してくれてるのは、ユキミだって思ってる。

ユキミ:……

レン:実は、ユキミに相談があって。

ユキミ:なに?

レン:変な風に取らない?

ユキミ:それは、聞いてみないと、わからないけど。

レン:……ほんと、変な風に取って欲しくないんだけど。出稼ぎしない?

ユキミ:え?

レン:世界規模の大きなスポーツの大会あるの知ってるよね? ああいうときってさ、めちゃくちゃ儲かるんだよね、出稼ぎすると。

ユキミ:でも、結構遠いし……どれくらいの期間?

レン:2か月くらいかな?

ユキミ:え、そんなに……?

レン:いや?

ユキミ:ちょっとそれは怖い……どんなところか、どんなお客さんを相手にするのか分からないし。

レン:俺の知り合いがやってる店だから大丈夫。

ユキミ:それに、2か月もレンと会えないなんて……無理。

レン:さみしい?

ユキミ:うん……

レン:じゃあさ、俺の画像いっぱい送ってあげる。寂しくないように。

ユキミ:でも……

レン:メールもするから。

ユキミ:……でも。

レン:でも?

ユキミ:最近、メールだけだよね。いつもメールだけ……多分、他の女の子にも同じ文面送ってるよね?

レン:は?

ユキミ:ごめん。

レン:嫌ならいいよ。俺の魅力が足りなかったってことだし。

ユキミ:そうじゃなくて……

レン:はあ……俺もランキングから転落かな、ま、世代交代ってやつ?

ユキミ:……ごめん。

レン:どうしてもダメ?

ユキミ:ちょっと……怖くて。

レン:こっち来て?

ユキミ:え?

レン:こう

ユキミ:『レンは私を抱きしめた。久しぶりに嗅ぐレンの香水の匂いに、頭の芯がぼうっとしてくる』

レン:ユキミはさ、誰のものなの?

ユキミ:え……?

レン:言ってよ、誰のモノなの?

ユキミ:えっと……

レン:早く。

ユキミ:レンの、ものです。

レン:(笑う)だよねぇ。俺のモノだよねぇ。

ユキミ:うん……

レン:行くって返事していい?

ユキミ:うん……

レン:ありがとう、好きだよ、ユキミ。大丈夫、俺が付いてるから。

ユキミ:うん……あの、一つだけお願いがあるんだけど。

レン:なに?

ユキミ:私がんばる。レンのためにがんばるから。……戻ってきたら、お店じゃなくて、2人だけで過ごしてくれる?

レン:え? うん、わかった。いいよ。

ユキミ:ほんと?

レン:うん、がんばってきてね。俺もがんばるからさ。

ユキミ:うん、がんばる。

ユキミ:『私はレンのために2か月間の出稼ぎに出ることになった。
レンは私に数日に一度メールをくれた。「いくら稼げた?」「お金の管理しっかりしてね」と。
レンにとって私はただの「金づる」私よりお金が大事なんだと改めて思う。
覚悟はしていたけど、慣れない土地での仕事はきつくて。だんだん眠ることも食べることも上手くできないようになって、自分の体が悲鳴を上げているのをときどき感じたけど、そんなことはどうでもいい。
むしろその辛さはレンの為に私が身を削った証に思えて、不思議な嬉しささえ感じていた。
いっぱいお金を稼いで、今までにないくらいレンの為に使ったら、レンはどんな反応をするのか。
私はその景色が見たい一心で、ただただ、がんばった』

『出稼ぎから帰ってきたその日、私はスーツケースを引くその足で、レンのお店に向かった。
その日は、毎月の売り上げを集計する「締め日」でもあり、レンの誕生日でもあった』

ナオト:あ、ユキミさん、お久しぶりです。

ユキミ:ナオトくん……

ナオト:レンさん、ですよね……

ユキミ:『いつもにも増して騒がしい、もはや狂気の塊と化した店内の中心にレンはいた。シャンパンタワーが組まれ、コールする大勢のホストに見せつけるかのように、女の子の肩を抱いていた。
女の子には見覚えがあった。レンの太客(ふときゃく)の一人だ。歓声に包まれて、恥ずかしそうに誇らしげに、うるんだ瞳でレンを見つめている。
私が席に案内されてもレンはしばらく来ることはなく、ヘルプとしてナオト君が付いてくれた』

ナオト:すみません、少し、時間かかるそうです。

ユキミ:うん、大丈夫。いつものことだから。

ナオト:ごめんなさい。

ユキミ:ナオト君のせいじゃないよ。

ナオト:でも……ユキミさん、大丈夫ですか?

ユキミ:なんで?

ナオト:少し痩せましたか? 顔色もあんまり良くないです。

ユキミ:ううん、大丈夫。

ナオト:今日はやめといた方がいいんじゃないですか?

ユキミ:やだ、今日は、レンがナンバーワンになれるかもしれない日でしょ? 

ナオト:そうですけど……そんなにレンさんがいいですか?

ユキミ:え?

ナオト:俺、ユキミさんが心配です。壊れてしまうんじゃないかって。

ユキミ:あ、ありがとう。でも平気だよ。

ナオト:こんなこと言ったら怒られますけど、レンさんの誕生日、今日じゃないですよ。本当は。

ユキミ:知ってる。

ナオト:え、知ってたんですか?

ユキミ:うん、ホストは客に本当の誕生日教えないって聞いたことあったから、だからなんとなくそうだろうなって思ってた。

ナオト:じゃあこれは知ってますか? レンさん彼女いますよ。モデルの。

ユキミ:……

ナオト:すみません、でも、あまりにも見てられなくて。ユキミさんこんなにボロボロになってるのに。

ユキミ:知ってる。

ナオト:え?

ユキミ:知ってるよ、全部。私は何も知らないと思ってるでしょ? 意外とね、よく知ってるの。
レンが私のことを「叩けばお金の出てくるATM」って言ってることも。

ナオト:え、それは……

ユキミ:(笑う)冗談だったんだけど。そっか、本当に言ってるんだ、そういう風に。

ナオト:すみません、あ、じゃなくて、違います! レンさんはユキミさんには感謝してるって言ってました。

ユキミ:いいよ、無理しなくて。

ナオト:それでも、レンさんがいいんですか?

ユキミ:そうだね、私のこと見てくれるのはレンだけだから。

0:(レン、登場)

レン:おつかれ、ユキミ。

ユキミ:レン。久しぶり。

レン:久しぶり。で、ちゃんと持ってきた?

ユキミ:……うん。

レン:よっし! 確か400万ちょいだよね。待って、いつ入れるかこっちでタイミング指示するから、まだ動くなよ。

ユキミ:うん……

レン:いやマジ最悪。ユキミのいない間に、オーナーが「ハルト」って他店のナンバーワンを引き抜いてきてさ。先月、俺ベストスリーから落ちたんだよね。

ユキミ:え? そうだったの?

レン:かなり食らいつきはしたけど。まじ悔しかった。ハルトの奴、他のホストの客何人か取りやがって。今月もほんと油断できない。

ユキミ:そうなんだ……

レン:ま、今月は、エースがいるから負けないけどね。

ユキミ:私のこと?

レン:もちろん。

ユキミ:ありがと。(嬉しそうに笑う)

レン:うん、よろしく……あれ? ユキミ、何飲んでるの?

ユキミ:え? ウーロン茶……

レン:はあ? そんなの売り上げにならないじゃん、お酒飲んでよ。

ユキミ:ちょっと胃が痛くて……酔ったら気持ち悪くなりそうだから。

レン:大丈夫だよ、ホストなんてみんな裏で吐いてるし。自分の体とか気にしてらんないの。ユキミが飲まない分、ヘルプが飲まないといけなくて、俺の顔が立たないのわかるよね?

ユキミ:うん、ごめん。

レン:しっかりしてよ。

ナオト:ちょっと、レンさん、さすがにそれはひどいんじゃないですか? ユキミさんの顔色悪いのわからないんですか?

レン:はあ? お前、誰に口利いてるんだ?

ユキミ:やめて! 大丈夫、私飲めるから。

レン:ほら、ユキミだって、こう言ってる。二か月頑張ったもんな。今日はたくさん飲んで楽しんで行けよ。な?

ユキミ:うん。そうする。

ナオト:レンさん……

レン:じゃあ、そろそろ俺行くわ……ナオト、わかってるな?

ナオト:……はい。

ユキミ:……

ナオト:すみません、差し出がましいことを。

ユキミ:ううん、ありがとうナオト君、嬉しかった。

ナオト:俺にはわからないです。なんでそんなにレンさんがいいんですか? そのお金だって、ユキミさん自身の為に使いたいことはないんですか?

ユキミ:……うん、ない。

ナオト:本当ですか?

ユキミ:私さ、小さいころから親に「ブス」って言われて育ったの。だから自分はブスだって思ってたし、今も思ってるし。その分、勉強とかスポーツとかできればよかったんだけど、全部人並み以下で……。私いなくても誰も困らないなーって思いながら生きて来たんだよね。

ナオト:そんなことないですよ!

ユキミ:でも、今はレンをナンバーワンにするっていう目標がある。レンはね、平等なんだよ。かわいいからとか話が面白いからとかじゃなくて、お金を使ってくれる人を大事にしてくれる。お金を払えば私を認めて、褒めてくれる。
レンがいなくなったら、私また何のために生きているのかわからない自分に戻ってしまいそうで。だからいいの。

ナオト:じゃあ、レンさんじゃなくてもいいんじゃないですか……?

ユキミ:え?

ナオト:俺じゃ、ダメですか? 俺、ずっとユキミさんのことかわいいなって思ってたんです。俺ならレンさんみたいな酷い扱いはしないのにって。もっと大事にします。

ユキミ:……

ナオト:……だめですか?

ユキミ:ねえ、ナオト君、さっき言ったよね。私、意外といろんなこと知ってるの。

ナオト:どういう意味ですか?

ユキミ:『私は笑って、片手をあげ、ボーイさんを呼んだ。そして、こう告げる』

ユキミ:「リシャールを2本」

ユキミ:『リシャールは一本五百万のボトルだ。それが2本で一千万。店内にどよめきが走り、七色の照明が一斉に私に注がれる。ホスト達に取り囲まれ、今日一番のコールが始まる。
他の客についていたレンも慌ててやってきた。』

レン:嘘、一千万!? え、これで俺、逆転ナンバーワンだよな!? 

ユキミ:『レンは最初驚いて、次に顔をくしゃくしゃにして笑った。私の大好きな、あの笑顔だった』

レン:やった! ユキミ! ありがとう!

ユキミ:『シャンパンコールと点滅する照明に包まれながら、レンは私の肩を抱き寄せた』

レン:今日の俺のお姫様です!

ユキミ:『この景色がずっと見たかった。レンと、一緒に』

ユキミ:レン、私、役に立てた?

レン:もちろん! お前は最高だよ。本当に、ありがとう!

ユキミ:ううん、私こそ、すごく幸せ。ありがとうレン。本当に、ありがとう。

レン:ああ、さすが俺のエースだな。

ユキミ:誕生日、おめでとう。

レン:あ、うん、ありがとう。

ユキミ:『私を強く抱きしめるレン。その幸せがこぼれないように、私はそっと目を閉じた』

ユキミ:あの、さ。

レン:ん? なに?

ユキミ:今日は、一緒にいてくれる?

レン:え、あ……。

ユキミ:約束、したよね?

レン:ごめん、本当にごめん、今日は無理! また後日埋め合わせするから!

ユキミ:そんな、レンが「埋め合わせする」って言って、本当にしてくれたことないじゃない。

レン:はあ? そんなことないでしょ?

ユキミ:あるよ! いつもいつもそういって……

レン:接客で返してるつもりだけど?

ユキミ:え……?

レン:え、俺の接客は楽しくないってこと?

ユキミ:そういうことじゃなくて、だって約束したし、私、レンのために……

レン:めんどくさ……

ユキミ:え?

レン:勘違いしてない? 俺が頼んだわけじゃないよね? ユキミが自分のためにやったことでしょ?

ユキミ:そうだけど……

レン:俺が縛られるの嫌いなの知ってるよね? そこ受け入れてくれないなら、もういいよ。もっと優しいホストいっぱいいるよ?

ユキミ:まって、いやだ……!

レン:ばいばい。

0:(レン、去る)

ナオト:大丈夫ですか?

ユキミ:うん……さすがにちょっと、きつかった、かな。

ナオト:ユキミさん……

ユキミ:わかってたんだけどね、やっぱりはっきり言われるときついな。

ナオト:あの、一千万ってどうしたんですか? 出稼ぎのお金400万って言ってましたよね?

ユキミ:レンの知り合いの人に借りたの。

ナオト:まじですか……

ユキミ:大丈夫、ちゃんと返すから。

ナオト:そこまでして……

ユキミ:そこまでして、あの反応だった。ははは、笑っちゃうよね。

ナオト:ユキミさん、もう無理しなくていいですよ。(抱きしめる)

ユキミ:え?

ナオト:レンさんの代わりでもいいです。少しだけ、こうさせてください。

ユキミ:うん、ありがとうナオトくん……ありがとう。

0:(閉店後 ホストクラブ バックヤード)

ナオト:レンさん! ナンバーワンおめでとうございます!

レン:サンキュ、ナオトもサポートありがと。

ナオト:本当に取っちゃうなんて……すごいです。

レン:え、俺は取れないと思った?

ナオト:いや、そういう意味じゃ!

レン:怒ってねーよ。ナンバーワンは器大きくないとな。

ナオト:あの、ユキミさんのことは?

レン:ああ、うまくいきそ?

ナオト:多分、いけるかと。

レン:じゃあそれで。

ナオト:了解です。

レン:これからも頼むぜ、ナオト。

ナオト:はい、レンさん!

レン:あ、俺今日、早めに上がるから、後よろしくな。

ナオト:もしかして、彼女さんですか?

レン:ああ、ナンバーワンになったからお祝いしないと。最近、忙しくてかまってやれてないし。

ナオト:もう3年目でしたっけ? レンさんってホンカノはあんまり変えないですよね。

レン:なんで? 変える必要ないじゃん?

ナオト:ほんと、悪い人ですね、レンさん。

レン:お前こそ、俺の寝首(ねくび)掻(か)こうとか思うんじゃないぞ。

ナオト:それは約束できませんね。

レン:こえー奴……

0:(レンとナオト笑う)

0:(後日 ホストクラブ 店内)

ナオト:あ、ユキミさん……

ユキミ:ナオト君……

ナオト:ちょっと久しぶりですね、よかった。体調、大丈夫ですか?

ユキミ:うん。

ナオト:あの……

ユキミ:指名お願いします。

ナオト:いや、でもレンさんは……

ユキミ:ナオト君を指名したいの。

ナオト:え、ほ、ほんとですか?

ユキミ:うん、いい?

ナオト:も、もちろんです! やった! 俺すごく嬉しいです!

ユキミ:うん……よろしくね

ナオト:俺、ユキミさんのこと大事にしますから。

ユキミ:うん。

ナオト:レンのことも忘れさせますから。

ユキミ:(冷たく笑う)……それは、どうかな?

ナオト:え?

ユキミ:ナオト君さ、私のことバカだと思ってるよね?

ナオト:まさか!

ユキミ:私ね、けっこう色々知ってるの。ナオト君は、リシャールの意味、知ってる?

ナオト:え……

ユキミ:席に、案内して。

ユキミ:『毒だと気が付かないのが男の愚かさなら、毒だとわかっていて飲み干すのが女の愚かさだろう。
私は気が付いていた、レンがなぜナオト君をいつも私のヘルプにつけていたのか。
だから、私はこれからはナオト君を指名する。
リシャールの意味「一生、貴方を愛します」
レン、愛してる』

0:【完】

【声劇台本 男2女1】 ドンペリの泡よ消えないで ※R18

【声劇台本 男2女1】 ドンペリの泡よ消えないで ※R18

ドンペリの泡よ消えないでシリーズ

  • 小説
  • 短編
  • 恋愛
  • 成人向け
更新日
登録日
2021-10-02

Copyrighted
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