晩冬の落日に火を眺め

―――これは世界の終末の最後のひと時の物語―――

「晩冬の落日に火を眺め」
                     飛天 優騎







―――これは世界の終末の最後のひと時の物語―――







平原を駆け抜ける天馬に乗りし宝玉の守護者ディオは、暗き炎によって空を覆い尽くした。
力のバランスが、均衡が、崩れし時、各国は争い出す。
平原に不吉な風が吹く。
森のノルド導師は、木の枝に縄をたらしてそれに薪をくくりつけ、打ち込み用の練習器具を作り出す。
そして、スラッドという剣の達人にして近衛一個師団の長である者の稽古を穏やかな顔つきで見ていた。
森の騎士団は、この力の均衡の歪みに乱世を予見し、兵を集めていた。

―とある町で―
ノロットという町の煙突掃除がいましたノロットはいつも世界一の剣士になることを夢見ていました。それも、平原を駆け、剣士という剣士をなぎ倒すようなたくましい剣士です。しかし、彼の剣は、町をきれいにするモップであってとても人を傷つけるような危なっかしいものではありませんでした。
しかし義と勇気ある志願兵を森は、森の騎士団は募るという話を森の妖精が風に乗せて町に伝えました。
森の騎士団が動く。町は騒然となり声を挙げているようでした。ノロットはさっそくモップを片手に仕事帰りに誰もいなくなった町のはずれ、自室に鍵を掛けありったけの荷物を背にモップを片手に軽々持って、軽やかに町を出て行ってしまいました。
このノロットという男、少し頭がおかしいのか、ただの噂でしかないその報せを本当の事と少々思い込んでいました。だから、少し彼のモップはともすれば剣に体は剣士のそれに全くの少しですがそう見えるのです。
「思い込みの力というのはすごいものね」と森の妖精は小バカにしていますが当の本人は大真面目。
それどころか、ノロットの顔はどんどん森を中へ分け入っていくように、だんだんと精悍な顔つきに変わっていくではありませんか。そして、森に入って木々を分け入り奥へ奥へだんだんその道を険しくなっていくといよいよ、ノロットはなんだか本物の剣士のような風格が出てきたのです。それには、森の小鳥たちも驚いて「チチパチチ町の剣士さん、どうして森に起こしになって?チチパチチ」
ノロットは、
「世界は、混沌の中にいる、さすればそれがしが剣を持って世の中に一役買おうではないか」と一講釈。
「チチパチチ何という心意気、それならば森の隊長とあうといいわ、案内してあげるから着いておいで、一個師団の長よ、相当の人物だから覚悟してね。チチパチチ」
ノロットは不思議な事に、小鳥に先導されてあるレンガ塀の家へと案内されたのでした。
そこで師団長、スラッドに出会ったのです。スラッドはちょうどウサギを仕留めて焼いていました。
「チチパチチ、あららウサギさん仕留められてしまったの。かわいそうチチパチチ」
「でも最後の最後までウサギとして懸命に生きたんだろうからウサギとしては本懐をとげただろう」
何を言ってるんだ? こいつは、と思うかもしれませんが用はノロットが実に優しい心の持ち主だということです。
「チチパチチ、そうかなあ。チチパチチ」
「ん?何かな、君!」
「あ、イエッサー、貴候がスロッド隊長でありますかな?」
「ん、うむ、そうだな。あ、いや私の名はスラッドだ。スロッドでは拍子がはずれてしまって決まりが悪い!」
「チチパチチ、成り上がりのノロットさん、もっと謙虚な物言いをして。チチパチチ」
「イエッサー、なまりであります 『わかってるよ、でもはじめくらいかっこつけたいじゃないか』」
「ん?なにか言ったかね」
「いえ、独り言であります」
思い込みでも底ぬけの間抜けなノロットの事、やはり最初で名前さえ覚えてないのです。
「で、おほん君は何故こんな森の国に?道に迷ったか」
「い、いえ自分はこの森の騎士団に志願しに来た者です」
「ふ、そのモップでか?」
「は、これはその」
「いや、今は人を選んでる場合じゃない、それに報せを出してこんなに早く森に入ってやってくるものがいようとは、これは貴侯こそ、伝説の三剣士にふさわしいかもしれぬ」
「で、伝説?」
さすがの思い込み屋ノロットも伝説ときいて少し挫ける。
「そうだ、世の混乱あるとき、伝説の三剣士現われりその一人は君だということさ」
「おお、伝説の三剣士!」
「そうだ、よし、森の騎士団に会わせよう。ついてきなさい」

ノロットは勇ましく後をついていく。森は秋の様子だが早くも木々は立ち枯れしてその風体はなんだか森全体がカビの温床になってくさっていくような終末を感じさせたのです。

一方暗黒の支配者ディオは世界の制圧にかかっていた。次々と国を襲い己が夢を成就させまいと今まさに広大な領地を万の軍勢とともに駆けている。
その訃報はノロットのいた町にも流れたその辺境の町は恐怖した。そして森の騎士団の到着を待ちわびるようになっていた。侵略者ディオは自分こそは正義だと言わんばかりにパルテナの神殿を焼き払った。ディオは長い間、パルテナの神殿にとどまっていたがついにはその憤怒の念を神殿に押し付けたのだ。つまり暴君ディオは数多くの事を成し遂げたが自分より勝っているものを認められないのだ。
それはつまり征服できると考えるからである。パルテナは焼かれることでその行為に犯された。ディオは若く美しい王者の風格を持つ。
そして誰もが絶対なる王者だというようになり、預言者たちはこぞってディオにかしづいた。それらはまだ踏破されてない国を震撼させた。しかしディオは実は人間ではなかった天空高くそびえるヴァルハラの居城の王なのだ。つまり神の真なるしもべなのである。

森の騎士団は迅速かつ着実に動いていました。
その周辺の町を守るべく煙突掃除のノロットを加えた、騎士団はノロット故郷の町へと出発したのです。そうこの森は動く。彼らは誰にも気づかれずに行軍ができるのです。なぜなら森が動くからなのです。森が動く?と想像できない人はいるでしょうか?そうです、この森の木々も柴も何もかもは移動する足のような根をもっているのです。それだから何者にも気づかれず、ひそかにゆっくりと行軍できるのです。
この森はいったいなんなのでしょうか?長い年月を持って生い茂った森はときに魔力をもつのです。あの高名な魔法使いマーリンもやはり森のそういうところを知っていたのです。そしてそれを味方につける術も人間は学べるのです。

――暴君の襲来――
ノロットの故郷の町ではこんなうわさが立っていた。最近、森の緑が妙に濃くなったと雑草が町にまで生え伸びて小さな木々がその背を町の方へと伸ばし始めている。そして事は起こったのだ。ついに戦火はノロットの故郷、へイルトンの城下町まで来ていました。しかしそのころにはもう、町は森にすっかりおおわれてしまい森の中の町といった感じになっていた。城は必死の抵抗を示したがそれでも日に日に戦況はわるくなった。しかしだ、暴君ディオは何かを恐れた。
「なんだ?あの森……日に日にこちらへ寄っていくような者どもぉ、こんなちいさな城はいい、それよりもあの森を焼き払ってしまえそうすれば蛮族どもは丸裸だ」
ディオの命令に弓矢兵が火矢を放ち油の入った壺を投げ込んだ。けれども森は燃え上がるどころか突然突風が吹き荒れ、火を消し去ってしまった。矢も風にとらわれて的外れなところに飛んでいく。すると、ディオはやはり闇の濃き力の使い手。その御技では全ての邪悪なるものを配下に置き、闇の物質や導具を操りだす。(魔術師の道具は人を導くので導具と呼ばれ敬われている)
ディオは小さな竜巻を起こし砂の中の砂鉄を吸い出す。
「アラストリアリアルス!」
そうつぶやくと砂鉄は熱せられ結合し昇華する。これが魔術師の召還の剣、覇道の剣である。そしてそれを一度だけ振るうと周りの空気は圧縮され魔力を帯び威力のある波動となる。
大地に覇をなすすべての者をなぎ払う竜巻となる。そして周りの石や砂を集めながら巨大化していき、もっと危険なものに変わり始めた。石という石はするどく突き出して刃のようになり砂は針となる。刃や針はさらにするどくなりどんなものにでもつき立て切り裂きそうになる。
そんな竜巻が森を襲った。竜巻は吸い寄せられるように森に迫ってくる。するとあろうことか森の木々は固くなり樹液をだしそれが木々を鉄の塊に変えた。金属の磨り減りあう音、耳に痛く聞こえしかし森の動物の悲鳴さえしない。
ディオはそれを見て竜巻を左手で制し、ため息をついた。風は止み、あたりは静まり返った。
「うぬう、解せぬなにがあの森をああさせる!」
その邪悪に凝り固まった声は叱責を禁じえない。
「ジークハイル、ディオ!ジークハイル!」
「おお、なんだ、ジーク」
「私めに、あの森の探策と討伐の命をどうかいただきたく」
「よい、許す」
化け物どもの軍からグリフォンの化身のような恐ろしい怪物が進み出たので近くの町は騒然となった。化け物たちは、進軍した。蛇にこうもり、鷲に羊とみなかようななにかの化身である。闇の儀式によりいて支配されし禍々しき軍なり

―一方森の方では―
キィン、カン、キュリィン
スラッドと互角に戦うノロット。五月雨のような素早い攻撃の応酬、軽やかに足を廻らせノロットはスラットを圧倒していく。
「く、そうだ、腰を落とせ、背は伸ばす、剣は手の一部すなわち気・剣・体の一致はどのような化け物にもその一撃をもたらす、ただ一つ我らが騎士がその名誉とするドラゴンを別として」
「ドラゴン?」
ノロットはその目に輝きをきらめかせはしゃぎ始めました。
「ね、ドラゴンってどんなの?教えてよスラッド隊長」
その間も二人ははげしく打ち合う二人にとって会話と剣と剣による野試合は、同義でした。
「ふむ、頭はトカゲ、羽はこうもり、胴は蛇、それがドラゴン。魔力を持ち、何千年も生きる。肌は鋼鉄で刃が効かぬ」
「そうじゃ、ドラゴンを倒すことは我が騎士団の誉れ。おぬしも機会があれば是非勇敢に戦え、なにせ人の世の前よりも前、この世界の創世の時よりともにある聖なる生き物じゃ、それと戦うことはこの上ない栄誉じゃ」
「ぼくはそんなのやだよ!」
「何故じゃ?」
「だってドラゴンさんだって生きてるんだろう?」
「まあ、そうじゃが、やつらは襲ってくるのじゃぞ?」
「ぼくはドラゴンの背に乗りたい。友達になりたい。そうだ!そのほうがずっといい!」
「ふぉっふぉっふぉ、騎士の証のドラゴンをてなづけたいか、それこそ、騎士の本懐じゃ、よく言った。ノロットよ」
「ふ~ん、って誰?」
「これは、ノルド老師、めったに顔を見せないものですから」
「スラッドよ、騎士の準備は全て終えてある。現在交戦中じゃが、戦いは上々、おまえさんがそこの小僧に入れ込んどる時に兵士は必死に戦っておるぞ?」
「はっ、すみません、素晴らしい逸材を見て取りまして」
「ふむ、なんとも隙のない様相、只者ではあるまい。どれこの者に魔法の素質があるか試してみるか」
「あの、そのディオ軍はいいのですか?」
「安心せい、森の結界はあんな暴君には絶対に越えさせるものか後数時間は大丈夫じ
それにこの森の時は外と比べてとても遅いであろうが」
「そうですか、ここは騎士団を信じましょう」
「うむ」
三人は場所を変えて、魔導の導具の置かれた場所に出ました。
その広場にはただ青い海のような思いが沈殿しているようでとても不思議な空間です。
そのたそがれにノロットが見とれている内にスラッドとノルド導師はノロットに聞こえないように話しをしていました。
「私は一目で見抜きました、彼こそが伝説の三剣士の一人だと」
「スラッド、腕が落ちたか?それとも兵士の力さえ見抜けぬか、それほどまでに節穴か、
その目は」
「と、言いますと?」
「あの者、剣はまったくの素人じゃ」
「ええっ!」
「おどろいたか?」
「いったいなぜ? わたしと互角に先ほどまで渡り合っていたのですよ?」
「たぶん思い込みじゃ」
「思いこひっ?」
「はっは、いいか、人は思い込むことによって自分の数倍の力を出せるのだ」
「はあ、そんなことが」
「そうだ、歴戦の勇士がみな勇猛なように、逆に農夫が桑ではなく始めて剣をもったならそしてお前こそは選ばれし者と言われてみろ、腹のそこから力あふれ出るぞ」
「ノルド導師、いやすさまじい眼力」
「いやそこにモップが立てかけてあって彼がそれを大事そうに扱うのを見てな、大方どこかの町の煙突掃除だろうと思ったのさ。なにせ、この森で会ったものはみな記憶してるでな」
「じゃあ、彼は剣士ではない?」
「そうじゃ、煙突掃除という職はな、自分の体を張って町中の煙突を掃除する。暖炉から工場まで炭だらけになって肺に灰を詰まらせて死ぬことさえある。だが煙突掃除は屋根から見る町の風景を己が誇りとしている。なぜなら人が想像でしか知れない、町の様子が一望できるのだからそれはキツイ仕事を終えた彼らにとってなにより心癒されるのものなのだ、そう晩冬の紅く燃える夕日に映える黒い仲間たち、うむ、いい仕事じゃ仕事はいいなあ、うん!」
「はあ、でも私は」
「心配するな、技は確かに本物だ、あの者生来武術の才能があるようじゃ、しかし戦場は思い込みだけで生き残れるほど甘いものではないまずあの者の思い込みをこのまま良い形でくずすのじゃ、それにはな」
「なんです」
「けなすのじゃ、けなしてけなして自分が嫌になるくらいけなすのじゃ、そうすると思い込みでない本当の心を出さざるをえなくなる、その時に始めてほんとうの事いうのじゃ、つまり」
「つまり?」
「つまり、本当の事を言ったあとしかしそなたのその怒りは本物だというのじゃ。そうすれば自分が何者か気づく」
「ほほう」
「師匠、さっきからなんです、何をそんなに話し込んで」
「このバーカ」
「へっ?」
「やい、わしにすらもう勝ったつもりか、おたんこなす」
「な、え?」
「うすのろ」
「とんちんかん」
「あ、あの」
「だから言ってんだろ、本当は三剣士なんかじゃないんだろう、この煙突掃除」
「あ、バカ」
「はっ」
ノロットは青ざめた顔でいいました。
「そのことをどこで何故ぼくが煙突掃除だと?」
「ノ、ノロット、別に君をからかうつもりは」
「そ、そうさ、ぼくはうすのろのおたんこなすさ!町中でそういわれ続けた!」
ノロットはその小さな体を振るわせた、秋の風が冷たく彼の心を刺す。
森は、何故か木枯らしが吹き荒れ始めた。まるで、ノロットの心境を映すように。
「ノロットしっかりせい、あんな暴言をはいたのはおぬしの思い込みを壊すためなのだ。よいか自分の仕事を誇れぬものは他の何をやってもだめであろう。おまえは剣士でなく煙突掃除人だがその方を誇ってよいのじゃ。というならおまえは大丈夫じゃノロット、このぼろぼろのモップが示しているこれこそお前の本当の剣なのじゃ。おまえはいつか必ず森1の剣士になる!」
ノロットははっとしました今まで自分の仕事をけなす人間は大勢いました。だが今まで自分の仕事をほめてくれる人はこの人だけだったのです。
そしてその仕事が誇れるものだといったのはノロットにとってこの地球上にこの人だけでした。
だれも人に自分の仕事を誇れとはいわない、しかし自分の仕事はこんなにも素晴らしいとは言う者は吐いて捨ててしまうほどいる。
自己顕示は必要な行為だが、それで人としての格さえも落とすならその人間は悲しいだろう。空しいだろう。そしてノロットはこの老人の言葉だけは信じていこう絶えず注意して聞こうと思った。
それほどノロットは厳しい世界に生きていたのだ。

時は来た
時は来た
晴れて熱い鉄のような日々は終わり、
 時は来た
時は来た
冬の寒空のその向こう。
晩冬の落日の燃ゆるその夕日を観て
時は来た
時は来た
人の世の最後の時よ
人よ、いざ鬨を挙げよ
ならば、進め、その落ちる日の最後のひと時まで……
……安らかに眠る……
閉じる世界の中へ
……永久なる眠りに落ちるがいい……
  
「さあ、剣の基本構えからの打ち込みじゃ」
ノロットはもう体の使い方を忘れてしまいました。いまではただの煙突掃除であるのですが。けれどやはり心の氷は解け、その熱い心を思い出したのです。全てを一から学ぶ決心をしたのです。以前としてやっぱり思い込みの強いノロットは剣の修行なんてすぐに終わって一人前の剣士にまるでスポンジに染み込む水のように早く上達するだろうという軽い気持ちはありました。海よりも谷よりも甘いノロットの幻想が頭に沸いていました。
「うへへへ、ぼくが剣士…うふ、うふふふ」気持ち悪い!と小鳥が嫌な泣き声で泣く泣く口々に叫びます。
たぶん、みんななにかを始める時の心構えはそのくらいがいいのです。だって険しい海の崖も険しさを感じて足が止まるより飛び込んだほうが気持ちが良いでしょうから。
「よいか剣を舐めるでないぞ、それは諸刃の剣だ、力で打ち負ければ傷つくのは自分だ。」
「なぜ、両刃にするのです片刃の方が安全でしょう」
「片刃の剣はそりを与えぬと切り裂けぬ、それに扱いが難しい上に名刀と呼ばれるものは、
すごい力を発揮するが、なまくらはそうはいかん」
「両刃の剣の強さを見せよう」
 まずスラッドは片手で薪を両断した。
「両刃は片手で容易に扱える。そして後ろへ振りかぶれば」
スラッドは大きく振りかぶると後ろの木に剣は深く刺さりました。
「裏技よ、両刃に死角はないのだ」
「その昔、東方の凄腕の剣士が片刃のそりの入った刀を使っておった。そのものの技はあらゆる者を両断した」
「ふ、まあ、極めてしまえばどちらも強い。だが私はその東方の剣士とはやりたくはないがね」
「さあ、剣を取るのじゃ、若き騎士よ」
「は、はい」
ノロットが剣を振ってみると予想よりもずっと重かったのでした。あの時の軽さはどこへいったのやら。
「さあまずは千回は振れ、万を振ればだいたい剣を修むるに足る、億を振れば習熟を見せ。兆を振れば極めるに足る」
「はい」
「それではない、これだ」
渡されたのは竹の棒きれ。
「これで?」
「そうだ、そうさな、それでそこの土偶を割ることができたら次だ」
「は、こんなもの」
コン!
「あれ、く、くそ」
カン!キン!コン!
「う、けっこうかたいな」
カン!カン!カン!カン!
夕日が顔を見せ始めた、
「あーあ、無理!これはめちゃくちゃだ」
「はっは、修行が足らぬわ、スラッド!」
「はっ」
スラッドは土偶ではなくそのそばの大岩を目の前に木の枝をすっと大上段に構え、いかずちのごとく振り下ろしました!
ピシャァ!ピシピシピシピシ、パガン! 大岩は見事に真っ二つに
「うおああ?」
仰天するノロットをよそに、スラットは割ってしまった岩に対して祈りを捧げる。
「え?」
「不思議かね、スラッドの行為が、壊すばかりが武ではない力のあるものは武に溺れてはいかん、常に穏やかな心でいなければならん、すなわち術でなく道だ」
「おごれるまま、怒れるまま、剣を振るな、それは災いを呼ぶからな」
森の夕暮れに一日のあのほどよく疲れきった爽やかさはノロットにとってこれまでにないやりがいのあるこの仕事に笑みをたらし、そして夢のような生活が待っていることの素晴らしさを二人と思いその美しい森に見取れておりました。
ぼくは、やはりなんだか伝説の中にいる気がする。ぼくは本の中のような主人公のように生きれるんだぞ、うひゃーーいいなあー!
早く明日がくるのが待ち遠しいのです。

――一方その頃ディオの配下ジークは十万の軍勢を率いて森に分け入っていた。しかし、入ったと同時に十万は五万に減った。五万は意識不明の状態で地に伏した。
「む?いかん毒鱗粉だ。気をつけよ、彼の者の手にかかるな」
「しかし、我々の大半がすでに、ぐ、ぐうう!」
蝶が舞う、その羽の鱗を光らせ、交尾しあい、愛を歌う。宙空をその色がかすんで風にキラキラと舞ったあとには永久の眠りにつく兵隊たちの山。
まるで古の毒ガス兵器のようなしかしそれとは全く違うそれは、もはや美しささえあった。はかない悲しい、蝶の舞い。どれほどの殺戮か?どれほど狂ったそのいびつな自然。
しかし、奇妙なことが起こった。昼だというのに暗く、影がその形を逆に強め、化け物たちが薄暗がりにまぎれる。
「はっ!好機だ、闇に乗じて進め」
将軍は間違えた。それは森の更なる罠。淡い紫のそのうす暗がりは影を増大させる。そして奇妙なことは起こった。影はその主と入れ替わりはじめたのだ。あちらこちらで悲鳴が聞こえる。だんだん、影は表へ影ながら出ていく。主(あるじ)が影になり、影が主となった影となった主(あるじ)は影ながら暴れたが影なのでどうしようもない。
そして一方、影であった主(あるじ)は悲鳴を上げる。
「わあああ!何なんだ!嫌だああ、早く!闇よ、私を紛れ込ませて。ああ、なんだこの恐ろしい影は主の言うこと聞かずに暴れてる。恐ろしい、おお、恐ろしい。ああ、明るい!まるで火に焼かれるようだ、え?火?なんだそれはああ、頭の方に変な記憶が、え?記憶?なんだそれは」
もう支離滅裂である。しかし影であった主が主の記憶を思い出すのにそんなにかからなかった。そして一同は立ち尽くし、我を忘れ凍りつく。そしてこんなこと口走った。
「ああ、生まれて死んだのか」そして次に、「なんと私は罪深い、もう影としてこの主(あるじ)を支えるのにも疲れていたのだ。何故ってそんなに主(あるじ)の罪は深い。そして私も影でありながらこうして出てきてしまった。私は、実体のない陰の国にいたからこそ、自由であれたのだ。私に夢や希望は必要ない、ただ主にそって動くそれだからこそ、よかったのだ。分からないだけど私はまもなく死ぬだろう。体が悲鳴を挙げている、いやこんな苦しみは罪だ。、自分から死んだ方がいいのではないか……――
――……そうだそうしてしまえ、そうだ死のう」
そしてあちらこちらで自分の武器を喉にあてて自殺を図る者でいっぱいに。
それはこの世の地獄のようだった。そうこの暗がりの影は、化け物たちの、戦争に加担する密かな罪悪感を増大させる。
私は思う、この影たちは、影ながら生きるこの世の者にその様子が似ているとは思わないだろうか。これほど優しい者はいないのに。陰日なたに生きる全ての人は必要もないのに罪悪感にかられ、ネガティブな想念を宿し、疲れきっている。
そう自分はたいした働きをしていないし、人生になんの生きがいも見つけられない、なんだか空虚だと。
しかし考えてみて欲しい。君は毎日に追われはするが、はたして生きていたかね?なにごとかを巡らし、目の前の目標に一日一日を全力で生きれていればどんな仕事だって輝くそれで死ねたら本望ではないか。

男なら、自分の志の方に死するとしてもその方へと倒れながら死ね。

真面目に勤めるのと全力で生きるのは違う。前者は人に遠慮しているだが後者でも自分が本当によいと思ったことに全力を出していれば、人はそれを誠意と見てくれるのだ。
もし自殺が個人の尊厳として公認されたら自殺者を集めてここで死んでくださいという自殺処理場などが出来たら、まさにホロコーストそのものになるだろう。それも能動的な。
それは悲惨だ、ならそれを想像してみたまえ、目の前で全国全員の自殺者の群れをそしてそれらがもう人生に絶望して死んでいくのを必然やるべきことは分かってくる。
 私は物語のように生きたい、そういう崇高で美しい物語のように。
と、思いさえすれば叶う。何者も遅すぎることはないぞ!             

一人、生き残っていた英雄、ジークは、(ジークともなると影さえもが自分にちゃんと従うのだ。みなさん、影はちゃんとしたがっていますか?学校に自分の噂を広めたり、学校に行きたくないなんて行ってませんか?そういうときは影の声を聞いてあげてね)
一人、森を駆け抜け、その身を憤怒にやつし進んだ。
「ディオ様ぁ、たとえこの身が滅ぼうとも我はあなたの忠臣です。死しては死の国ヴァルハラを先へ行って侵略してやりましょうとも」
森の外のディオは涙して言った。
「よい、許す、行け。力の限り戦えええ!」
ジークは勇猛果敢に森を進み続ける。
そしてもう一人の自分にあった。
「ん?ああ!」
はじめ、鏡かと思ったしかし左右対称ではない、しかし彼の方がずっと気高く勇ましく優美だった。その姿には徳さえ感じさせる。
「お、おまえは」
「おお、あなたは私?」
「おまえは我か?」
「いや、私は私、あなたはあなたでしょ。私は楽園に続く道の途中なのです、この逞しい翼があればきっとたどり着ける」
「な、なに楽園?」
自分に似たその者はあまりに分けのわからないことを言う。
「はい、神々の園でございます。わたしはそこで本当の幸福を知るのです」
「こ、幸福だと、笑わせるわ、幸せなど求めて胡散臭いこという奴が一番信じられん」
「はは、あなたについて来いといってるのではないですよ、私が自分の足で行くのです。ただ私はその道を自分の生涯かけて見つけ出したのですから聞かれたら教えてあげてるだけです」
「はっ、じゃあその楽園とやらを見せてみろ」
「何行ってるんですか今ここがその地ですよ」
「なに、おお!」
それは天上の雲の合間、黄金の時の流れる時間。白い砂浜が広がっている。そして目の前いっぱいに見渡す限りの青い草原、青い空。そしてその向こうの終わりのほうに輝かんばかりの黄金色の穂ばかりが一面。雲が低く、その影を地に射すように陰りを落とす。真なる天上の大地が広がっている。
「なんというところだ。我が君にも見せてやりたい」
「あの者はここへは来れません」
「なにをいうのだ、我が君は神の使者なるぞ」
「神は、大変嘆いておられます。人の土地を食い荒らし、世界を混乱に陥れたと」
「神がそうしろといわれたのだ」
「パルテナの神殿で大王は変わられてしまったあそこでなにがあったのです?神はお嘆きです」
「やはりおまえも敵か、我が軍の情報を聞き出したいのだな」
「愚か者が」突然声が変わる、鉄のような声だ。「私はおまえが選ぶべき道を進んだもう一人の私、神は再生を望んでおられる。貴様の祈願のヴァルハラという場所教えよう」
「なに?」
地が割れ、その奥底が見えるようになった。すると広大な地下洞窟で人々は殺し合いをしていた。突かれても切られても殴られても笑いながら戦い合う戦士たち。ジークは恐怖した。
「これがヴァルハラ、戦士の館、究極の戦争状態さ、戦士ではない人はこう言うだろう地獄と」
「ああ!、すごい、われはこれを渇望していたわれはこの方がいい。それにおまえは信用できぬ、全て幻かもしれない」
「愚かな、現実と虚構の区別もつかぬか、あの草原を目の前にして神を信じようとしないとは。私は神の使者なり、おまえたちのあまりの愚かさ神はもはや失望されている。おまえにはあの音楽がきこえまい、神は話されている、聞く耳を失った愚鈍な輩め、死ね、我が分身、」
「もはや何が現実なのか、神よ、我は戦いますぞ。この者と戦ってその真実を勝ち取ろうぞ」
二人の力はごかく、しかし心の砕けつつあったジークの方がやはり弱い。だが最後のその一突きで自分を分身よばわりした者を相打ちにする。
ジークももう一人も倒れた。
それは惨劇。

みなさん、本当にこの世界は現実ですか?あなたの世界を実感させる者はただの電気信号なのですよ。今伝わるこの感触、自分がもしこの世にいなかったらもし死んでいたなら本当は生きているということはどういうことか説明できますか?一寸先は闇。もし一寸先に死があったらあなたは今日という安全と生を信じられますか?
ジークのようにある日、ひょこっともう一人の自分に会う、あなたはそのときどう対処するでしょうか、さて物語は進みます。

ジークが倒れたことによってディオ軍は浮き足立った。
「まったくなんなのだあの森は!わしがここまで手を焼くだと?」
「一ついいたいことがあります陛下」
「なんだドルイドの老いぼれ」
「私は木の化身なれば分かります。大王よこれは自然つまりこの星にたいする挑戦なのです」
「何をいっている?」
「大王よ、自然は今だ、その力を失ってはいないです。人や我々がその三分の二をしめるようになってその三分の一が結局根強くのこり、最後我々が滅んだあと勝利するのです、彼らがいなければ彼らが生きられない事はまったくなく、我々が知恵を獲得しましたがそれと引き換えに彼らと共存する鍵を失ったのです」
黄金のトライフォースは崩れたドルイドは言った。三角形はその身に神秘を宿すダビデの星も三角形の複合体だ。
「うるさい、ドルイドの老いぼれめ、わしに侵略できない土地があるというのかそんなことは許されぬ」
「大王よ、侵略とはまた物騒な、大王は若き日は全人種の統合を夢見ていたではないですか、それが先の神殿で何を見られたのです。垣間見たのです?」
「私はあそこでもっとも神に近しい人間を見た。そうはるか古代には我らより優れし人間たちがいたのだ。我らよりも勝っている人間がいたのだ。それが腹立たしいのだ、我らよりも勝っている人間だと?神はなんと残酷なのだ、我は我の夢をあまねく天下に知らしめたいのだ」
 ある者の頭にそのディオの巨体さえも小さく見える王座に座る屈辱を味わうディオが浮かんできた。
「陛下それなら私めらは命を賭して大王に付き従いましょう」
すると大王は立ち上がって森に向かって叫んだ。
「聞け、森の守護者よ、我は大王ディオなり、私は百の国と千の町を食らって支配し統治した。そして万の道をわたりここまで来た。どの国も我らより強かったが何故、私が勝ち続けたかそれは私には大義があるからなり、すなわち異文化を認め、討伐はするが、そのままそこに生きる者の思う望むとおりに国をおさめたからだ。私はお前たちを打ち負かす、
これは聖戦なあり、騎士道とは敵を認めたなら現れてどうどうと一騎打ちをすることにあり。ならば何故、そこもとは隠れ潜む?お前らの剣はなまくらか?」
化け物たちから嘲笑の声がとどろく。
「まったくの臆病者だ、貴公らのそのたいどによっては我が野望を燃えたたらせ、しかば、その威力をしかと見よ」
そういって軍勢は勝ち鬨をあげる。大王の演説に吼える軍勢。だが、森の風に乗って一通の手紙が舞い落ちる。そしそれをひろって大王は読む。それにはこう書いてあった。
おそれながら、貴公の意味なき騎士道には応対しない。我らは侵略されようとしている身であるからだ。敵を討ち果たすのみ。それにまだ、我らは君のケンカに自分の力を使ってはいない。全て事前に用意してあった罠にことごとくかかった貴公のまぬけっぷりである。神が味方するのは貴公らだけと思うな。貴公が侵略を止めるのなら我等も戦闘をやめる所存。おそれながらこの戦い、全く大義などなくただ己のみに固執するものなり。
一体兵たちをいつまで自分の夢に縛りつけたれるおつもりか。兵たちは疲れきって満身創痍。世界を平らげたその先は、醜い味方同士の大争い、同士討ちに他ならないと先ほど教えたつもりであるのだが。まだ賢明な王であらせられるなら兵を引くがよかろう。いたずらに死者をだすな。

その文に大王は激昂する。自分の一番つつかれたくないものをつつかれさらに嘲笑されていたからだ。
我に大義がないだと?この我に?しかしそこは賢明な大王である。
「よかろう、森の守護者たちよ、我らは一旦軍を引こうではないか、我らの遠征をここで終らせ兵たちに故郷に帰る時を与える。貴公らとは停戦協定を結ぼう、書簡をここへ」
偉大なる王ディオはその行為は賞賛に値する者である。そして戦士の書く戦文字で手紙を綴り森のほうへと放った。すると風が森奥深くに手紙をとどけた。

停戦協定 

一つ、互いに互いの領土を侵すなかれ。
一つ、双方の領土は、我が軍イリアステラが九部、残りの一部が森の領土である。
一つ、森の緑の届くところはそのほうの領土である。しかしいたずらに生え伸ばすことはゆるさず、自然に任せる旨心得よ。
一つ我が領地の人間には我らは指一本触れぬ、しかし介入もしない。

               以上が森の騎士団とイリアステラ軍との協定である。

「いずれまた合間見えようぞ」
だが依然として化け物たちの力は強く人間たちは彼らによって支配されたままだ。森の騎士団は人間たちが自然を愛するなら何度も立ち上がるであろう。
そして化け物は自分の国へ帰っていった。

―ディオの暗黒の国にて―
人々は化け物に畏怖しているがディオは心優しき政治者である。しかしその統治を一切を人間に返したがため、そのため人は恐れ敬い平伏す。荘厳な神の神殿の中央に位置する大聖堂。そこに大王ディオはは巨大な王座を創りその巨体を漫然と座している。
「聞け、人々よ、我らを化け物とおそれるでない我はあなたがたを救いし神の僕なのだ。その最もたる目的を忘れたから神は怒り我らを遣わした。われらは森の騎士団と盟約を結んだが、我らに従うことは神につき従う事である」
ディオの最初の記憶は右の文句にあった神との生活の日々だった。その神々は駆けるように空を舞い、毎日神の国はどうあるべきかを、話し合い国を良くし己の技を磨いた。来るべき終末を待って。
その面影は偉大なものでディオはとてもなつかしく感じる。神々の最高神、である主は言われた。
「人の世が乱れておる、おまえは行って百の国と千の国を討ち果たし支配しなさい。ただし森の、知の森の人々には近づくな近づけばおまえはいとも簡単に滅ぼされ手痛い報復を受けるであろう」
ディオには慢心があったそして夢があった。
「私は、神々の如く世界を制し支配してみたいものだ」
しかしそれが災いの元となった。彼は森を攻撃した事でその罪で神に見放されたのだ。神の庇護のないディオは嘆き悲しみ国にて百日間の黙祷を捧げる。
そして神は言われた。
「ディオよ、戦いが待っている。知の森の人々がその知の森から出てくる時を待つがよいそなたは悪としてあの者たちの前へ立てそして勝て、もし彼らがおごれるものだったらそのときおまえの悪は消え、人間が悪となる。これは人間への試練である」

――知の森――

バキャン、カシャシャ!
土偶は粉々になった。
「やった」
「ふう、時間にして一時間。よくがんばった」
「ふむ、スラッドよ、この若者は素地がよい」
「うん、これなら我らが後も」
「え?どうしたんですか二人とも?」
「ん?いやいい煙突掃除の体力が君を一人前の剣士にするようだよと話してたんだ」
「ああ、そりゃ、煙突掃除は朝から晩まで休みなくですからね。いかにして灰を吸い込まずに煙突を掃ききるかちょっとした技が必要なんです」
「それにしても細いな、どうしてそんなにひょろひょろなのかね」
「一日中パンしか食べませんからね。ここではパンに野菜に肉まで食えるもううれしい限り」
「そうか、だから感謝しながら食事ができるのだね」
「そういうことです、あ、でもあんまりおいしいからって食事の前のお祈りを忘れたことはないよ」
「ほう、関心じゃ、信仰心をいまどき持っているのかね。良い神を信じ己の正しきを貫け」
「だがそんなこんなでもうディオの軍は攻撃を止めたよ、賢明な王だ。あれは神の国の使者だろう」
「神様?」
「そうさ、彼らは神話上の生物なのだ。この世の破滅を見た時現れるけものたちさ」
「そうか、悪者じゃないんだ。黙示録の獣のことですか?」
「ああ、666だ。このすうじの意味するところは神の名を汚すのさ」
「そうかじゃあ、終わりはもう近いのかな」
「そうかもしれぬがわれらは最後まで人間としていようではないか。それが人間の最もたる目的だろうから」
「しかし悪者とはひどい言い方をする」
「だって次々に国を襲って殺したんですよ?」
「戦争はたしかによくない、だが戦争に悪も善もないそんなもので分けられたら、悲惨であるだけだ、まあ勝った方の言い分がとおるから、悪と善別れるといえば別れる、だが歴史上の大殺略はみな、悪だ。一番いけないのがやはり人殺しなのだからそして殺すことそのものも」
「しかし」
「しかし?」
「魔法も教えよう、ノルド導師」
「おう、わしもそう考えてたところじゃ」
ズテーン!
激しくずっこけるノロット。
それから数十年ノロットはスラッドとノルド老人にみっちり鍛え上げられました。
そして見違えるような逞しい青年になりました。
ノルド老人はその生涯森の政治に尽力し、195歳でその息を引き取ったのでした。
飲み込まれた町は森と合併し森一番の町として栄えています。
そこでは動く絵画や劇や物語がさかえ詩を作らせたら一番である。町は森のうちで熟成しその知を神話として語るようになった。そして森の騎士団は、スラッドは今年100歳になる。冬でした。草木も何もかも凍るそのしんしんとした寒さの中、焚き火を眺めノロットは何事かを考えていたのです。
炎の中に闇が見える。しかしその向こうにはなにか黄金色のなにかが、これは、幸福?
「スラッド王のおなり!」
「ああ、よいよいみな今日は、私の百歳の誕生日を祝ってくれて大いに感謝するところである、しかし私はノルド老が生きてた頃のあの輝かしいようにドラゴンと戦い、魔物どもを打ち払ったあの輝かしい時を懐かしくおもう、そなたたちは日々、武芸とその知恵を磨いているようであるが私は痛ましい、それは森の政治を巡って最近いさかいが絶えないからである、死者まで出ている元老院はそれを黙視して言を発せず、非常に遺憾に思う。そこであらたな指導者にノロットを上げたい」
「ノロットだと?あのノロマが?」
「なにノロット?ケンカもできない臆病者じゃないか」
一同はざわめき立つ。
「静粛に!みな聞け、おどろくだろうが今君たちの中でノロットに勝てるものがいるならやってみるがいい。ノロット、暖を取っているところ悪いがこっちへ着て欲しい」
「はい!」
「さあ、挑戦者はいないか?」
「スラッド様、ダメですよ」
「おう、俺は力だったら何者にも負けん」
大男は歩いてくる。その図体はノロットの三倍はある、筋骨隆々である。二人は相対した。そして笛の音で合図が鳴る、するとノロットに一瞬で地面に押さえつけられる、それも指一本でだ。
「ほら、ダメだ。ごめんね、君」
「く、なんだ、これ?おまえ、どうやった?」
「ん?ふつうに押さえてるだけさ?」
「くそ!」
抑えがとかれると同時に襲い掛かる大男、しかしまたもや地面に突っ伏している、するとこんどは、ありえない力で持ち上げられ、高々とかざされる。
「う、うわああ、ば、化けもん!」
「化けもんはないだろう同じ修行をしたものどうしじゃないか」
それを見て一同、あぜんとした。他にも挑戦者は山ほど来たので一度に全部相手にしてやった。魔法の類は使わず、投げ飛ばされるもろもろの騎士たち。軽く冷や汗が流れる。
この者が剣をもったらどうなるんだ?考えただけで怖くなる一同。

――そして話はディオの国へ――
「ディオよ時は来た。やはりおそれていたことが起こった森の政治は破綻寸前なのだ。行って討伐してくるのだ、そのときは、敵も姿を現す。知の森の力は強大だ、だから一度事をたがえると己を見失う、そうだ今こそ許そうお前の本当の力火の力を解放するがいい」
山が動いたような錯覚、ディオが起き出したのだ。深き眠りから。そこでは人間は卑小な民族として差別され魔王族という人種が台頭している。そこでディオは実に百年間その王者であり続けた。
「聖なる神よ、世のためとあらば私は悪にもなりましょう」
「おまえのその気高い心が人を救うだろう、だが決して人を侮るでないぞこれが人類に残された最後の試練だ」
地が鳴り響く。
「者ども、行くぞ!我等が覇道みせてやろうぞ」
地が鳴り響く。そして長きに渡りこの世のおわりを待ち幻神獣たちはついにはなたれた。

――知の森――
 パシン、ドドドド、ズドッバッ!
騎士立ち総出でかかっても全然びくともしないこの青年にもうだれもかかっていかないのでした。
「ねえ、ダメって分かった?」
「う、くそお、分かったよ、降参だ!」
「聞け!ぼくは君らがいさかいを起こしている間に森の外に出て旅をし一つの真実をつきとめた」
ノロットは耳を劈くような声を平気で出している。
「森の外は今、人間には地獄のようなところになっている。大王ディオ率いる魔王族は人間にかわって支配者となっている。人間は差別され奴隷と化している!」
これを止めるには我等が騎士団が立ち上がらなければいけない。今こそ立ち上がれそして勇気をだして森をでよ、まず森の町への凱旋である。神話になっている我等が出て行けばみなびっくりするだろうそこで兵を募る。私はかってその町の煙突掃除だっただがそれを私は誇りに思っている。さあいざ行こう、では人と神の名の元に」
「そうだ、ノロットの言うとおりである」とスラッド王。
「私は、王位を退き、命の限りノルド老人のようにノロットを補佐しよう今や騎士団の力は全盛期の約十分の一だが諸君らはそのかわり勇気に秀でている。今こそ森の騎士団の名の下に立ち上がるのだ。古き神々に敬意を表しわれらは一つの祈りの元に動くすなわち、神への信仰と祝福と巡礼によってわれらはその命を天に召されようとも人のために立ち上がる」
王の凄絶な激によって鬨が鳴り響いたのでした。森の騎士団、二万は素早く動いた。ノロット総司令官にスラッド前王の二人の指導者に導かれ、二万の軍勢はそれぞれ一万ずつに分かれる。
「いや、ノロット、私も今日まで生きて戦火の中を潜り抜けてきたが今回の戦いが私の最後の戦いになるだろう、ノロットよ」
「はい、師匠」
「おまえに言って置きたいことがある」
「なんです」
「予言さ、“久遠の落日の後、人は滅びを迎えし時、一人の指導者によって永劫なる死への旅路を許される”とな、ノロットよ使者とはお前の事だ。いつも灰をかぶってきた煙突掃除が滅びの使者となるのだ」
「師匠、まさかまた」
「いやいや、ちがう、今度は思い込みではない、お前で最後だ、人の世の偉人は」
「そんな私には畏れ多い」
「畏れるな、ノロットよ、お前には私ら二人の全ての知恵と力と技を与えた、頼んだぞノロット」
そういい終えた時森の町に凱旋した。町は音楽と動く絵によって騎士たちえを迎えた。
見ほれる騎士たちは恥じらいを隠す。この世にこんな美しい美女たちがいるのかと目を疑った。
「おお、この子は髪が青いぞ、湖の底のようだ」
騎士たちは森に戦いに勝利した後出てきて飯を作る妻たちのことを思った。女は戦はできない、しかし久遠の落日にはみなが立ち会わなくてはならない。
高くそびえる摩天楼も見た。超能力者かとおもいきは町人に聞くとホログラムという聞きなれない言葉を聞く。
「ご主人様、お帰りなさいませなのニャ~ン」
意味の分からない猫のような耳をした女子たちが使用人の格好をして現れる。
「ハニャ~ン、素敵な殿方ばかりなのニャン」
「か、かわいい、何故だか、不覚にもそう思ってしまった」
「だ、大丈夫だ、お前は男としてはたぶん正常だ」
「あらあら、可愛い子達ね、何のゲームのコスプレなの?お姉さんと遊ばな~い?」
「あー失礼だがマダム、我等には大義がありますので、それにわたしたちには生涯の妻が」
戦に出るために鍛えた屈強な戦士たちばかり男の中の男だ。かっこ悪いはずがなくみなけっこう美形だったりする。
「そう、がんばってらっしゃい、いつでもなぐさめてあ・げ・る」

your rider? Only go my way!

物事は相対的かつ質量があるので空間は歪み、光も曲がる。

全ては一瞬の興亡。星の興亡も宇宙の広がりも私と貴方が触れ合っている時間も車が私の前を通り過ぎるのも全ては一瞬。

速さは勇気である。

「見てください、今アンドロメダ聖人とポケメネス星人がコンタクトを取っています」

「アガメムノーン マガレムノン 大魔王よ、光臨せよ!」
「おいおい、それはまずいだろう、ディオが出てくるよ」

「聞け!森の町の住民よ、私はノロット、森の騎士における最高責任者であって使者でもある君らはぼくたちの神話を知ってるだろう!諸君、終わりのときは来た、久遠の落日にその夕日をともに見よう、栄誉ある死への旅路へともに向かおう。ともにするものはいないか?」
しーんとなった。そして一人の青年が前へ出る。
「おれは行こう、君たちと共に」
「君は誰だ?名を名乗られい」
「飛灘 勇騎 この世界ではそれが私の名、その名を誇りを持って誓おう。おれは日本人だ。母ちゃんがいる。武術もやってる、絵を書く小説もな、音楽もするぞ!」
「ほう、才気あふれる若者よ、いや勇騎よ、われらの内へ進み入るがいい」
そして若者は鎧兜に身を包み東方のそりの入った日本刀という刀を腰に下げ、凛として列に加わる。
『あれがうわさに聞く東方の戦士?なかなか立派な者だ』
「おう、その方、その刀、銘は?」
「これ?ふふ、陸奥守吉行という。業物だよ。ある人からもらった。その人は本当は人間を一度と言わず、何べんでも斬って本当の憎い敵を斬り捨て世直しをしたかったらしいですが、いかんとして優しい。だがらぼくが代わりに斬ってやるんですよ。ふふ」
「怖い事いうな、そんな人の刀使って大丈夫かい」
「うん、大丈夫その人ほらそこにいるから」
「えっ?」
 飛灘の指差す方向に白い純無垢の着物を着たなんだか大きく見える神霊が浮いていた。
「あなたは?」
「おう、世の終わりっちゅうもんを身に来てな、わしの剣が欲しいちゅうからやったんじゃ、それなら、どんな働きも出来るからのう。ま、わしの怨念晴らしてくれや」
「ははー!『おお、世の終わりにはこういうことがおこると聞いたがものすごい』」
ノロットはなんだか東西南北の英霊に力添えされてるような気がした。
「さあ、ほかにいるか」
「おおーーー!」
全ての人が待ってましたとばかり鬨を上げる。やはりみんな冒険したいんじゃないかと誰かが言った。

そして町は神話が再び繰り返される、と多くの志願兵がはせ参じた。そう彼らが作り出した物語は人の戦意を駆り立て逞しく成長させていた。
そして一億人増えた軍勢はいよいよ町を出た。千里をかけ、魔王族との熾烈な戦いを望んだ。
 ところが、どこへ行ってもあるのは奴隷化された人間たちだ。彼らは恐ろしく卑屈で頼りなく日々に疲れていた。
精神に異常を来たし抑圧された生活を送っていた。彼らは聞こえない声におびえ見えない重圧におしつぶされそうになって仲間内でいじめをし、たえず意味の薄い会話をし続ける。
騎士団はその施術をほどこして彼らの多くを救った。だが反面、行軍が遅れて騎士団を待たずして自分の命を絶つもの、後を絶たず、害のある有毒な薬に薬漬けになって肉も骨もぐしゃぐしゃになっていたものも多かった、そしてそれを見てノロットやスラッドや飛灘はため息をつくのだ。
そのあまりの光景に遅すぎたのだと騎士団の誰もが思った。やがて、騎士団を希望の灯台のように見えてきたその者たちは無気力に目的もなく立ち上がり放浪者のようにあとに続いた。
そのせいで軍団、というより難民のようになってきた。それほど病んでいるのだ。
ノロットはまさか世界の終わりに人類がこんなふうになるとは思いもよらなかった。そしてその顔に決意の表情を固めていくのだ。世界の終わりの指導者になろうと。そして敵の城エウレンディルに総攻撃をかけた。魔法で城壁を打ち砕きそして剣士たちが躍り出る、飛灘は日本刀のほかに竹の良くしなる棍棒を中ごろに持って先に刃をつけて赤い漆をぬった朱槍を振るうそれは彼の必殺の技であった、人なぎで魔王族をなで斬りにして突破口を開く、そして戦闘も中ごろにきて天守閣におお、ディオは姿を見せた。
「森の引きこもった哀れな騎士たちよ、こよいおぬしらはこの世の最後の試練を迎える。さて、天上への道は、絶対に開かせん、みな地獄におとしてやろうぞ。貴様らに人生の希望はあるか?悔いなき人生を歩んでここまできたか?」
「それには俺が答えよう」
飛灘 勇騎だった。
「そう、人は人生を生きる。おれはついこの前まで病気だった。この病気はもう治らん、一生薬に頼って生きていくしかない。だが精一杯の努力で魔王族と互角に戦えるようになった、悔いはあるかだと、あるに決まってる、父は仕事の苦しみで死に、母は明日の生きる力をどうにか開こうとしている。みんなそうやって生きてきたんだ。自分だけ、おいしい果実を食べそんな居城にふんぞり返ったやつがなにを言うか。なめるなよ、人間を!」

「ほっ、見込みのあるやつもいたものよ、が貴様とて我にはかなうまい、だれぞ一騎打ちだ!兵を千里後退させ、決闘を申し込む」
「なにを俺だって」
そこで、手で制するノロット、いつの間にか飛灘のとなりいる。
「ふふ、うんそっか、これは君の物語だったね?」
「ああ、勇騎よ、よくぞやってくれた、あとはぼくたちに任せて、君はまだ世界の終わりなんか見ちゃいけない、これから君を元の世界へ飛ばそう」
「ちょ、なんだって!」
「アルーラホマーレ(飛ばせ、元々の場所へ)」
日本人として誇り高く戦った戦士、飛灘 勇騎そのものは精霊の加護の元、大空に消えた。
「さあ、ディオよ、続きだ、いいだろう?騎士たちを後方千里に下がらせよう。相手はぼくとスラッド様だ」
「おう、ノロット、あの者の働きをむだにしないようにしよう」
「貴様ら、魔族は知るだろう人間の最も強き本質をそれは絆だ、われらは千人、万人と集まればどんなものだって怖くない。ぼくたちが死のうとも後方の騎士たちが必ずお前を倒す」
両軍、兵を後方に退かせた後相対した。まずはスラッド王、使うはやはり剣。すらっどの剣は魔のスピードが出るといわれている。
ディオは、百トン近い巨剣を木の枝のように振って見せた。それだけで爆風が生まれる。
「ノロット、私はここで死ぬな、だが、奴を弱らせるくらいはやってみせる」
「わかりました、決闘ゆえ手出しはできません、ご健闘を切に願いましょう」
「いくぞお!」
スラッドは風にまう、ひとひらの葉のように軽くその身を動かす。ディオはその巨体を悠然と構え見下ろす。
剣が雷光のように同時に四筋くらい一瞬で一万の打撃を食らわせる。それは稲妻が細く枝別れして襲うようだった。
しかしディオのその体には傷一つつかない。そして巨剣でそのスラッドの剣を一撃。流星が落ちたかのような剣撃に手がしびれる感覚を覚えるが反動で持ってかれるのを身を捻って緩衝する。
スラッドは逆手に剣を構え、もう片方の手でディオを透かし見てぐっと力をためると遠間から一閃。
真空刃がディオの剣にひびをいれ、体を裂く。
「が、あ……」
苦悶の表情を見せるディオに間をおかず上へとに飛び上がり両の手で頭にものすごい轟音をさせて打ち下ろすそしてディオの頭を割る。
「ぐ、がああ」
苦しみもだえるディオが巨剣を乱打する。
ガガガガガ!ギィン!
冷たく苦い感触が腕に響き、スラッドの剣は飛ばされた。そして彼方の大地に突き刺さる。その金属音は嫌な予感をさせる。
「し、しまっ」
「イイッンヤッッ!」
爆風のような吐息、呼吸法の雷声というやつだ。スラッドが素早く飛び退って剣を取るがディオの方が早い振り上げられた巨剣にあぜんとして見上げるスラッドとっさに剣で受けようなどとした。
 そして業雷とともに巨剣が薄い剣を砕いてそのままスラッドに突き刺さる、左肩を両断され立ったまま鮮血がしぶきを上げる。
「スラッド様!」
ああああ~~~!
後方の軍から嘆きが聞こえる。だがスラッドは終っていなかった最後の力を砕かれた剣に込める風が剣に集まっていくその姿はまるで風神か雷神のようだった、そして大気の剣で一気に斬り上げる。
 ディオの片腕を持っていった。しかしそんなことはお構いなくディオはとどめの一撃を横一閃に。そして胴と腰が切り離されたスラッドが大地にしずむ。
森の王、大地に臥す。
「スラッドさん」
ノロットが駆けていく。そして助け起こして傷口に治癒の魔法をしかしもはやむりであった。ディオの剣は魔剣、治療の力は封じられてしまうのだ。
「あ、ああスラッドさ、ん」
「泣くなよ、ノロット、見えるんだ。終わりの景色が、母と父がいる、きょ、兄弟もだ、ああ、エレン、おまえもか、みんないるんだ、ノロットおまえも早くこっちへこい、いいものだ実にいいものだ」
「スラッドさん、さようなら」
精一杯の笑みを込めて自分の師を送り出す。
「さあ、見よ、この世界の終わりが空を覆う」
天空がにわかに掻き曇り、燃え滾る硫黄の雨が降る、冬の空が一瞬にして紅く燃えて、ディオの本当の姿が見える。
頭と腕がみなの苦しみの数だけあり、額に神を汚す名を書かれ、そしてするどい牙と怒れる鋭い目をもった獣のすがたになったその体は赤くそして黒い筋の紋様が入っている。最初は紅かったがだんだん変化が重なるにつれ灰のようないろになり、目は狂わんばかりに歪み、口からは火を吹かす。
「我のこの姿を見せたということはここが世界の終わりということだ。おまえたちは神に背かなかったといえるのか神とは法である。人の法ではない、わたしがこうしてヨハネの予言を破りこうして出てきてしまったということは神はおまえたちにそうとう腹がたっているのだ。わかるか!この苦しみが言いたくもない神を汚す言葉をいつのまにか吐いている二律背反の重みを、本当はわれこそ、真に従順な神の僕であるはずなのに!終末にして最後の人間を計るため、神を語るこの知ったかぶりの舌をいいか神は語られるだけで罪なのだ。だれが本当に神をしっている?あのお方の崇高さを誰が分かりうる?そうじゃ、神はあって祈られるだけでよかったのだ、祈りの瞬間だけはその者の魂は清らかになるのだから、人間を計るだと?今さっき、一人崇高な人間を葬ったではないか、ああまた罪をかさねてしまった!我のささやかな夢をおまえらは踏みにじる」
「我々は、お前を超えて神の国にいくしかもう道はない。私が本当に指導者の役を得るのかは知らないだが私は幼い頃より悪いことはせず働き続けそして今こうして悪人も善人も差別なく引きつれ立っている。ここからは私とお前の力比べだ!」
「よかろう、まずは兵法を競おうではないか、すなわちどちらがより指導者に優れているか戦ってけりをつけてやる」
「わたしはこれより一人たりとも死者をださない、来るがいい魔王族!」
「みなの者―ノロットさまに続けー!」
「いけない!森の騎士たちよ、その血が一滴も流さずにいなければならないのだ」
「いえ、ノロット様私たちはノロット様のために戦うのではないのです」
「え?」
「今、私たちは本当の試練を受けている一人一人がです、だから逆になにもせずにいれば神は我等を許すでしょうか。わたしたちはわたしたちの心が許せないのです」
「わかった、力限り仲間たちのために進めえ、いいか地獄に落ちることを畏れるな。人は何も知らなかったときにさえ罪を犯す、無知が罪だというなら赤子さえ裁かれるのだ」
ノロットたちは足の速い者から先に陣頭に立って敵陣に切り込んでいった。しかし魔王軍はゆっくりと隊列を組み同じ歩幅で進んでくる。敵陣に血路を開くには魔王軍にひるむことなく、切り込み、第二陣を待たなければいけない。
だが足の速いものは総じて武も強い、だから少数になっても戦い続けられる。これこそハルマゲドン。いまごろ、天上でもラグナロクがおこっているだろう。
そして魔王軍の数が減ってきたところ足の遅い者、第二陣が来る。そして魔王軍はほとんど壊滅した。
そうだ、人の死に物狂いの力ほど強いものはない。農民が武器を持った武士たちにあれだけの抵抗をしたように。
「私は中央で魔力の気を練る。これもまた一つの罪だろうがかまわぬみな、ぼくに力を!」
「ノロット様に魔力を注げ!集約呪文を使うのだ」
「我が火の力には何人たりとも防げはせぬ、死ぬがいい、人間ども」
「この世界に火をもたらす、止めてみろ!」
するとディオはその手中で小さな小さな炎がともる。すると炎はなんらかの意志を炎は自分の力を思い出す。すさまじい爆風と炎が一挙に膨れ上がるそして一理先の彼方まで火は風圧と共に吹き荒れる。
これで何人の死人がでたか!しかしノロットは対抗呪文をかけていたので予測はできなかったかなんとか仲間たちを守りきった!
 これで死んだものもその刹那、なんらかのカミングアウトを受ける。そして行くべき場所へと旅立った、それはその者の望む場所。そしてノロットは言った。
「いいかディオ、神はこれほどの心強い心と力を神を信じてきた人間にさずけたもうた見るがいい」
ノロットは右手を挙げ天高く突き出した。すると右と左から大津波が押し寄せてこの陸地を飲み込んだ。兵たちは移動呪文で高台に引き上げ難を逃れたそしてこれより後傍観者としてその任を待った。
ノロットは宙に浮き、そして手を素早く動かす。あっという間にディオを飲み込んだ。そのまま渦潮の渦を足掻く。
「な、なんだこの魔法は」
ノロットは剣を放るとその剣はいかずちになってディオを貫く。ディオは火によって海水を全て蒸発させた。
ノロットは次に星を詠んだ。そして流星となって降り注いだ。これにはディオもたまらず火の力を暴発させながらただ避けるのみである。
「これが人の持っている最大の力である。人間の力は未知数だ、これは魔法ではない今になってみればわかる、私が意図していないのに事は起こっているこれは奇跡だ」
我等は久遠の落日とともに神に照らし出してもらう。
いいか?ディオおぬしらの神と全く同じ。神話は違えど祈る対象は違えど神の本質は同じだ、全てにおいてな。そしてノロットは神と共にある勇姿を見せ、そして最後の止めをさす。
天と地が逆転したかのような錯覚に陥ったディオは宇宙に一人だけ放り出される。
「うぐあああ!」
そして永劫なる神秘に満ちた空間、暗黒の空間に落ちた。
「な、なんだここは、おおはるか下の方に我が星が見える」
「ディオよ、お聞きなさい」
「はっ、その声は我が主!」
「そうです、あなたが信じた神です。彼はノロットは、人の最後の指導者としてあなたにこれを見せているのです。よく見入りなさい」
八方位に星が星星がちりのようにきらめくそしてすぐそばに燃え滾る熱と光の星が。
「おお、あの星星にはわれらのようなものも住んでいるのですか」
「ここが次の舞台なのです、新たなる国、天上の世界なのです」
「主よ、我はどうなるのですか?」
「貴方は火の力の王、太陽があなたの業を焼き消してくれるでしょう」
「そんなそれはあまりに」
むごいと思いますか?いいですかあなたは永劫の旅をするのです、あの星から太陽まで。その内には貴方も心も変わっていくでしょう。
そういうと主の存在はディオにぴったりとくっついているような気がしたそしてその体温をこの凍てつく空間でただ一人だけ独り占めしているのだった。
主の体温は母のそれにとてもよく似ていた。
ディオは永劫の時間思いにふける神と共に、すると全ての事はとても小さなことでもはや自分の心を苦しめるものではなくなっていたそしてもう疲れに疲れて休みたいと願った。
すると太陽はゆっくりとその身を焼き痛みすら安らぎに変えてディオを包み込んだ。
そうして覇王ディオは死んだ。
まるで勇者イカロスのように。
そして地球では、
「再生は行われた、これよりこの星は人と魔族と自然の三者の共同体となるそれを盟約しよう」
「そして偉大なる王ディオに追悼の祈りをささげよう、我らは戦に勝ちはしたが彼の深い悲しみを忘れてはいけない、これより未来永劫戦争を禁じ、創造について働け」

これより、人と魔族は反映する。自然と共に。

本屋の片隅、詰まれた本の山から「晩冬の落日に火を眺めて」をついさっき読み終わった人がいた、正確には、以前にそれを創り、その確認にきたのだが。
冬の日だった。
飛灘 勇騎は本屋のゴミを焚き火にしてその火を見つめていた。
「おい、勇騎、寝てんじゃない、仕事しろ仕事」
「あ、はーい」『あれは夢だったのかな』







     完

晩冬の落日に火を眺め

人はよく夢見がちでのろまな思い込み屋を笑いますが、思い込むというんぼは一種の力ではないかと僕は考えるわけです。思い込みは、あの女の子のスカートから下がきになってその場にいられないとかそういうこともその子が好きだと思い込むことによってどうでもよくなるどころか全然いやらしくなくなるのです。むしろ、可愛いとさえおもってしまい。重症になると足フェチになってしまいます。そんな状態なら女の子が苦手というステータスは無効化されてしまうでしょう?まあ、女の子には嫌われますが。このノロットもいつか自分は剣士になるんだと信じて疑わなかったから剣士以上のものになった。自分は疑ったり考えを巡らせて人より有利になりたいといったことがきらいならもういっそそんなことはやめて、自分のあるく道を信じ込んでしまえばよいのです。人生など百年あるかないかなにが有利でなにが不利かなんて損得勘定はお尻のお穴小さいことということでしょう。

晩冬の落日に火を眺め

ノロットはいつか剣士になることが夢だった。そんなとき、魔法の森の騎士たちから戦火の報せが届いたのだった。ノロットはけちな煙突掃除人を止め、鞄いっぱいに荷物を詰め込んでいざ冒険の世界へ出発したのだった。

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-12-06

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