世界の視え方

雪水 雪技

世界の視え方

世界の視え方

長針と短針の示す
時計塔の時刻では
この世界に生まれない

概念となるものたち
形骸化してゆくもの
曖昧なものばかりを
追い求めていた時間

少しずつほころびが生まれて
裂け目が出来てゆくときに
新しく世界は創造される

その瞬間に立ち会えなくとも
私たちは全てを今、視ている

やりたくないこと

何も無い午前七時に
いつかのことを
引き出しから
ひっぱり出す

そうして並べてみても
どうにも順序が合わなくて

これとそれとが噛み合わない
あれとどれが隣り合うのか

朝から泣き出しそうになる
パズルよりも意地悪な
心象の破片合わせを

街の湯気

今、街からは湯気が上がる
何をか恥ずかしく思って
気体をもって隠している

空の色をぼやかして
ビルの角をぼやかして
水彩画のようになれと
この街は叫ぶのである

何を恥じらうのか知らん
兎角、視界は悪くなって
車には水滴が溜まって
皆皆、顔をしかめている

真っ赤になる街の心を知らずに

単色の日々

寂しい心に来る朝は
何をもって明るいだろうか

寂しさを埋めようともせず
ただその隙間風にあたる

皆は嘲るだろうか

隙間風は傷にさわるから
いつでも痛いままになる

癒える日が来るのを待つ
時計の音を聞きながら

日々は一色のみである
ただじっと耐える人

皆は嘲るだろうか

反感

ひとつも納得できず
わかったふりをして
過ごすほかなかった
報われたかったのは
ほんとうだったけど
それを言えなかった

ほんとうのこと
それを見逃した
道もわからずに

今更心と何を話そうか
なにもかも嘘をついて
延命してきたつづきを
どうやって過ごそうか

仮想世界の事実に何の救いがあるのか

変わらなかった世界が
はためきながらないている
その声がうるさくて
今日も起きる朝に

わたしの声はどこにある

声の大きさで
存在の大きさが決まる

この世界にどう在ろうか

何にもなりたくない
何かになりたい
それは同居する

矛盾なく今朝も
わたしは消えずに

良い子の行動原理

吹きすさぶ心を隠して
春のように振る舞って
一体何の舞踊だろうか

心は凍りついていく
荒れていく生活と精神
誰かを呼ぶこともないまま

わたしはいつも
わたしを完結させる

人並みの願望を隠して
何も望まないフリをして

神様に好かれようと必死に
自己満足の徳を積んでいる

反抗

日々は学びより許しであるか
寛容でありたがるが狭い心

何ひとつ認めてなどいない
何ひとつ許してなどいない

寛容が遠のいて
わたしが大きくなる

そうしながら
口は塞いでいる

誰の手も煩わせたくないのは
わたしがめんどうだからであった

この世界に生きることは
何もかも手に余るから

月に溢れた

月の海の上は静かだ
ボートを漕いで軌道に乗る

バランス感覚は絶妙なもので
溢れたり枯れたりを繰り返す

月は溶けてしまうだろう
わたしの目の中で一夜にして

軌道も外れていくだろう
みんなが笑うようになるだろう

それでもよければ
永遠の満月と落ちていこう

禁忌

さようならと言えば
すがすがしい風が吹いた
それはほんとうであった
なのに季節はわたしを刺す

わたしはわたしのためにしか
多分生きられない生き物であり

それはみんな同じなのに
みんなはちがう顔をする

寂しい軌跡になにがある
振り返ってはならないよ

それを守れた者は有史以来いないよ

サイコロが決めた経路

旅先は言葉も音もいらない所
たとえば眠りに落ちるときの
夜のつめたい静寂の街がいい

埋まらない席と心を持て余し
旅行はつまらないまま始まる

つめたい心はわたしのもので
人がつめたいのもわたしのせいで

何も言えずに
逃げ出した今日だ
旅行より博打を選んだ愚か者

蛙の独唱

気難しい蛙が
田んぼの合唱を嫌う

季節外れてようやく歌う
蛙の独唱はのびやかだ

合わせるものなど持たないで
じぶんの分だけあればいい
それがみんなわからない

気難しい蛙は
寒い季節にたからかだ

斥力

無関心なのが
一等ここちよい

互いにああだこうだと
つまらぬ会話するより

ただの沈黙に眠っていたい

互いに思い出すことは
少ない方がよっぽどいい

そうしてようやく
安心して人を愛せる

たまに会ったときには
そういえばこんな顔だった

そう思い出す
楽しさが良い

圧死する季節

嘘も言葉
真も言葉

どれだけ並べても
その数が増えても
分量が変わるだけ

何の意味もなさないものに
何の疑いも持たなかったね

すべてを真に受けて
降り積もるもの受け取って

いつか潰れてしまったね

そうして冷たい雪の底で
わたしは春を待っていた

寝静まる劇場にて

誰も彼もが寝静まる
劇場の中に入り込み
わたしの昔を探していた

舞台の上で繰り広げられる
大変見事なショーの中にて
思い出は照らされている

みんなは相変わらず寝静まる

昔遊んだおもちゃ箱
ひっくり返した物語

真実

何を物思うのか
何もない日々を
そう空虚に変えたのは
他でもなくこの手に違いない

誰に何も言うこともなく
わたしの中の個人的破滅
それに誰を巻き込もうか

永遠にひとりであることは
全て平等な真実であるが
酔っ払って忘れる程度の
重みの無い真実であった

ウィッシュリスト

うまれてかえるまでに
やることをきめてきた
かなわないことも
ふくめたリストに
マーカーをひいて

さようならを、なんどでも
それだけ、であえたのなら

しあわせだったのだから

おもいだしてつらくなるほど
しあわせだったじかんが

たしかにあったのだから

堕落

つめたくなる
からだのなか
だらくのはて

さようならの呪文

ここからどこへ
私は臆病な旅人

コンパスもこわれた
乗り換えも間違えた

ガラクタばかりの夢を見て
その中に身を置いて去りたい

投棄するために歩く
芽吹くものも見ないで

世界を変える文字列が沈む

月の影に生まれた
湖あるいは水たまり
落ちていく図鑑あるいは物語

奇書をあつめていたのは
この世界のルールを変えるため

月に魅せられてから
視えてきたものたち

終わらないものがは無いこと
それは幸であり不幸であり
偶然であり必然であった

運命はそのなかの
ただひとつの作用に過ぎない

違うものが集まるから世界になる

うたってもそれは
わたしになりえない
そうだろうかとうたがう

ただの人であること
それは変わりのない
さわりのないじじつ

それに何の痛みがあるか

それはその人の加減による
世界の見え方それ自体が
全て違うのに集まる人

埋め合わせて
都合を合わせて
今日ここに集うだけ

世界の視え方

世界の視え方

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-09-30

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. 世界の視え方
  2. やりたくないこと
  3. 街の湯気
  4. 単色の日々
  5. 反感
  6. 仮想世界の事実に何の救いがあるのか
  7. 良い子の行動原理
  8. 反抗
  9. 月に溢れた
  10. 禁忌
  11. サイコロが決めた経路
  12. 蛙の独唱
  13. 斥力
  14. 圧死する季節
  15. 寝静まる劇場にて
  16. 真実
  17. ウィッシュリスト
  18. 堕落
  19. 世界を変える文字列が沈む
  20. 違うものが集まるから世界になる