ドール

 ララ、ばかみたいにいつも、恋をしている。
 赤いリボンを、くびにまかれた。しゃりしゃりとした質感の、それが、こすれるたびに、あわだつ。ざわめいて、ふるえる。細やかな、皮ふのすきまから、目に見えないなにかが侵入してくるような、感覚。この、だいたい中央のあたりの、こりっ、と、かたい部分をかするたびに、つめたくなる。指先。
 人形になりたいかと聞かれたら、なりたくないのだけれど、きみだけのドールになれるのならば、それは悪くないと思うような恋を、ララはしたがる。
 夏休みに、部活でつくった文芸誌のなかで、わたしの書いた詩だけが浮いていた。いきているのに、いきていないみたいだし、やさしいようでいて、いちばん残酷。と評したのは、部長だった。スマホの電池が、あっというまに尽きるほどの、刹那的な恋を、わたしはしていた。となりでねむるだけの関係でよかった。肉欲、などという、なまなましいものを交わして満たす関係は、わたしにはまだはやいと思った。
 深夜に、だれもいないスクランブル交差点の中心から、星を見上げたときのよろめきは、果てのない想像をしたときのあやふやさに似ている。

ドール

ドール

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-09-28

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