ドール
あおい はる
ララ、ばかみたいにいつも、恋をしている。
赤いリボンを、くびにまかれた。しゃりしゃりとした質感の、それが、こすれるたびに、あわだつ。ざわめいて、ふるえる。細やかな、皮ふのすきまから、目に見えないなにかが侵入してくるような、感覚。この、だいたい中央のあたりの、こりっ、と、かたい部分をかするたびに、つめたくなる。指先。
人形になりたいかと聞かれたら、なりたくないのだけれど、きみだけのドールになれるのならば、それは悪くないと思うような恋を、ララはしたがる。
夏休みに、部活でつくった文芸誌のなかで、わたしの書いた詩だけが浮いていた。いきているのに、いきていないみたいだし、やさしいようでいて、いちばん残酷。と評したのは、部長だった。スマホの電池が、あっというまに尽きるほどの、刹那的な恋を、わたしはしていた。となりでねむるだけの関係でよかった。肉欲、などという、なまなましいものを交わして満たす関係は、わたしにはまだはやいと思った。
深夜に、だれもいないスクランブル交差点の中心から、星を見上げたときのよろめきは、果てのない想像をしたときのあやふやさに似ている。
ドール