人工楽園
どうせなら絢爛な地獄にしよう。
手始めに此処を造花の花畑にしよう、きみが望むなら枯花の模造でもいい。
理性という監獄から早く逃げたらいい、そして悪徳と淫蕩の限りを尽くそう。
きみを雁字搦めにする正義や道徳、そういったものはすべて破壊した方がいい。
そんなものは人を傲慢にするだけで何の役にも立たないから棄て去った方がいい。
僕らに足りないものは不倖でも倖せでもなく快楽だ、快楽が全然足りていない。
人間であることを辞めた方がいい、きみは元々理性なんかなくて獣だったんだから。
矛盾に引き裂かれる苦痛なんて引き受けなくていい、受け入れなくていい、
そうだ、受け入れなくていい。神を愛しているということは不条理を受け入れるということだ、
不条理など受け入れるな、生命の公平性を損なっているのは他でもない神なのだから、
神という奴が、いたらの話だが。僕は勿論信じていないけどね。
ともあれ、きみはもっと正直になるべきだ、自分の欲求に正直になるべきだ。
それは何ら恥ずべきことではない。欲求を看過するとは、死に接近することだから。
きみには快楽を享受する権利がある。とりわけ、身体的快楽を享受する権利が。
だから享楽的な地獄を創ろう。誰にも穢されることのない、きみだけの人工楽園を。
再定義しよう。あるいは、忘却しよう。きみにはもう、何にも煩わされる心配はない。
さあこっちにおいで、そして僕はそろそろお別れだ、でも大丈夫。
きみが死ぬ時また会えるような、そんな気がするから。
人工楽園