死神が世界で一番やさしくわたしたちを殺す

2018/1/14

君は冬が嫌いだってこと、本当はずっと知っていたよ。星が良く見えるから、嫌いだってこと。澄んだ空気が刺すようで、何光年も離れたかみさまに、やがてころされてしまう、冬、ねえコンビニによってあったかいものを買おうよ きっとすてきだよ
 大事なことばほど聞き漏らしてしまう、言いそびれてしまう、なかったことにして やがて火葬 透過、君が買ったココアからたちのぼる、しろい気配が、わたしたちの青春だとしたら 制服のスカートを切って 血液に馳せよう まだこの世界のことばは、知らない
 声を出して言おうよ 好きな人 嫌いなこと できなかったこと 冬が嫌いな君に、気にいられたくて、わざと可愛くコートを羽織る。声に出して、そうすれば、ことばはやがて色彩を帯びて ひとつの星になる 「神様」「息が白いよ ほら しあわせになれるよ」
 雪が降らない街で、やっとこれからわたしたちは冬をきらいになる、きらいになって、きれいな星をスマホの光で照らそう 嘲るように 跪いて! やがて朝が来る、それだけを不幸の目印にしよう、くらやみ、まぼろし、黒い光の中で、君の声や、わたしの息が、ゆっくりゆっくり冬に昇華する。

死神が世界で一番やさしくわたしたちを殺す

死神が世界で一番やさしくわたしたちを殺す

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-09-27

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