希望よりも必要なもの

雪水 雪技

希望よりも必要なもの

世界の果てにさようなら

海をこえて
出会う物語

砂時計の中に
閉じ込めた
旅の記憶

星を見つけては
誰かが安堵しても

航海の日々に
つきまとう
不安と焦燥

この目で見た筈の
光る人々の実体は
どこにもないまま
幽霊船は日光浴をする

泣き出す羅針盤
空と陸が傾いて
海が水平線から
こぼれ落ちていく

希望よりも必要なもの

あたたかいものを
この手につかんだ
夢の中に巣ごもる

目覚めは悲しく
焦土の上みたいな朝

乾いていくもの
水遣りの時間に
私は知らない顔

愛情は希薄で
やる気がなくて
頑張らない子だと
駄目みたいだから

私を破壊して進んだ日々

枯れた自我
乱れた成長速度

もう何にもならなくていい

糸電話の履歴

本当に欲しいものは無かった

何かを求めているフリをして

何かに合わせてうなずいて

私の尺度を投げ棄てて

そうまでして、居たかった

強い主張に怯えていても

本当は、誰よりもわがままだった

増えていくきらい

夕陽は溶け出して
アイスコーヒーの中

染め上がる指先を
黙って見ていた

煙草のにおいが
トラウマになる

お芝居ばかり上手くなる

嘘ばかりついて
季節は過ぎていく

それでも
ひとつも
無駄じゃなかった

全部が嘘なわけ無いのに
全部を嘘にしたかったのは

私の口惜しさ
私の麻酔薬

神様が振ったサイコロの目

痺れ出す神経回路
同じ目を出さない
サイコロを振って
何かに任せている
無責任な私がいる
神様に祈るように
今日をやり過ごす
そんな日々をやめ
飛び出した道の上
決定論は無意味だ
思い出は傷になり
記憶は加工される
息継ぎ無しの日々
将来なんて来ない
明日なんて来ない
今日しかいない私

願い事に言われたこと

魔法のランプも流れ星もいらない

願いは私に叶えられたがっている

その声を聞いたとき
初めて芽吹いていく

願いは私が叶えるから
私の願いと成る

金の鈴が鳴り響いて
輝く音色に向かえる

誰にも渡してはいけないもの
誰にも委ねてはいけないもの

この目の中で咲いてゆけ

抱擁して目覚める

誰かよりも
幸せにならないといけない
けれども
自分より傷つくのは許さない

素直に生きられないのに
誰よりもわがままになる

ちぐはぐな自分のまま
出会って別れて流れてく

似たようなことで落ち込んで
同じことで悩んでいる

そんな自分が、
愛しくて仕方がない今日だ

眠る子供の見てるもの

まどろみの午後に
夢と太陽はまざる

淡くなる世界
まばゆい視界

窓の外から笑い声
幸福に一番乗りの
呑気な時間を着て
空から落ちていく

肌になじむ空気
響いた鳥のこえ

光の粒子の話し声
気が遠くなるお話

退屈に落ちる輝き

咲いた後のしまつ
私たちには知らせずに
滞りなく花びらは撤去され

あとかたもない
日常が整然と並ぶ

退屈なことこそ
息苦しさだった

風が吹いても
動かずにいた

通り過ぎていくものに
宝石を見た人たちが

この道に明かりを見つけてる

私が歩く経路にある
変わらず等しい輝きひとつ

既視感ノスタルジア

沈むのは
桶の中の
玩具の船

ねじまき式の音
扇風機の音と重なる

懐かしさは
捏造か妄想か

知らない時代のかけら
知らない空気のにおい

私の中にたしかにある
私の生きた時代以外が

時折この胸の奥から
這い出てくる
ノスタルジア

私のものではない
懐かしさに
セピア色に
魅せられて

空を泳ぐ物知りたち

大きな口を開けて
鯨は空想も空虚も
空の上で飲み込む

つまらないことを
書き連ねたと思って
捨ててしまったノート
灰になった夢も希望も

雲の上、鯨の腹の中に

夕陽に焼いた
悲しい記憶

朝日に溶けた
怖い夢

全て青空に届くから
空に泳ぐ海洋生物は
僕の心と頭の中身を
僕よりも知っている

惜しみなく愛は降る

空いた杯に入る
液体の色が目に映る

冷たいガラスに触れて
季節の忘れ物について
お店のすみで話し合う

落ち着きが足りない
この頃の神経たちに
季節はさわるから
深追いはいけない

寝込む日々
体は消えない
日々はいつも
新しくされる

注ぐか注がないか
頼まずとも来る
新しい杯へ

軸はあちらへこちらへ

心の置き所を探しても
いつも同じ所は嫌がる

どこへ行きたがるのか
聞く間もなく生きていた

心よりも生活だった頃
安心のために砕いた精神

コマのように上手く回れないから
コマのように動かされていたころ

立ち回りも不調法で
立ち往生していたころ

どこへ行きたいのか
初めて私に問う今へ

否定系の自画像

どこにも無いのは
握ったままだから

手をほどいて
この街を見る

景色はいつも変わる
見えるものは常に変わる

意識が彷徨うのは
今ではないいつか

ここにいられない意識
逃げ出したい気持ち

信じなければ楽なのか
嫌ってしまえば楽なのか
愚痴ばかり言えば楽なのか

否に宿る真実が在る

跡形もなく爪痕はのこる

この夢を持ったまま
朝にたどり着きたい

切実な思いも願いも消され
いつも虚しい朝が来る

記憶すら消されていく
夢の効用は未だ明かされず

悪夢は心を蝕んでいく
良き夢は感傷を植え付けていく

寂しさと苦しさが混ざる
今日の胸中は何色なのか
鏡も見ずに確かめている

過ぎゆくものは皆、美しい

過ぎ去ってこそ詠える
過ぎ去ってこそ美しい

とどまらないもの
よどみのないもの
それゆえに、
手を伸ばしたくなるもの

何も残さず消えてゆくから
私たちは美しく存在している

確かにあったのに
もうなにひとつ
この手には無い

寂しさは何もかもを淡くする
薄く優しい光を生み出すもの

秋の空へ

良い天気に
良い空気は
良い思考を
連れてくる

暗鬱を畳に焼き付けて
晴れたお外へ出掛けます

新しい靴を履いています
新しい服を着ています

まるで新しい思想でした
生涯通す大義のようです

秋の風に吹かれれば
考えはすぐ変わります

私は変わり続けるお天気に
狭い了見をぶつけています

呵呵大笑

もぬけのからの青い時代

微笑など無く大笑い

そんな過去を思えば安堵する

気楽になるには
可笑しなものを

気楽になるには
可笑しなものを

方法論に頼って暮れる日より
笑い転げて暮れる日の方が

きっと救いになるでしょう

笑えるうちに笑いましょう

私はただ白い朝の中に佇んで
思う物事を追う日々だけが欲しい

あの静かな曇りの朝
冷えた牛乳のような白さ

田んぼしかない
道の上に佇んで

誰を思うこともなく
ただその景色の印象だけに
心を浸して真っ白になりたい

寂しがる影ほうし

帽子の下に出会う
ふたつの影ほうし

あいさつをして
おじぎをして
かさなって

夕闇にまぎれて
とどこおりなく
私が消えてゆく

商店街にて
夜は海水浴
私は夜になり
私は水になり
私は愉快になる

朝には金魚鉢の中にて
水草とお魚にご挨拶をして

太陽に照らされて
再び寂しい影になる

希望よりも必要なもの

希望よりも必要なもの

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-09-26

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. 世界の果てにさようなら
  2. 希望よりも必要なもの
  3. 糸電話の履歴
  4. 増えていくきらい
  5. 神様が振ったサイコロの目
  6. 願い事に言われたこと
  7. 抱擁して目覚める
  8. 眠る子供の見てるもの
  9. 退屈に落ちる輝き
  10. 既視感ノスタルジア
  11. 空を泳ぐ物知りたち
  12. 惜しみなく愛は降る
  13. 軸はあちらへこちらへ
  14. 否定系の自画像
  15. 跡形もなく爪痕はのこる
  16. 過ぎゆくものは皆、美しい
  17. 秋の空へ
  18. 呵呵大笑
  19. 寂しがる影ほうし