泡だつ少女

青津亮

 セーラー服の白はさながら死装束のましろ、商品価値最強にしてもっとも脆く果敢ない仮面、「 わたし」のいない制服、わが身を窒息させそうな制服は風に翻弄され、周囲と乖離した淋しいわたしの後姿を、夕陽がほうっと際だたす。
(もしセンセイがわたしを愛してくれたなら、こんな重たい仮面なんて脱ぎ棄てて、制服もいらぬ、女生徒らしい振舞、いらぬいらぬ、肉体からさえ脱獄し、ただ澄んだ光となって貴方に果てへと連れ込まれたい。わたし、「わたし」なんていらないのです)

 かしこく貞操をまもる少女、わたしにいわせればすでに所帯じみている、かなしいイノセンス、無垢なる少女性、そいつはむしろ、やたらめったらに男と寝る、砂漠のような眼をしたあの子に睡っているよう。澄みきった淋しさ、ささくれだった眼つきの中心で、いたましいほどに透明さを発するかの眸、周囲と混じることのできない純度百パーセントの孤独、そして愛への憧れ。抱かれれば抱かれるほどに「わたし」の不在という拒絶に磨かれる彼女の愛が、ついに純粋なるものへ昇華して、かの空へ翔び立たんことを。

  *

 花畑に辿り着く、ななめから紅い陽が射して、追憶へ往ってしまうように茫洋と褪せてみえるかの花々、なべてが等価に張りつめられた風景画。真白のアネモネの林立は可憐な庶民の一群である、ここにはきっと幸福が睡り、そして愛という音楽がめざめ脈打っている、わたしはわたしの淋しい躰をここに埋めてみる、「人間は、みな同じものだ」、そう呻いてもみて、されど「愛し合いたい」、そうぶくぶくと、かの風景でひとりごとのように泡立ち浮ぶわたしの躰。

泡だつ少女

泡だつ少女

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-09-25

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