無抵抗な反逆

雪水 雪技

無抵抗な反逆

与えられた形を嫌って

思考の痕跡は
燃えさかる青い時代

かつて、私は思想であった

今、私を捕まえる言葉から
逃亡して笑っている

私を形づくった言葉

安定、つながり、滞ること

全てはこの口から
這い出た言葉だった

数珠繋がりの言葉を
バラして放り投げて

私は愉快な気持ちで走る
私は清々とした顔で飛ぶ

子供部屋の夢

かなしいことばかりが
散らばる夜には

眠ればいいのに
寝かせてはくれない

胸の奥、子供部屋からの泣き声

真夜中に、
幼い心は片付けをはじめる

寝る時刻を過ぎても
ひとつも片付かずに

豆電球ひとつのあかりに
子供がひとり泣いている

味のない思い出

もう誰もいない家にて
振る舞われたスープ

湯気の向こうに思い出
他人の痕跡と記憶

加工されたホームビデオ
上映会がはじまる

そこにいない私は
ここにいない主人の
家庭の味がするスープを
黙って流しこんでいる

私のものはひとつもない
人の思い出はつまらない

真実の在処

私のこともお前のことも
私もお前もわからなくて

情報の束だけで交流をして

私もお前も何を見ているのだろう

さみしさすら忘れて
画面ばかり見つめて

真正面の私もお前も

その目には映ってはいなかった

憂鬱な金色

鐘が鳴る
祭典の合図
厳かな金色に
目は焼けていく

子供たちは花籠を持って
街に並んで歌をうたった

厳しい先生の
顔色を気にしながら

音の上、彷徨う心地

青白い顔の子供らは
祭典の歌をうたった

瑣末な46億年

砂と土と鉱石は絶え間なく
46億年分の瑣末を話し合う

大概はつまらないこと
大概はそのくりかえし

大層な地層となって
語り出すことは
妙に近しいこと

瑣末なできごと

かさねて、現代

不調和な私ごと

かなしい旋律
いろいろと具合が悪いのです

しかし、私は悪くないのです

かなしい声をあげている
鳥も虫もなにもかも
変わってはいません

変わるのはいつも私です

季節も天気も表情を変えず
淡々と過ぎてゆくではありませんか

置いていかれるのはいつも私です

秋晴れに願う

誰もいない秋の午後は
さみしさも忘れて

どこまでもつづく晴天を追う

何も求めないという心は嘘だった

あれもこれもと強欲な私を
どこまでも受け入れる天空

全く満ち足りることのない
稚拙な言葉を並べて
伝えることを忘れて

自我すら飲み込む青の下にて
私を受容してと希う秋晴れに

一人芝居

打ち砕かれた正午
裏切り者のいない
私の世界でひとり

誰も責めない私でいよう

もっと鈍くなれば
もっと優しくなれる

あらねばならぬ人物像に
近づくために砕いてきたもの

誰も何も言っていなかった
犠牲者などいない世界にひとり

なにもかもどうだってよかった
この世界にひとりではじめて

無抵抗な反逆

生きることは奪われることだった
気が付いたらそうなっていて
乱暴な一切はいやだから
ケチな私はきらいだから

何でも差し出す私でいた

誰も悪くなくて
みんな白かった

みんなと同じになるために
溶かす錠剤を増やす夜がある

怒りよ遠のけ
意識よ遠のけ

育ち損ねたもの

おくれて育った怒りは
ずいぶんと大きくなって
いつかの悲しみも覆って

私はいつも怒るようになった

かなしい時
さみしい時
くやしい時

怒れば痛く無くなる気がした

見失った痛みたちは
原型も止めず体の底に沈んでいる

熱くなる心身持て余して
おくれて来た涙が落ちていく

加工される退屈

加工品とレプリカが並ぶ
形ばかりのピクニック

公園でひろげたお弁当
撮った写真も並ぶ食品も
やけに色がはっきりして

すっかり失せた食欲
整備された道を歩く
わずかな土と緑の地面

気が遠のく真昼
形ばかりの交流
加工される日常

連続性の中から
切り取るための
しあわせを作る

接近

数字が並び出すと
情緒は逃げ出した

細い糸で繋がれた
神経と惑星の不調和

音にしてみれば
聞けたものではなく

嘆きと怒りに疲労する
心は蝕まれる夜の真下で

壊れたオルゴールは
神経伝達を助ける

煙の中の逃避行

プランはゼロにして
飛び出して来たもの

守られている世界には
音も言葉も突き刺さる

これから、どこに行くのでしょう

無垢な問いが風にあそぶ
吸ったタバコは甘かった

ラム酒の匂いがする
真夜中のシグナルは
誰を酔わせるというの

近付く宇宙と手を取って
朝には他人になると知って

本音投壊

書いて、消して、後悔する
日記帳に書いた本音は、
海の底に沈む運命を飲む

飲料水に沈殿する
色彩は疲弊している

もう、浮かぶこともない

思い出は傷になる
傷は優しさになる

それでいいのかな

私の本当についてを調べて
何度も通う真夜中の図書室

月の灯に照らした
文字列の塔は崩壊

四季の全てが刺さる音

季節をごちゃ混ぜにする音楽隊
早朝の国道を闊歩する

春のしらべ
夏のしらべ
秋のしらべ
冬のしらべ

楽譜が誰が書いたものか
不協和音轟いて
にわとりも黙る

人々は暑さに凍えて
耳をふさいで叫んでいる

目隠し

冬生まれ、秋を愛する

冬は足取りを重くする
いかに白に隠そうにも
あの陰鬱な建物の存在は消えない
雪と共に春に消えてくれればいい

秋は感傷の優美をとらえる

短い秋
長き冬

白に覆われても
なにも変わらない

一瞬の幻想

煤に汚れる白いうつつ

色彩創生

芸術がつくる宇宙
色彩のビックバン
膨張して混ざり合う
無理解のダークマター

みどりの星で空を見た
色とりどり、落ち着かない

絵になる時、生まれる生命

幼き手が絵筆を振り回し繰り返す

これが創生のお話です

言の葉武装

日常の言葉を武装して
物騒な言葉数増やして
なにに備えているかは知らん

傷つくのは私だけ
それで十分と笑った

日が差して心臓に当たる
焼けないものばかりで
ごめんなさいね

私は鉄にも土にもなれない

それでいいなんて

無責任なこと言いなさんな

耐え難いものへ

景色の彩度が増して
色彩も光も強くなる
私の目は耐えられない

とらえられないもの
文字に起こしてみて
絵に描いてみて

この目に映せない景色
多分大昔に見たような

時間は曖昧さを増すから
横一列の時間軸を蹴飛ばした

神様でもしないようなことをする

笑い声の君は何処へ行った?

無抵抗な反逆

無抵抗な反逆

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-09-20

Copyrighted
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Copyrighted
  1. 与えられた形を嫌って
  2. 子供部屋の夢
  3. 味のない思い出
  4. 真実の在処
  5. 憂鬱な金色
  6. 瑣末な46億年
  7. 不調和な私ごと
  8. 秋晴れに願う
  9. 一人芝居
  10. 無抵抗な反逆
  11. 育ち損ねたもの
  12. 加工される退屈
  13. 接近
  14. 煙の中の逃避行
  15. 本音投壊
  16. 四季の全てが刺さる音
  17. 目隠し
  18. 色彩創生
  19. 言の葉武装
  20. 耐え難いものへ