喪失の途上

どこにいてもそこは喪失の途上

瞳は腐敗が進んでいく、記憶は

滔々と流れ落ちていく、季節は

淡々と巡る、私の声を無視して

私を生かしてくれたのは、きみ

ではなくて、きみの影、夢、幻

だったんだね、とっくにきみは

死んでいたんだね。もう一つも

思いだせない、自分のことさえ

思いだせない、褪せてしまって

爆ぜてしまって、ばらばらで、

繋ぎ合わせようとしても、涙が

止まらない涙が私を、すべてを

さらに淡くしていく、限りなく

無に近づいていく、この残酷な

人生に光というものがあるなら

私は絶望しながら愛を捧げる。

それはきっと、心という呪い。

喪失の途上

喪失の途上

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-09-18

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