喪失の途上
どこにいてもそこは喪失の途上
瞳は腐敗が進んでいく、記憶は
滔々と流れ落ちていく、季節は
淡々と巡る、私の声を無視して
私を生かしてくれたのは、きみ
ではなくて、きみの影、夢、幻
だったんだね、とっくにきみは
死んでいたんだね。もう一つも
思いだせない、自分のことさえ
思いだせない、褪せてしまって
爆ぜてしまって、ばらばらで、
繋ぎ合わせようとしても、涙が
止まらない涙が私を、すべてを
さらに淡くしていく、限りなく
無に近づいていく、この残酷な
人生に光というものがあるなら
私は絶望しながら愛を捧げる。
それはきっと、心という呪い。
喪失の途上